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遺伝子検査(昭和大学医学部乳腺外科学教室明石定子先生) 2/3ページ

名医が語る治療法のすべて|更新日:2014/01/21[火]

70種類の遺伝子を調べるマンマプリント

 マンマプリントはオランダの会社(アジェンディア社)が開発した検査で、再発にかかわる70種類の遺伝子のパターンを調べることによって、手術後5年以内の遠隔転移のリスクを予測します。結果はハイリスクとローリスクの2グループに分かれ、ハイリスクとなった場合、抗がん薬治療が強く勧められるとしています。
 検査の対象となるのは、早期乳がんで、わきの下のリンパ節転移が3個までの患者さんです。閉経の有無やホルモン受容体の陰性・陽性は問いません。
 検査のための乳がん組織は何も加工されていないものが必要なので、事前に採取したものではなく、手術で取った新しい組織に限られます。それを専用のキットで採取、保存したうえで、海外に送ります。オンコタイプDXとは異なり、以前に採取した組織は使えません。そのため、手術を行う前のタイミングで、検査を受けるかどうかを決めておく必要があります。
 現在、ヨーロッパでは、これまでの臨床病理学的な条件によって行ったリスク分類と、マンマプリントによるリスク分類とで結果が一致しなかった場合に、抗がん薬の治療が必要かどうかを検討する臨床試験が進行しています。

抗がん薬治療を迷う患者さんの判断材料となる

 実際の検査の流れについて、私が経験したオンコタイプDXの例を紹介します。
 乳がんの手術後、病理検査の結果が出てくるまで約1カ月かかります。その結果によっては、ホルモン療法薬だけでよいのか、抗がん薬の治療を上乗せすべきかどうかで、迷う患者さんもいます。そうした場合、オンコタイプDXという検査があることを伝えます。
 この検査によって、再発リスクが予測でき、抗がん薬の治療の必要性を判断できること、自費診療であるために高額の費用がかかること(約45万円)などを含め、期間や実際の流れを説明し、そのうえで希望された患者さんにのみ、検査を行うことになります。
 実際に遺伝子を解析するのは海外の会社です。患者さんの乳がんの組織の一部を、その会社に送り、分析してもらいます。輸送の時間も含め、結果が出るまで3~4週間かかりますが、その間は、手術後の薬物療法は行いません。検査会社から結果が戻ってきた時点で、それを検討し、抗がん薬治療をするかどうかを決めます。
 私が2011年9月まで勤務していた国立がん研究センター中央病院では、2009年から始め、これまでに9人の患者さんが検査を受けています。

検査を受け入れ、治療に前向きになる患者さんも

遺伝子検査の流れ

 私がこれまで直接かかわったのは5人の患者さんで、4人が低リスク、1人が高リスクという結果でした。高リスクの患者さんは、もともと抗がん薬による治療が必要と思われていましたが、検査前は患者さん本人が、治療を拒否されていました。結果を知って、しっかり治療をしていこうと患者さんの意識に変化がみられました。
 判断が難しいのは中間リスクの患者さんです。現段階では、中間リスクについての抗がん薬治療の必要性については結論が出ていないので、検査を受けるにあたっては、事前に、中間リスクという結果だった場合の治療法選択についてよく話し合っておく必要があります。
 オンコタイプDXの場合、それぞれのリスクになる割合は、低リスク、中間リスク、高リスク=5対2対3です(マンマプリントはハイリスクが6、ローリスクが4)。

遺伝子検査のリスク割合

今後の課題は?

 これらの検査は、海外の大規模な臨床試験の結果に基づき、妥当性が検証されています。日本ではまだ健康保険の適用になっておらず、高価な検査費用がかかります。

高額な費用と実施施設の少なさが課題

遺伝子検査の課題

 現在のところ、日本において、これらの検査の問題点は、費用が高額という点でしょう。どちらも健康保険が適用されず、自費診療となり、オンコタイプDXは約45万円、マンマプリントは約30万円かかります。
 これだけの費用に見合う結果が得られるかどうかは、患者さんの価値観ともかかわってくるでしょう。オンコタイプDXでは、中間リスクという、いわばグレーゾーンの結果になる可能性もあるので、より慎重な検討が必要です。
 また遺伝子検査を行う施設も限られているのが実状です。

抗がん薬治療を行う患者さんのふるい分けが可能に

 従来は、効果がないのに抗がん薬が必要というリスク分類に入ってしまう患者さんが、これらの検査によって、さらにふるい分けが可能になっています。つまり、より効果の期待できる患者さんだけを選別して、抗がん薬治療を行う個別化治療を進めることができるようになっています。
 大きな目で見れば、薬の副作用など患者さんの負担を減らすQOLの向上という側面からも、また、高価な抗がん薬を無駄に使わないという経済的な側面からも、医療に貢献できる検査といえるでしょう。患者さんの乳がん組織、およびその分析結果の蓄積は、今後の臨床研究にも役立つと考えられます。

(名医が語る最新・最良の治療 乳がん 2011年11月25日初版発行)

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