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分子標的薬による全身化学療法(杏林大学医学部内科学古瀬純司先生) 1/4ページ

肝臓がんの化学療法|更新日:2013/12/24[火]

がん細胞の増殖を抑えて生存期間を延長

 がん細胞の増殖や、がんに栄養を送る血管がつくられるのを抑えて、がんの成長を止める分子標的薬を用いた治療です。肝臓がんに対する全身投与では初めて有効性が認められました。

期待の分子標的薬「ソラフェニブ」とは?

がん細胞だけを狙い撃ちする分子標的薬

 ソラフェニブトシル酸塩(以下ソラフェニブ)は、肝臓がんに対し、唯一、全生存期間の延長が実証された薬です。すでに腎(じん)臓がんの治療に用いられていましたが、2009年に切除不能の肝臓がんに対して、健康保険の適用が承認されました。
 一般的な抗がん薬の治療では、薬を点滴で入れたり、注射したり、服用したりする方法がとられます。薬が病変だけでなく、全身に影響するため全身化学療法とも呼ばれます。しかし、肝臓がんでは長い間、外科的切除手術(肝切除)や、ラジオ波などを用いた経皮的治療、および肝動脈化学塞栓(そくせん)療法など、画像で見える病変のみを対象とする局所療法が中心でした。抗がん薬の全身投与は効果が難しい状況だったのです。
 肝臓がんは肝炎や肝硬変の状態にある肝臓にできるため、そもそも白血球や血小板数が減っています。そこに抗がん薬を使えば、抗がん薬の毒性が強く作用して、さらに白血球数や血小板数が減ってしまいます。
 また、抗がん薬の多くは肝臓で代謝されるため、もともと肝機能の低下している肝臓がん患者さんでは肝機能への影響が大きくなります。つまり、肝臓がんの場合、抗がん薬を全身投与しても薬の毒性というデメリットのみが出て、がんを攻撃する薬の効果というメリットは少なかったのです。そこが従来の抗がん薬の問題点でした。
 しかし、分子標的薬のソラフェニブは、主にがん細胞に特徴的な遺伝子やたんぱく質のみを標的とするので、これまでの薬と大きく違うといえます。

大規模臨床試験で有効性が認められた

肝臓がんの治療選択推移

 健康保険が認められたきっかけとなったのが、海外で行われた大規模な臨床試験「SHARP試験」です。2007年にASCO(米国臨床腫瘍(しゅよう)学会)という代表的ながんの学会で結果が発表されました。
 この試験では、ソラフェニブを服用したグループと、偽薬(プラセボ)を服用したグループとで有効性を比較していますが、その結果、ソラフェニブに全生存期間の延長や、がんの進行を抑える効果が認められたのです。
 肝臓がんはB型肝炎やC型肝炎などさまざまな原因で発症します。このSHARP試験は欧州を中心に行われましたが、肝臓がんの原因が異なるアジア圏でもソラフェニブの有効性を検討する必要がありました。そこで「Asian-Pacific試験」が日本を除くアジアで行われました。また、日本でも独自に試験が実施されています。いずれもソラフェニブの有効性が認められました。

●肝臓がんにおける従来の抗がん薬と分子標的薬の違い
抗がん薬 分子標的薬
・がん細胞と同時に正常な細胞も攻撃する
・重い副作用やがん細胞に耐性ができやすいため、長期投与は困難
・副作用は骨髄(こつずい)抑制、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などの消化器毒性、肝障害など、重い場合が多い
・薬は経口剤、注射剤など多数あるが、肝臓がんに有用性が証明されたものはない
・肝機能、白血球数や血小板数の低下で投与できない場合が多い
・がん細胞の増殖、血管新生にかかわる特定の遺伝子やたんぱく質だけを標的にする
・がん細胞の増殖を抑えることで、長期間の投与により効果が期待できる
・副作用は、皮膚障害、下痢、高血圧など特徴的なものが多いが、個人差がある
・現在、ソラフェニブのみが保険適用を承認されているが、多くの新しい薬剤が開発中
・腫瘍(しゅよう)の進行を抑えることで生存期間の延長が得られる

「変わらない」が7割 わずかだが完全に消える例も

ソラフェニブはがんの進行を抑える

 SHARP試験によると、全生存期間は、ソラフェニブを服用したほうがプラセボ(偽薬)より2.8カ月のびていました(ソラフェニブ群が10.7カ月、プラセボ群7.9カ月)。病変の縮小効果については、完全にがんが消えた(完全奏効)割合は0%、部分的に小さくなった(部分奏効)もわずか2.3%、変わらない(安定)が70.5%と高率でした。
 この臨床試験では0%という結果でしたが、完全にがんが消失することも、まったくないわけではありません。私自身もこれまでに画像上、複数の病変が消えた患者さんを2~3人経験しています。日本肝癌(がん)研究会などの学会や研究会でも、比較的大きな腫瘍が消えたという報告もされています。

(名医が語る最新・最良の治療 肝臓がん 2012年12月25日初版発行)

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