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ケース・スタディで見つけるあなたに合った治療法 CASE4~6

あなたにあった治療法|更新日:2014/02/25[火]

CASE4 更年期に治療開始。

術後薬物療法中に閉経を迎え、ホルモン療法薬を変更(40代、Tさん)

 40代半ばを過ぎたTさんは、入浴中に乳房に違和感を覚え、指で探ってみるとしこりを発見しました。不安になり病院で検査を受けたところ、IIa期の乳がんでした。
 Tさんは超音波(エコー)検査でリンパ節転移がみつかったため、まず抗がん薬による術前薬物療法を行うことになりました。
 いずれも点滴で、2剤の抗がん薬を組み合わせたAC療法を3週間ごとに1回、4サイクル行ったあと、ドセタキセル(商品名タキソテール)を3週間ごとに4回投与します。Tさんの場合はこの治療が効いたようで、術前薬物療法が終わった段階で、がんが乳房部分切除術が可能な大きさにまで縮小したので、乳房部分切除術を行いました。
 手術1カ月後から通院で、週5日間×5週間の放射線療法と、ホルモン療法薬による術後薬物療法を開始しました。
 ホルモン療法では、閉経前か後かということが大きな問題となります。手術前、Tさんは閉経前だったので、抗エストロゲン薬(飲み薬)とLH―RHアゴニスト製剤(4週間に1回の皮下注射)を使いましたが、治療途中で50歳を迎えたので、血液中のホルモン値を測る血液検査をしたところ、更年期特有の状態を示していました。そこで、閉経を迎えたと判断し、閉経後の治療に用いられるアロマターゼ阻害薬の服用に切り替えました。これは、5年間飲み続けることになります。
 Tさんはまだ治療中ですが、ホルモン療法薬の副作用も軽く、趣味のテニスを再開し、心身ともに元気に過ごしているようです。

アドバイス
 閉経前の乳がんの患者さんに対するホルモン療法は、抗エストロゲン薬とLHーRHアゴニスト製剤を使います。Tさんのようにホルモン療法が閉経前後にまたがるときは、閉経を迎えた時点でこれらの薬を、閉経後の患者さんに使うアロマターゼ阻害薬に変更することになります。ホルモン療法をしていると月経が止まりますし、血液中のホルモン値も健康なときと違った状態を示すので、閉経のタイミングを知ることはなかなか難しいのですが、年齢的なことやホルモン値の傾向などから閉経を想定して、治療薬を変えていくことになります。

CASE5 トリプルネガティブタイプの乳がん。

抗がん薬治療のあと乳房切除術(全摘)(60代、Oさん)

トリプルネガティブタイプの乳がん

 Oさんは60代、定年を迎えた夫と二人で静かに過ごそうとしていた矢先、病院で4cmくらいのしこりがみつかりました。IIa期のがんでした。
 組織診などの詳しい検査を行った結果、HER2もホルモン受容体も陰性の、いわゆるトリプルネガティブタイプでした。このタイプの患者さんには、抗がん薬を使った治療が行われます。
 本人の希望もあり、乳房温存療法をめざして、手術前に抗がん薬治療を行いましたが、残念ながらがんの大きさは変わらず、乳房切除術(全摘)となりました。手術中のセンチネルリンパ節生検でリンパ節に転移がみつかったので、リンパ節郭清も同時に行いました。なお、事前に乳房再建についての希望を聞きましたが、経済的な理由により、Oさんは再建は行いませんでした。
 これで治療は終了。あとは、定期的な検査に通うのみとなりました。手術前の抗がん薬では副作用に、手術後はリンパ浮腫(ふしゅ)に悩まされていますが、「夫がリンパマッサージをしてくれるので助かる」と、少しうれしそうに話してくれたOさん。「夫がとても気づかってくれ、治療前より夫婦仲がよくなりました」と、悪いことばかりではなかったようです。

アドバイス
 トリプルネガティブタイプといわれるのは、ホルモン受容体のエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体がともに陰性、HER2も陰性の患者さんで、日本人の乳がん患者さんの約15%程度がこのタイプです。
 ホルモン療法薬や分子標的薬はあまり効きませんが、ほかのタイプに比べて抗がん薬が効きやすいので、抗がん薬による薬物療法を行うことになります。
 なお、トリプルネガティブタイプの場合、再発・転移は5年以内におこることが多く、それ以降の再発は少ないといわれています。5年間は自己チェックなどを欠かさず、注意して生活しましょう。

CASE6 IIIa期のため再発リスクを考慮。

乳房切除術(全摘)後に放射線療法を追加(60代、Nさん)

 60代のNさんが乳がんと診断されたときには、すでにIIIa期。CTや超音波(エコー)検査で、リンパ節転移が複数みつかるような状態でした。3年ほど前に乳房に違和感を覚えたものの、ちょうどそのころ親の介護が始まったため、以来わが身を振り返る余裕もない日々を過ごしていたそうです。病院の受診が遅れたのもそのせいでした。
 NさんはHER2陰性、ホルモン受容体陽性であるため、薬物療法では、抗がん薬とホルモン療法薬を使うことになりました。最近は薬物療法を手術前にすることも増えてきましたが、Nさんの希望で、手術を先にすることになりました。
 Nさんが受けた手術は、乳房切除術(全摘)です。リンパ節郭清を行ったところ、わきの下のリンパ節への転移が4個以上あることがわかりました。この場合、再発リスクが高くなると考えられるため、その予防として手術後に鎖骨とリンパ節への放射線照射を追加することになります。放射線療法を行うと、皮膚の組織が変化して乳房再建をするのが難しくなりますが、全摘後に放射線療法を行うと再発率が下がり、生存率が高まることがわかっています。こうした説明を受けたNさんは、放射線療法を追加で受けることに決めました。
 ホルモン療法は放射線療法と一緒に進めていくことができるため、手術後にまず、CAF療法とドセタキセル(商品名タキソテール)による抗がん薬治療を行いました。その後、週5回、5週通院で放射線療法を行いながら、ホルモン療法を始めました。ホルモン療法は、閉経後であるため、飲み薬のアロマターゼ阻害薬の服用を5年間続けてもらいます。
 Nさんは現在もホルモン療法を続けていますが、早期に発見して治療を行ったケースと比べると、再発リスクが高いことに変わりはありません。今後も、慎重に経過をみていくこととなります。

アドバイス
 リンパ節転移が4個以上、あるいはがんの大きさが5cm以上あるケースでは、Nさんのように、乳房切除術(全摘)後の再発予防として放射線療法の追加を検討します。
 乳房温存療法や乳房再建できれいな乳房を守りたくても、Nさんのようにがんが進行している場合は、あきらめざるをえないことがあります。自分で乳房の異変に気づいたときは、いかなる理由があろうとできるだけ早めに、検査を受けるようにしましょう。

(名医が語る最新・最良の治療 乳がん 2011年11月25日初版発行)

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