出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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伝染性膿痂疹(とびひ)
でんせんせいのうかしん(とびひ)

もしかして... アトピー性皮膚炎

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伝染性膿痂疹(とびひ)とは?

どんな病気か

 黄色ブドウ球菌あるいは連鎖球菌による皮膚の感染症です。「とびひ」とも呼ばれ、接触によって感染します。

症状の現れ方

 伝染性膿痂疹は2種類に分けられ、ひとつは水疱(みずぶくれ)を生じ、びらんをつくる水疱性膿痂疹、もうひとつは炎症が強く痂皮(かさぶた)が厚く付く痂皮性膿痂疹です。

 水疱性膿痂疹は、初夏から初秋に多くみられ、乳幼児・小児に好発します。虫刺されや湿疹病変、すり傷などから発症し、小さな水疱ができて次第に紅斑を伴ってきます。水疱は破れてびらんとなり、離れた部位にも伝搬します。黄色ブドウ球菌が原因です。

 痂皮性膿痂疹は、季節に関係なく発症し、小児より成人に多くみられます。小さな水疱に始まり、膿疱とびらんを生じ、厚い痂皮へと変化していきます。発熱、リンパ節のはれ、時に咽頭痛など全身症状を伴うこともあります。

 また、アトピー性皮膚炎に合併する場合は激烈な症状を示すことがあります。原因としては連鎖球菌によるものが多いといわれています。まれに後遺症として腎炎を起こす可能性があります。

治療の方法

 ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬を内服します。有効であれば急速に改善しますが、水疱性膿痂疹の場合は軽快後も2~3日間は再発しないように内服します。痂皮性膿痂疹では腎炎の発症予防のために10~14日間の内服が必要になります。

 抗菌薬を含有する塗り薬が有効な場合があります。抗菌薬の内服を行う場合では、亜鉛華軟膏などを貼ってガーゼでおおうことで、ほかへの伝搬を防ぐよう努めます。入浴は制限せず、泡立てた石鹸で病変部をこすらずにていねいに洗い流します。

病気に気づいたらどうする

 抗菌薬の内服が治療の基本なので、皮膚科または小児科を受診します。他の園児・学童にうつす可能性があるため、露出部に病変がある場合はガーゼなどでおおった状態で登園・登校してください。

(執筆者:久留米大学医学部皮膚科学准教授/久留米大学医学部皮膚科学准教授 安元 慎一郎)

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 生まれつき、顔の皮膚と脳軟膜、眼内の脈絡膜という部位に血管腫を生じる病気です。実際にこれらすべての症状がみられることは多くありません。皮膚の血管腫による赤あざは最も頻度の高い症状で、片側性に顔面上半分にしばしばみられます。また、脳軟膜の血管腫の影響で、けいれん発作や麻痺、知能低下などの症状がみられることがあります。

 脈絡膜の血管腫は乳幼児期から眼の内部の圧力(眼圧)を上昇させるため、眼球が大きくなります(牛眼)。時には失明に至ることがあり、注意が必要です。

 早期にけいれん発作に対する投薬と眼圧のコントロールを行います。重症の場合、手術による治療が選択されることもあります。また、顔の赤あざにはレーザーによる治療が行われています。通常、命に関わるような問題は多くありません。

伝染性膿痂疹(とびひ)に関する医師Q&A