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直腸がん腹腔鏡下手術(虎の門病院黒柳洋弥先生) 1/3ページ

大腸がんの手術療法|更新日:2013/11/15[金]

肉眼より細かい操作が可能

 おなかにあけた複数の孔(あな)から、専用の手術器具を入れ、がんを切除します。
 直腸は骨盤の奥にあるので、高度な技術が必要とされる手術となります。

実は直腸がんに向いている手術法だった?

大腸がん手術はほぼ腹腔鏡下手術で行われている

 直腸は大腸の最終部にあたり、S状結腸の先から肛門(こうもん)までの約15~20cmです。ここでは、直腸にできたがんに対する腹腔鏡下手術について説明します。
 腹腔鏡とは内視鏡の一種で、腹腔(腹壁と臓器の間にある空間)の中を映す専用のカメラです。腹腔鏡下手術はおなかに数カ所、数mm程度の小さな孔をあけて、そこから腹腔鏡や鉗子(かんし)(患部をはさむ器具)、はさみなど専用の手術器具を挿入して、腹腔鏡が映し出す画像をモニターで見ながらがんを切除する手術です。
 わが国で大腸がんの治療として、腹腔鏡下手術が始められたのは、1992年ごろです。当施設では、96年に1例、97年に7例行い、98年から本格的に導入しています。
 直腸がんの腹腔鏡下手術は、いくつかの理由により、一般に結腸がんよりも難しいとされています。そのため、ガイドライン上では「直腸がんに対する有効性と安全性は十分に確立されていない」として、手術チームの決定に委ねています。
 直腸のある骨盤内には排泄(はいせつ)・排尿機能や性機能をつかさどる自律神経や血管、臓器(膀胱(ぼうこう)、男性なら前立腺(ぜんりつせん)、女性なら子宮や膣(ちつ))が詰まっています。直腸がんを切除するには、このように密集した狭い骨盤の奥深くにおなか側から手術器具を挿入して、腸を切り離したり、つなぎ合わせたりしなければなりません。
 腹腔鏡下手術専用の器具は細長く、おなかからの距離が遠くなればなるほど先の操作がやりにくくなります。複数の臓器や自律神経、血管がある骨盤内では、ちょっとした操作ミスでも臓器や神経、血管を傷つける危険性も高くなります。
 しかしながら、私は腹腔鏡下手術の経験を十分に積んだ医師が行うのであれば、むしろ、直腸がんこそ腹腔鏡下手術に向いていると考えています。少し専門的な言葉でいうと、骨盤内の直腸の剥離(はくり)、授動(じゅどう)術(内臓の位置を動かす)は従来の開腹手術よりスムーズに行うことができ、それは私も実感しています。
 腹腔鏡下手術では、腹腔鏡によって患部が拡大されてモニターに映し出されるため、肉眼よりも細かい作業がしやすく、がんやリンパ節をしっかり切除し、かつ、大切な臓器や神経を傷つけることも防げます。
 腹腔鏡下手術で必要になる直腸の細かい解剖図が頭に入っていれば、開腹手術では臓器に隠れて見えにくい、狭い骨盤の中を手探りで治療していくより、ずっと確実に、安全に、治療できると考えています。
 直腸の周囲には、排便や排尿の命令を伝えたり、性機能にかかわったりしている骨盤神経叢(そう)という神経の集合体があります。この神経叢の先端は直腸に張りついているので、腸と一緒に神経も切除してしまうと、排尿障害、排便障害、性機能障害といった合併症に悩む患者さんが少なくありません。
 以前は、開腹手術の場合、こうした細かい神経を残す手術が難しいこともあり、術後の機能障害が問題となっていました。現在では肛門や神経を残す手術が主流となっていますが、外科医の力量にも左右されるため、医療機関によって格差があるのではないかと思います。
 腹腔鏡下手術では患部を拡大し、かつ鮮明に見ることができるようになりました。それにより、神経の先端と直腸の境界に電気メスを入れて、両方を引き剥(は)がすという非常に繊細な作業が可能になった結果、神経を温存し、合併症を予防し、患者さんのQOL(生活の質)を維持できるようになったのです。

技術や経験から慎重に検討し、医療機関ごとに適応を決める

腹腔鏡下手術には適応しない条件

 私自身は、大腸がんに対しては、部位に限らず、ほぼ100%、腹腔鏡下で手術を行っています。十分に修練を積んだ外科医がいる医療機関では、標準的なガイドラインを超えていることを踏まえ、慎重な判断のもと、医療機関ごとに適応を決めているのが現状です。
 当施設では、適応しない患者さんの条件を決め(右の表参照)、治療選択に臨んでいます。

(名医が語る最新・最良の治療 大腸がん 2012年6月26日初版発行)

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