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センチネルリンパ節生検(日本医科大学・日本医科大学付属病院武井寛幸先生) 1/4ページ

乳がんの治療法を選ぶ前に|更新日:2013/10/04[金]

※本文は、武井先生が前職の埼玉県立がんセンター 乳腺外科部長時に取材した内容です(2012年時)。

治療方針の決定に大きな役割

転移再発を防ぐために行われていた大手術

 乳がんのがん細胞は、わきの下にある「腋窩(えきか)リンパ節」から全身へ転移しやすいと考えられています。そこで、主に転移を避けるために、ほとんどの乳がんの手術では、わきの下のリンパ節を切除する腋窩リンパ節郭清(かくせい)が行われてきました。
 かつて主流だったハルステッド手術は、乳房(乳腺(にゅうせん))だけでなく、大・小胸筋および腋窩リンパ節を脂肪ごとごっそり摘出してしまう大手術でした。わきの下のリンパ節をほぼ取り除いてしまうことで全身への転移を防ぎ、患者さんの生存率を上げようとしたのです。
 しかし、ハルステッド手術のように大きく切除しなくても、転移再発率・生存率は変わらない、という臨床試験の結果を受けて、徐々に切除範囲を小さくする乳房切除術や、乳房温存療法(乳房部分切除術と放射線療法を組み合わせて行う)へと手術法は推移してきました。

何を目的に行われますか

 わきの下のリンパ節を切除するかどうかを決めるために行う検査です。乳腺からがん細胞が最初に流れつくリンパ節を特定し、そこに転移があるかどうかを調べます。

不要なリンパ節郭清を減らしリンパ浮腫を防ぐ

乳がんの所属リンパ節の位置と構造

 乳房周辺の切除範囲は小さくなりましたが、腋窩リンパ節郭清は、その後も標準治療として行われていました。腋窩リンパ節郭清の目的は、がんの全身への転移を防いだり、手術後に行う治療を決める目安にしたり、予後を予測したりすることです。センチネルリンパ節生検が標準治療として確立していなかった時代は、転移があるかどうかは、がん摘出後の病理診断で確認しなければならず、実際には転移のなかった人も、リンパ節を切除していました。
 腋窩リンパ節郭清を行うと、リンパ液がスムーズに流れなくなるため、腕や手がむくむ状態になるリンパ浮腫(ふしゅ)をおこすことが少なくありません。リンパ浮腫には決め手となる有効な治療法がなく、日常生活に支障をきたすこともあることから、乳がんの専門医として、また患者さんの立場として、不要なリンパ節郭清はできれば避けたいというのが本音です。

リンパ節転移を正確に負担の少ない手術で調べる

我が国の乳がん手術の変移
リンパ節郭清の範囲

 そこで、リンパ節郭清をしないで、リンパ節転移があるかないかを確認できないか、それもできるだけ負担の少ない手法で正確に調べられないか、ということで研究が進められてきたのが、センチネルリンパ節生検です。いまでは、この手法が、腋窩リンパ節郭清に代わって標準治療として行われています。
 センチネルリンパ節とは、がん細胞が最初に到達するリンパ節のことで、センチネルは「見張り」「監視役」などを意味します。
 がんのリンパ節への転移は、所属リンパ節すべてに同時におこるわけではなく、最初に特定のリンパ節、つまりセンチネルリンパ節にがん細胞が流れ着いて転移し、そこから周囲のリンパ節に広がっていきます。そこで、センチネルリンパ節をなんらかの方法で特定し、それを採取して転移の有無が確認できれば、患者さん全員のリンパ節をごっそり取る必要はなくなる――それが「センチネルリンパ節生検」の基本的な考え方です。1970~1980年代には、陰茎(いんけい)がんやメラノーマ(悪性黒色腫(しゅ)、皮膚がんの一種)で行われるようになって、徐々に普及していき、乳がんでは、1993年に放射性コロイド法、1994年に色素法によるセンチネルリンパ節生検が相次いで行われました。

転移がなければわきの下のリンパ節は残せる

センチネルリンパ節生検のメリット

 センチネルリンパ節生検で転移がない(陰性)場合は、ほかのリンパ節にも転移はないと考えられ、不要なリンパ節郭清を避けることができます。これは、多くの臨床試験によって妥当であることが証明されています。もちろん、転移があれば(陽性)、リンパ節を切除します。
 センチネルリンパ節生検を行うにあたっては、何をおいても正確な診断が求められます。転移を見落とすことは避けなければなりません。診断の正確さについては、センチネルリンパ節生検を行い病理診断したものと、その後にわきの下のリンパ節を切除して病理診断したものの両方の結果を比較した臨床試験が数多く報告されています。それらによると、偽陰性の割合は、5~10%とされています。偽陰性とは、センチネルリンパ節生検では転移がないと判断されたのに、手術後の病理診断ではリンパ節に転移が認められたものです。このなかには、スキップ転移といって、センチネルリンパ節を通過せずに、その先のリンパ節に転移してしまうものも含まれていると考えられています。
 偽陰性率が5~10%であれば、再発率も同じくらいありそうなのですが、実際の再発率は1%以下にとどまっています。
 乳がんの治療では、乳房部分切除術のあとには原則として放射線を照射します。乳房照射の範囲にわきの下のリンパ節の一部(レベル1)が含まれると考えられます。また、多くの患者さんで薬物療法を行います。こうした治療の効果が、センチネルリンパ節以外のリンパ節に転移したがん細胞にも作用して、再発が抑えられているのではないかというのが、多くの専門医の一致した意見です。

転移に対する考え方の変化

(名医が語る最新・最良の治療 乳がん 2011年11月25日初版発行)

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