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ペプチドワクチン療法(国立がん研究センター中面哲也先生) 1/3ページ

免疫療法|更新日:2014/02/14[金]

活性化させた免疫細胞でがんを攻撃

 がん細胞が表面にもっている特有のたんぱく質=ペプチドを人工的につくり、体外から注入することで、免疫細胞がそれまで見逃していたがん細胞への攻撃力を高めるのが、ペプチドワクチン療法です。
 私たちが本来もっている免疫のしくみを利用した治療法で、がん細胞だけを狙えるため、正常な細胞への影響がなく、体に優しい治療であることが大きなメリットです。

がん細胞は毎日できていて免疫が負けると増殖する

 私たちの体内では、日々、がん細胞がつくられていると考えられています。がん細胞ができても、がんという病気にならない人がいるのは、体に備わった免疫細胞が、がん細胞をすぐに攻撃して増殖させないようにしているからだと考えられています。
 しかし、がん細胞の増殖のスピードに免疫細胞の攻撃が追いつかなくなったり、がん細胞が免疫細胞に対して防衛システムを発動し、その攻撃をかわしたりするようになると、がん細胞は増殖を続けていきます。
 つまり、がん患者さんの体内は「免疫よりがんが勝ってしまった状態」、「免疫のしくみが人手不足に陥(おちい)っている状態」といえます。そこで、がん細胞攻撃の担(にな)い手であるキラーT細胞を増やして、こうした「人手不足の状態」を改善し、免疫力を活性化しようというのが、ペプチドワクチン療法の考え方です。

がん細胞だけを攻撃する免疫細胞を増やす

肝臓のがん細胞だけにある特殊な目印を発見

 がん細胞はもともと正常な細胞が遺伝子の異常によって発生したもので、遺伝子的には正常細胞と似かよっています。それなのに、なぜ私たちの免疫細胞は、がん細胞を異物とみなして、攻撃をすることができるのでしょうか。
 それは、がん細胞の表面には正常細胞とは違う特殊なたんぱく質=ペプチドが現れているからです。ペプチドは、すべての細胞についている名札のような役目をしています。
 体のなかで見張り役をしている免疫細胞は、攻撃役の免疫細胞に名札=ペプチドの特徴を伝えます。攻撃役の免疫細胞は、その情報に基づいて、同じ特徴をもつ名札をつけた細胞をみつけ次第、攻撃するのです。
 肝臓のがん細胞の名札にあたるペプチドは「グリピカン3(GPC3)」というたんぱく質の一部です。私たちの研究グループはこの名札を発見しました。
 肝臓がんの患者さんのがん細胞を調べてみると、8割の人でグリピカン3が過剰に発現していました。グリピカン3は成人の正常な細胞にはほとんど現れません。
 グリピカン3ペプチドを用いた免疫療法として現在、私たちが臨床試験として進めているのが「ペプチドワクチン療法」なのです。

ペプチドワクチン療法の流れ

がん細胞の目印を免疫細胞に攻撃させる

ペプチドワクチン投与後

 ペプチドワクチンは、それ自体ががん細胞を殺すわけではなく、そこが抗がん薬による薬物療法と大きく違うところです。
 ペプチドワクチンは、細胞表面にある白血球のタイプを示すHLAの型によって異なります。私たちは、日本人に多いHLA-A24とHLA-A2に結合するグリピカン3ペプチドを発見しました。HLA-A24をもつ日本人は60%、HLA-A2をもつ日本人は40%います。
 ペプチドワクチンを投与すると、体内の見張り役の免疫細胞(樹状細胞など)が攻撃型のキラーT細胞たちに、大量の異物の存在を伝えます。キラーT細胞たちはその情報を受けて、活性化して増殖し、グリピカン3ペプチドをもつ肝臓のがん細胞を狙い、攻撃します。
 がん患者さんというのは、前述したように、がん細胞に免疫細胞が負けてしまっている状態です。ところが、ペプチドワクチンによって、通常ではありえないほどの大量のグリピカン3ペプチドが投与されるので、異常を察知した見張り役の指令で、キラーT細胞の活性化と増殖がおこって、再びがん細胞に立ち向かえるようになるのです。
 ほとんどの患者さんで、ワクチンを打ったあとにキラーT細胞が増えていることが説明でき、ワクチン後にキラーT細胞ががんの中に入っていることも確認しています。一部の患者さんではありますが、がん細胞が壊死(えし)したり、縮小、消失することも起こっています。

(名医が語る最新・最良の治療 肝臓がん 2012年12月25日初版発行)

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