出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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肺炎とは?

高齢者での特殊事情

 高度高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗菌薬の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者肺炎のほとんどは、誤嚥による肺炎であり、よく繰り返すことから、単に肺炎を治療するだけではなく、予防することが重要になります。

 肺炎による死亡は60代では10万例あたり5人程度ですが、80代では、10万例あたり約70~160人で10倍以上になります。85歳以上では、10万人あたり年間2000人以上が肺炎で死亡し、毎日200人以上が肺炎で治療されていると推定されます。

 誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害のために、咽頭、副鼻腔、歯周、口腔に常在する病原体が、唾液などの分泌物とともに気道に入り込み、肺炎を発症したものです。この場合は食事の誤嚥ではなく、夜間寝ている間に知らず知らずのうちに飲み込まれる不顕性誤嚥が原因になることが多いようです。

 不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。とくに、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすいものです。加齢とともに、のどぼとけの位置は下がり、嚥下の時にのどをふさぐのに時間がかかるようになるからです。

 しかし、不顕性誤嚥のすべてが肺炎を発症するわけではなく、軽度の炎症であれば、そのまま治癒します。むせているからといってすぐに絶食にして予防する必要はありません。しかし、体位変換ができない場合や重症肺気腫などでは、容易に気道閉塞が生じて肺炎発症を助長します。つまり、不顕性誤嚥が肺炎に結びつくのは、宿主の免疫能や肺機能の低下、体位変換能力の低下などが背景としてあり、深く関わっているといえます。

治療とケアのポイント

 誤嚥性肺炎は適切な抗生物質の投与で治ることが多いものです。ただし、肺炎の原因である不顕性誤嚥が減らなければ、いったん改善した肺炎が悪化します。そこで、誤嚥を減らす予防策が重要となります。あお向けに寝かして放置していると誤嚥が悪化するので、頭部や上半身をベッドで高くしたり、口腔ケアなどを行うと有効です。口腔ケアは、肺炎の原因となる口腔内の病原微生物を減らし、その結果として肺炎を減らすのに有効です。たとえ歯がなくともブラッシングをしたり、就寝前にポピヨンヨードでうがいすることも有効な方法です。栄養状態の低下、筋力の低下、意識レベルの低下が誤嚥を増やすため、日ごろよりこれらに対処しておきましょう。

 また、嚥下を改善する物質が知られています。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)は、高血圧の薬ですが、嚥下反射物質(substance P)濃度を上昇させて肺炎を予防します。唐辛子に含まれるカプサイシンにも、同様の作用が認められています。カプサイシンの入った辛いものを食べて嚥下反射あるいは咳反射を高めておくことは、誤嚥予防、肺炎予防に役立ちます。また、脳梗塞予防薬である抗血小板薬(シロスタゾール)も、嚥下反射を高めて肺炎を予防することがわかってきました。

 加齢とともに増える不顕性誤嚥を完全になくすことは困難ですが、誤嚥を防ぐ対策は無数にあります。自分に合った予防策を立てましょう。

(執筆者:国立病院機構東京病院呼吸器科医長 寺本 信嗣)

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