一般的な乳がんと比較して進行が速い「炎症性乳がん」って?

本記事は、株式会社法研が2011年11月25日に発行した「名医が語る最新・最良の治療 乳がん」より許諾を得て転載しています。
乳がんの治療に関する最新情報は、「乳がんを知る」をご参照ください。

炎症乳がんとは 炎症性乳がんは、一般的な乳がんと比較して進行のスピードの速いがんです。浸潤がんの患者さんの0.5~2%とされる、まれなタイプですが、近年増加傾向にあります。
 がん細胞が乳房全体に広がっていき、乳房の皮膚がオレンジの皮のように赤く腫(は)れることが特徴で、乳房に痛みや熱感を伴うことがあります。しこりをつくらないことと炎症のようすから、乳腺炎などと間違えられやすく、気づいたときにはすでに進行していることが多くなっています。似た症状があれば、必ず専門医を受診し、早急に、乳がんかそうでないかの診断を受けましょう。
 炎症性乳がんの治療は、手術や放射線療法などの局所療法だけでは十分な効果が得られないものの、手術前の抗がん薬治療が効いた患者さんは治療後の経過がよいことが報告されています。そこで、まず抗がん薬を使うことが診療ガイドラインで推奨されています。抗がん薬治療でもっとも有効性が高いとされるのは、アンスラサイクリン系の抗がん薬によるFEC療法と、タキサン系の抗がん薬パクリタキセル(商品名タキソール)の併用療法です。HER2が陽性の場合は、分子標的薬のトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)を併用することもあります。
 抗がん薬治療で効果があっても、炎症性乳がんは広い範囲にがんが散っているため、手術は乳房切除術(全摘)となることがほとんどです。再発を予防するために放射線療法も行う必要があるため、乳房再建は行えません。
 手術後は、HER2が陽性の場合はトラスツズマブによる治療を続け、ホルモン受容体が陽性の場合はホルモン療法薬(閉経前は抗エストロゲン薬、閉経後はアロマターゼ阻害薬)を使います。HER2、ホルモン受容体がともに陰性(トリプルネガティブ)の場合は、抗がん薬治療になります。

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