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大腸がんの抗がん薬治療(国立がん研究センター東病院吉野孝之先生) 1/5ページ

大腸がんの化学療法|更新日:2014/02/21[金]

抗がん薬でがんの進行、再発を防ぐ

 手術のあとに、抗がん薬を用いて再発予防を狙うのが術後補助化学療法です。一方、手術のできない進行・転移がんの患者さんに対しては、がんを縮小させたり増殖を抑えたりすることを目的に、化学療法が行われます。

術後補助化学療法

部位別の初発再発率の比較

 大腸がんは手術で完全にがんを取りきれるがんですが、見えないがん細胞が残っていて、それが一定の期間をおいて再発することがあります。そうした見えないがん細胞を、抗がん薬によって、再発を予防する治療が「術後補助化学療法」です。治療は手術のあと十分に体力が回復してから行い、およそ手術後4~8週の間に始めるのが一般的です。
 大腸がんの再発率は進行度によっても異なりますが、大腸癌(がん)研究会による調査では平均で17%です。わが国の手術は精度が高いといわれていますが、それでも、ステージIIIでは30.8%、100人中30人の患者さんが再発していることになります。これらをできる限り減らすのが、術後補助化学療法の目的です。

再発のリスクが高いステージIIでも行うことがある

 現在、術後補助化学療法の対象となっているのは、ステージIII(リンパ節に転移がある)の患者さんです。結腸がん、直腸がんは問いません。ステージIIIの患者さんに対しては、術後補助化学療法によって、明らかに再発率が減ることが臨床試験によって実証されています。
 ステージII(がんが大腸の壁に広がっている)の患者さんについては、はっきりとした再発予防効果は立証されていません。ただし、再発のリスクが高いと考えられる患者さんに対しては行ったほうがよいというのが、今の一般的な考え方です。
 治療に関してガイドライン上は年齢の制限はありませんが、当施設では年齢や全身状態を考慮して行います。一般に高齢になるにしたがって効果は出にくく、副作用は出やすくなります。そこで、高齢の患者さんにはその点をよく説明し、相談をして決めるようにしています。
 全身状態としては肝臓や腎臓(じんぞう)の機能が落ちていないこと、白血球や赤血球の数が維持され、免疫機能が十分あること、手術後の合併症が重くないことなどを確認します。

●大腸がん術後補助化学療法の標準治療
mFOLFOX6療法 XELOX療法
薬の組み合わせ フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチン カペシタビン+オキサリプラチン
用法 持続静注 経口+静注
静注ポートの設置 必要 原則不要
通院 2週間に1回 3週間に1回
●術後補助化学療法の適応
・ステージIIIの結腸がん、直腸がん
・再発リスクが高いステージIIの大腸がん
・主要な臓器(肝臓・腎臓(じんぞう))の機能が維持されている
・白血球、赤血球数が安定して免疫機能が落ちていない
・術後の合併症から回復している(合併症がない)
●このような場合は再発の可能性が高い
(1)がんが周囲に浸潤(しんじゅん)していて、他臓器まで入り込んでいる
(2)手術が不十分でリンパ節郭清(かくせい)が的確に行われていない
(3)病理検査の結果が悪性度の高い種類のがん(低分化腺(せん)がん)である
(4)血管、リンパ管にがんが入り込んでいる(脈管侵襲(しんしゅう)、リンパ管侵襲)
(5)腸閉塞(へいそく)や腸穿孔(せんこう)(腸に孔(あな)があく)がある
(6)リンパ節にがんが転移している

FOLFOX療法とXELOX療法が世界標準

 現在のがんの化学療法は、複数の薬を用いる「多剤併用療法」が主流で、大腸がんでも、やはりいくつかの薬を組み合わせて治療します。
 大腸がんの術後補助化学療法で柱となる薬(キードラッグ)は、フルオロウラシル系の抗がん薬、フルオロウラシル(商品名5‐FUなど)です。通常はフルオロウラシルの作用を強める活性型葉酸製剤のホリナートカルシウム(商品名ロイコボリン、ユーゼル)またはレボホリナートカルシウム(商品名アイソボリンなど)という薬とともに使われます。
 現在、世界的に大腸がんの術後補助化学療法の標準治療となっているのは、フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチン(商品名エルプラット)を組み合わせたFOLFOX療法と、カペシタビン(商品名ゼローダ)+オキサリプラチンを組み合わせたXELOX療法の二つです。FOLFOX療法は2009年8月、XELOX療法は2011年11月に健康保険適用となっています。
 当施設は、世界の標準治療を採用しているので、当然ながらこれら二つの組み合わせのいずれかを行うことが原則です。FOLFOX療法に関しては、mFOLFOX6療法(mはModified;修正の略)と呼ばれる組み合わせを用いています(FOLFOX療法は、薬の投与量や投与スケジュールによって1~7までバージョンがあります。当施設ではmFOLFOX6療法を採用)。
 FOLFOX療法、XELOX療法のどちらを選ぶかについては、副作用や投与法などから、患者さんに合うほうを提案し、患者さんとともに検討して決定します。ただし、副作用や体調などからどうしても一種類の抗がん薬での治療を希望する場合には、フルオロウラシル単独で治療することもあります。
 なお、標準治療という言葉に対して、よく患者さんが勘違いしていることが多いので、改めて確認しておきたいと思います。患者さんのなかには「月並みな治療ですか?」と聞いてくることがままありますが、標準治療とは、「さまざまな研究で治療効果が実証された、現時点で世界で最も信頼性の高い治療」です。その標準に沿って治療を行うべきだと、私たちは考えています。

30人の再発を23~24人に減らせるFOLFOX療法

 FOLFOX療法による再発の予防効果は、ステージIIIでは約2割と報告されています。つまり、100人中30人が再発するところを23~24人にまで減らすことができることになります(MOSAIC試験)。
 一方、XELOX療法については、FOLFOX療法と直接比較した試験はありませんが、ほかの試験の結果などから、有効性は変わらないと考えられています。
 また、今最も注目されているがんの治療薬に、分子標的薬がありますが、現在のところ術後補助化学療法では有効性が認められていないので、使われません。

治療期間は6カ月遂行することを目指す

 術後補助化学療法の目標は、治療の完遂、つまり決められた用量、回数をすべて終えることです。患者さんによっては副作用が強く出てしまうことがありますが、一定の治療効果を上げるためには、決められた期間やり遂げることが原則です。
 FOLFOX療法、XELOX療法ともに、治療期間は6カ月です。現在、これを3カ月間に短縮した臨床試験が、日本、イギリス、アメリカなど6カ国共同で行われています。この背景には、6カ月完遂する患者さんが7割程度という現状でも、全体の予後が悪くないため、6カ月ではなく3カ月間投与にしても、それなりの効果が得られるのではないかという予測があります。

(名医が語る最新・最良の治療 大腸がん 2012年6月26日初版発行)

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