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乳房再建(自家組織)(筑波大学医学医療系坂東裕子先生) 1/4ページ

名医が語る治療法のすべて|更新日:2013/11/08[金]

腹部や背中の組織を用いた再建法

 患者さん自身の腹部や背中の組織を移植して、乳房のふくらみを作る方法です。
 人工乳房に対して違和感をもつ人に適しています。

腹部などに大きな傷はつくがより自然な乳房ができる

 乳房再建には、人工乳房(以下インプラント)を入れる方法のほかに、自分自身のおなかや背中の組織(自家組織)を移植する再建術があります。
 こうした自家組織移植による乳房再建が選択肢となる患者さんの条件とは、次のようなものです。

●体のなかにシリコンなどの人工物を入れておくことに抵抗を覚える
●放射線療法によって皮膚が硬(かた)く変性してしまった(これから放射線の治療を受けて変性が考えられる場合も含む)
●がんの切除にあたって皮膚を大きく切除したり、大胸筋(だいきょうきん)の切除が必要だったりしたために、ティッシュエキスパンダー(組織拡張器)やインプラントを埋め込むことができない
●経済的な事情で保険診療による治療を受けたい

 自家組織による再建は、インプラントによる再建と違い、自分の組織を生かして用いるので、免疫反応はなく、自然でやわらかいふくらみを作ることができます。また、年齢や体型の変化に合わせて反対側の乳房とほぼ同様の自然な経年変化が訪れる、触ってみて皮膚の感覚がある、ぬくもりを感じるといった大きなメリットがあります。ただし乳房以外の、体の別の部分に大きな傷がつき、場合によってはそこの筋力が低下するといった面がデメリットとなります。
 インプラントか自家組織か、あるいは自家組織だとすれば、どこの組織を使うか、といったことを決める際には、患者さんの希望とともに、乳がんの切除範囲、切除量、もともとの乳房の大きさや体型(脂肪が多めか少なめか)なども大きくかかわってきます。
 当院では、2010年3月から「乳房再建・リンパ浮腫(ふしゅ)外来」を設けています。乳がんと診断され、治療法を選ぶ時点で、再建の可能性についても説明します。少しでも関心をもった患者さんには再建外来を受診してもらい、再建を担当する形成外科医に相談できるようになっています。
 早い段階から、がんの切除法と再建法を選ぶことができるシステムを導入することで、手術後の患者さんのQOLを高めようというのが狙いです。
 乳がん治療において、再建手術は特別なものではありません。再建に関して、早期に患者さんに適切な情報を提供できるようになったことで、患者さんの安心感や信頼感が増してきたと感じています。

●自家組織再建による再建の適用
・乳房切除術を行っている
・人工乳房(インプラント)を使うことに抵抗がある
・放射線療法を行っている(行う予定がある)
・放射線療法による皮膚の変性がある
・皮膚や大胸筋(だいきょうきん)切除の範囲が大きい
・健康保険適用の範囲で再建術を受けたい
このほか、全身状態なども加味される
●人口乳房と自家組織の違い
人工乳房(インプラント) 自家組織
入院期間 日帰り~数日 1~2週間程度
手術あと 乳房切除時に作られた傷のみ 乳房切除の傷と腹部または背中の傷
健康保険
適用
エキスパンダーに一部適用以外は自費診療 健康保険適用による(3割負担など)

乳房の大きい人に適している腹直筋皮弁法

自家組織移植の術式は乳房の大きさなどで判断

組織を移植する方法は二つある
手術の内訳

 自家組織を用いた乳房再建も、インプラントによる再建と同じく、乳房切除術と同時に行う「一期再建」と、乳房切除術後しばらく時間をおいて行う「二期再建」が可能です。
 体のどの部分の組織を移植して乳房を再建するかによって、手術法は「腹直筋皮弁(ふくちょくきんひべん)法」と「広背筋皮弁(こうはいきんひべん)法」とに分かれます。
 腹直筋皮弁法は、腹部の組織を使います。腹部は、筋肉や脂肪の量が多いので、乳房の大きい患者さんに向いています。また、腹部の筋肉を取るときには、脂肪も一緒に取るため、手術後は、おなかのまわりが少しすっきりします。
 広背筋皮弁法は、背中の組織を用いる方法です。背中は、筋肉や脂肪はそれほど多くないので、再建できる乳房の大きさには制限があります。乳房が大きい患者さんには向かず、比較的乳房が小さい患者さんに向きます。
 移植に際しては、移植する組織、つまり皮弁を完全に切り離さずに、乳房の位置に持ってくる場合と、組織をいったん切り離してから、皮弁の血管と乳房周囲の血管とをつなげる場合があります。前者を「有茎(ゆうけい)皮弁」といい、後者を「遊離皮弁」といいます。有茎皮弁と遊離皮弁を両方用いて行うこともあります。
 さらに遊離皮弁では、できるだけ筋肉の損傷を避ける方法として、筋肉を深く取らず、皮膚と脂肪と穿通枝(せんつうし)という血管を移植する穿通枝皮弁や、穿通枝よりもっと細い血管と皮膚と脂肪を移植する腹壁動脈皮弁を移植する方法が試みられるようになってきています。これらの方法は、0.5mm以下の血管をつなぎ合わせる手術ですので、高度な技術が求められます。また、乳房側にそれらの細い血管に対応できる、同じくらいの細さの血管が残っていなければできません。
 有茎皮弁は、神経は外しますが、筋肉を血管ごと移植します。血管を切断しないので、血流が維持され、再建した乳房に血行障害がおこったり、傷の治りが遅くなったりすることはほとんどありません。
 遊離皮弁は形を整えやすい方法ですが、血管を一度切って、再度つなげるので、新しい乳房に血流障害がおこる可能性が残ります。血流障害がおこると、移植した部分に酸素や栄養が行き渡らなくなって、皮膚が壊死(えし)してしまうケースもあります。当院では非常にまれで、現在ではほとんどおこりません。
 自家組織によるものにしろ、インプラントを用いるものにしろ、乳房再建を行うのは、乳腺(にゅうせん)外科医ではなく、形成外科医が担当します。
 当院では、乳房再建専用の外来設立と同時に統計をとり始めていますが、2010年の1年間で乳房再建の手術を受けた人は、乳房切除術を受けた人の25%程度でした。4人に1人が選択されており、再建を選択した人のうち、自家組織による乳房再建を選ばれている患者さんのほうがインプラントより多い傾向にあります。

●自家組織による乳房再建のメリット
自分の組織を使うので免疫反応がおきない
自然に近いふくらみを作れる
年齢・体型の変化とともに変化する
触れたときにぬくもりがある、皮膚の感覚がある
傷あとが大きく、手術後の痛みや入院期間が長い、合併症の可能性などデメリットを含めて、よく検討することが大切。

(名医が語る最新・最良の治療 乳がん 2011年11月25日初版発行)

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