出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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未熟児貧血(未熟児早期貧血、未熟児後期貧血)
みじゅくじひんけつ(みじゅくじそうきひんけつ、みじゅくじこうきひんけつ)

もしかして... 鉄欠乏性貧血  溶血性貧血

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未熟児貧血(未熟児早期貧血、未熟児後期貧血)とは?

どんな病気か

 胎児は母親の子宮のなかでは、胎盤を通して母親から酸素の供給を受けています。肺呼吸と違い、少ない酸素をしっかり受け取り、体内に運ばなければならないので、胎児の血液は大変濃く、ヘモグロビン(血色素)も酸素と固く結びつく性質をもっています。

 ところが、出生後、私たちと同じ肺呼吸を始めると、酸素の供給が十分になるため、赤血球産生をコントロールするエリスロポエチンというホルモンの量が減り、急に赤血球が作られなくなります。約1カ月間、このような状況が続きます。

 その間にも赤ちゃんの体は大きくなり、血液の全体量は増えるため、赤血球濃度は薄まります。これがいわゆる新生児貧血です。普通、貧血がある程度ひどくなると、再びエリスロポエチンが産生され、骨髄で赤血球が作られて自然回復が図られます。

 しかし、未熟児においては生まれた時の体重が少ないわけで、当然、赤血球の量も少ないことになります。その一方で、生後の体重増加の割合は大きく、血液の薄まり方もひどくなり、貧血がひどくなります。これが未熟児の早期貧血といわれるものです。

 また、生後3カ月~1年ほどたってから未熟児にみられる貧血は、未熟児の後期または晩期貧血と呼ばれるもので、後述の鉄欠乏性貧血です。母体から十分な鉄をもらう前に、早めに産まれたために発症します。

 そのほかに、葉酸やビタミンEの欠乏による特別な貧血もまれに存在し(表9表9 未熟児貧血の分類)、2~3カ月のころに発症します。

表9 未熟児貧血の分類

症状の現れ方

 表8表8 貧血の症状に示した症状が現れます。新生児の場合、哺乳力低下が前面に現われます。

表8 貧血の症状

検査と診断

 末梢血液の検査と血清鉄のチェックが重要です。早期貧血では正球性正色素性貧血で、血清鉄値は低くはありません。一方、後期貧血は小球性低色素性貧血で、血清鉄値は低下します。

治療の方法

 未熟児早期貧血には輸血しか方法がなかったのですが、近年、エリスロポエチンの使用が可能となりました。そのほかの後期にみられる貧血には鉄剤を与えます。葉酸欠乏による巨赤芽球貧血、ビタミンEの不足による溶血性貧血には、それぞれ不足物質の補充を行います。

(執筆者:聖路加国際病院副院長・小児科部長 細谷 亮太)

貧血に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、貧血に関連する可能性がある薬を紹介しています。

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