出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
すべて
病名
 × 

ハンチントン病
はんちんとんびょう

もしかして... 認知症  遺伝子診断  不随意運動

つぶやく いいね! はてなブックマーク

ハンチントン病とは?

どんな病気か

 常染色体優性遺伝によって発病する神経変性疾患で、徐々に発症し進行する舞踏運動といわれる異常運動と、認知症や人格変化が特徴です。

 多くは35~50歳で発症します。本症は脳の尾状核という部分がとくに障害されます。特定疾患の治療対象疾患のひとつで、医療費の補助があります。

原因は何か

 例外なく遺伝子によって規定される病気で、原因遺伝子がわかっています。遺伝性はほぼ100%で、家族内での発症率が高い病気です。進行の度合いは家系により異なります。

症状の現れ方

 40歳前後に不随意運動(コラム)で発症し、ゆるやかに進行します。初めは手足に現れ、次第に顔面や頸部にも現れます。顔をしかめたり肩をすくめるといった素早い動きのため、落ち着きがないようにみえます。安静臥床時よりも歩行時や何か動作をしようとしたり、緊張した時に強くなります。

 病気の進行に伴い、怒りっぽい、飽きやすいなどの性格変化が現れ、うつ状態や被害妄想などの精神症状、さらに認知症の症状も現れます。20歳以下や60歳以上の発症では認知症の症状が軽く、若年発症では固縮型といわれ、舞踏運動よりパーキンソン症状が目立ちます。

検査と診断

 家族内発症がみられることと、頭部CT、MRI検査での尾状核の萎縮で診断されます。遺伝子診断が可能です。

治療の方法

 原疾患そのものを治したり、予防することはできません。ハロペリドール(セレネース)などの薬が異常運動を抑えるのに有効です。病気は進行しながらも10数年は経過します。

 この病気自体は生命に直接関わることはないのですが、激しい不随意運動のために体力を消耗したり誤嚥をしたり、あるいは感染症で死亡することがあります。そのため清潔や栄養面の管理が必要です。

病気に気づいたらどうする

 不随意運動にはさまざまなものがあるので、専門医(神経内科)の診察を受けてください。本症は遺伝性で発病前に気づくこともあり、遺伝性疾患のカウンセリングを受けるのが望ましいと思われます。

ハンチントン病と関連する症状・病気

(執筆者:横浜市立大学医学部神経内科 出井 ふみ)

舞踏病に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、舞踏病に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

舞踏病に関連する可能性がある薬をもっと見る

おすすめの記事

コラム不随意運動とは

横浜市立大学医学部神経内科 出井ふみ

 本人の意思に関係なく勝手に動く目的のない運動の総称で、不随意運動のなかにも多種多様なものがあります。大脳基底核という部分が障害されて起こることが多いのですが、大脳皮質、小脳、あるいは手足の筋肉や末梢神経の障害でも、不随意運動が起こりえます。

 不随意運動の原因疾患もさまざまですが、日常的によくみるのは、眼瞼れん縮(まぶたがピクピクする、眼が開かない)や本態性振戦(コップを持ったり、人前で字を書く時に手が震える)など、あまり心配のいらない疾患で、これらは比較的薬がよく効きます。

 しかし、パーキンソン病に伴う手の震え(振戦)も本態性振戦とよく似ており、なかには不随意運動が進行性の病気の初期症状のことがあります。

ハンチントン病に関する医師Q&A