出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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頸椎症
けいついしょう

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頸椎症とは?

どんな病気か

 頸椎の椎体骨の骨棘(とげ状の突起)形成、椎間板(椎体と椎体の間にあってクッションの役割をしている)の後方突出、靭帯の石灰化、骨化などによって、脊髄から出て肩や腕に行く神経(神経根)または脊髄自身が圧迫・刺激を受ける病気です。

原因は何か

 頸椎の変化は主に加齢や外傷が原因で起こります。加齢による頸椎の変化には個人差がありますが、一般的には40歳ごろから明らかになります。高齢になるほどその変化が強くなるため、頸椎症は中高年者で多く発症します。

症状の現れ方

 症状が急激に現れることはなく、頸部の症状から始まり、徐々に上肢や下肢の症状が出てきます。

 頸部の症状としては、肩や首の筋肉が緊張し(肩こりなど)、圧痛がみられます。また、頸部の前屈や後屈時に後頸部から肩、上肢に放散する痛みが現れます。

 上肢の症状としては、上肢の痛みとともに脱力感、疲労感、手指の感覚異常、冷感、こわばりを感じることがあります。また手先の仕事、書字、物を摘むなどの動作ができにくくなり、時間がかかるようになります。感覚異常は圧迫部位の高さに一致しており、たとえば第5頸椎椎間板による圧迫時は拇指が、第6頸椎椎間板の時は中指が、第7頸椎椎間板の時は小指にそれぞれ感覚異常を来します。症状が進行すると、手の筋肉が萎縮したり、皮膚温の低下、発汗異常、手指の変形などがみられます。

 脊髄に圧迫が起こると下肢の症状が現れ、歩行障害、便秘、排尿障害などの症状が現れます。

 また椎骨の変形により頭蓋内に行く動脈が圧迫されると、首を曲げた時などに血行障害が起こり、めまいを引き起こすこともあります。

検査と診断

 首を横に曲げ、頭部を圧迫した時に上腕に痛みが走ったり(スパーリング検査)、首を軽く後方へ曲げ、頭部を圧迫した時に上腕に痛みが走れば(ジャクソン検査)、この病気が疑われます。

 頸椎の単純X線写真で、椎体骨の扁平化、硬化、骨棘形成、椎体間腔の狭小化の所見がみられれば、診断はほぼ確実です。脊髄や神経根の圧迫の状態をみるには頸部MRI検査が有用で、椎間板の後方突出、くも膜下腔の狭小化や消失、脊髄の圧迫、変形などの変化がわかります(図24図24 頸椎症(MRI像))。

図24 頸椎症(MRI像)

治療の方法

 神経根の圧迫症状に対しては、頸部周囲の筋肉の緊張を和らげる治療を行います。就寝時の姿勢も大切で、枕の高さを調節して軽度の前屈位をとるようにします。薬物療法としては、非ステロイド性消炎薬や筋弛緩薬が有効です。痛みが強い時は頸椎固定用のカラーを首に装着します。そのほかの理学療法としては温熱、頸椎牽引、低周波、レーザー治療などがあります。

 牽引やカラーを用いた装具療法を早期に行えば、症状の進行をかなり食い止めることができます。日常生活に支障を来す場合には、入院して強力な牽引を行うか、手術による治療が行われます。

(執筆者:東海大学医学部神経内科学教授 吉井 文均)

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東海大学医学部神経内科学教授 吉井文均

 頸椎の退行性の変化は加齢に伴って起こるため、頸椎症の多くは中高年者に発症します。頸椎は重い頭を支え、前後左右への運動が激しいため、加齢による変化が比較的強く現れやすい部位です。年をとると椎体骨のふちには骨棘が形成され、扁平化するとともに、椎間板は水分含有量が減って弾性が低下し、後方に突出するようになります。また後縦靭帯や黄色靭帯にも肥厚や石灰化などの変化が起こります。

 これらの変化のために頸椎脊柱管が狭くなって、脊髄、神経根が圧迫されたり、前脊髄動脈、根動脈の循環障害が生じてさまざまな症状が現れることになります。このような加齢による頸椎の変化は40歳以上の人ではかなりの頻度でみられますが、症状がまったくない人もいます。

 高齢者の上肢のしびれの原因としては脳卒中や糖尿病性ニューロパチーなどもありますが、頸部の痛みや肩こりを伴い、感覚障害が前腕や一定の指に限られている場合は頸椎症が疑われますので、整形外科や神経内科の医師に相談してみてください。

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