新生児髄膜炎(細菌性髄膜炎、その他)
しんせいじずいまくえん(さいきんせいずいまくえん、そのた)
- 小児科
- 診療に適した科
新生児髄膜炎(細菌性髄膜炎、その他)とは?
どんな病気か
細菌、ウイルス、真菌などによる感染症で、脳・脊髄周囲の髄液腔に広がり、中枢神経系に炎症を起こす病気です。髄液中での細菌などの増殖により、さまざまな脳神経細胞障害、脳のむくみなどを来し、後遺症や死亡の原因になります。
新生児の髄膜炎は、大きく細菌性と無菌性に分けることができます。細菌性髄膜炎は敗血症に続いて発症し、早発型、遅発型に分けることができます。また、無菌性(細菌培養では検出できないという意味)ではウイルス性(散発性、流行性)、真菌性、薬剤性などに分けることができます。
細菌性髄膜炎は敗血症に引き続いて発症し、頻度は出生1000人に対し0・2~0・4人といわれています。また、低出生体重児、男児、多胎に多いことが知られています。
原因は何か
①早発型(生後72時間以内)
B群溶血性連鎖球菌(GBS)、大腸菌、リステリア菌、カンピロバクター菌、サルモネラ菌、インフルエンザ桿菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌など)など
②遅発型(生後72時間以降)
黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌など)、B群溶血性連鎖球菌、緑膿菌、クレブシエラ菌、セラチア菌など。原因となる菌は、施設ごとに違いがあります。
③無菌性
ヘルペスウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルスなどの占める割合が多いといわれています。
感染の機序(仕組み)
①新生児因子
子どもが未熟であるほど、好中球機能などの感染防御機能が未成熟です。このため、感染が局所にとどまらず、全身性の感染に陥りやすいといわれています。
②母体因子
母体内で血液を介して子宮から経胎盤感染を起こしたり、破水などにより上行性に、または分娩に伴い経産道性に感染する可能性があります。このため、前期破水、絨毛羊膜炎、遷延分娩(長引く分娩)、分娩外傷、B群溶血性連鎖球菌保菌などが、早発性敗血症の危険因子として認識される必要があります。
③環境因子
医療従事者や面会者からの水平感染、さまざまなチューブやカテーテルの留置、長期の留置針、抗生剤使用による腸内異常細菌叢の形成など。
症状の現れ方
新生児期には細菌性髄膜炎に特異的な症状は示さないことに注意する必要があります。突然のショック、呼吸不全、体温異常(発熱あるいは低体温)、哺乳不良、嘔吐、けいれん、嗜眠(ウトウトと眠りがちで意識の低下を示す)、易刺激性などが認められることが多いです。
早発型は突然に発症し劇症であることが多く、遅発型は「何となくおかしい」から徐々に進行することが多いようです。無菌性髄膜炎では、発熱や哺乳不良などに対して、検査をして初めてわかることが多いです。
検査と診断
症状が髄膜炎に限られたものではないため、敗血症や髄膜炎が疑われた場合は、髄液検査により確定診断する必要があります。ただし、母体の危険因子のみで症状を伴わない新生児には行う必要はありません。
治療の方法
大切なことは、診断がつきしだい、原因となる菌が判明する前に治療を開始することです。原因となる菌に対して有効な抗生剤を使用することはいうまでもありません。呼吸状態、循環状態が不良であることが多いため、人工呼吸器の使用を含めた呼吸管理、血圧、尿量を保つような循環管理、補助療法としての免疫グロブリン、顆粒球コロニー形成刺激因子、交換輸血などを必要とすることもあります(新生児敗血症)。
合併症や予後
急性期の合併症として、発熱、けいれん、意識障害が続く場合、および、抗生剤を使用しているにもかかわらず髄液から細菌が検出される場合には、脳膿瘍などを合併している可能性があります。また、あとになってから現れる合併症としては水頭症、脳萎縮などが知られています。
一般的には、細菌性髄膜炎の死亡率は10~25%、後遺症発生率は生存者の17~60%とされていますが、早期発見、早期治療により徐々に改善してきています。運動障害、知能障害、てんかん、聴力障害、視力障害などについても長期的に経過をみる必要があります。
最近では、B群溶血性連鎖球菌を保菌している分娩前の母親に対し、抗生剤の予防投与が行われるようになってきたため、今以上に新生児の敗血症や髄膜炎が減少することが予測されます。
新生児髄膜炎(細菌性髄膜炎、その他)に関連する検査を調べる
髄膜炎に関連する可能性がある薬
医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、髄膜炎に関連する可能性がある薬を紹介しています。
処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。
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メロペネム点滴静注用バッグ0.5g「日医工」 ジェネリック
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
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フルコナゾール静注液100mg「日医工」 ジェネリック
その他の化学療法剤
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アシクロビル点滴静注液250mgバッグ100mL「アイロム」 ジェネリック
抗ウイルス剤
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イトリゾール内用液1%
その他の化学療法剤
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メドロール錠2mg
副腎ホルモン剤
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アンコチル錠500mg
その他の化学療法剤
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エリスロマイシン錠200mg「サワイ」 ジェネリック
主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
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水溶性プレドニン10mg
副腎ホルモン剤
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プレドニゾロン錠1mg(旭化成)
副腎ホルモン剤
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エリスロシン錠100mg
主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。
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コラムアシドーシス
血液中は肺や腎臓のはたらきによって中性よりややアルカリ性の状態に厳密に保たれ(この状態でちょうど細胞内が中性になる)、細胞の活動性が維持されています。この状態を逸脱して酸性に傾いていくことをアシドーシスといいます。
アシドーシスは、呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスに分けることができます。呼吸性アシドーシスは、呼吸器系の疾患や呼吸中枢、呼吸筋の異常により、二酸化炭素が排出できず体内に蓄積することによって生じます。代謝性アシドーシスは体内に過剰な酸性物質が作られたり、酸性物質の排出が悪くなったり、中和するアルカリ物質が減少することによって生じます。
新生児期にアシドーシスを来す疾患は極めて多様ですが、いずれにしても何らかの治療を必要とするため、症状や検査結果などからできるだけ早く原因になっている疾患をさがす必要があります。治療として、元の疾患に対する治療が必要なことはいうまでもありませんが、呼吸性アシドーシスに対しては呼吸のサポートが必要になりますし、代謝性アシドーシスに対しては重炭酸(メイロン)による補正などが必要になります。
コラム低アルブミン血症
血液のなかには、アルブミンをはじめとするさまざまな蛋白質が含まれています。主要な構成成分であるアルブミンが正常範囲を下回る場合を、低アルブミン血症と呼んでいます。正常範囲については、成熟児であるか未熟児であるかによっても違うため、一概にはいえません。
アルブミンは、血液の浸透圧を維持したり、ビリルビンや薬を運ぶ機能をもっています。このため、低アルブミン血症は核黄疸発症(頭のなかに黄疸の元になるビリルビンが染みつく)の危険因子となり、また、浸透圧の低下による全身性のむくみを来すことがあります。新生児低アルブミン血症の原因としては、水分の体外への排出不良による希釈性の場合と、蛋白合成不良によるものが考えられます。未熟性または消化管の異常に伴う栄養不良などが蛋白合成不良の原因になります。
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