出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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顔面けいれん
がんめんけいれん

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顔面けいれんとは?

どんな病気か

 顔面けいれんはまぶたや口角などの顔面の筋肉がぴくぴくとけいれんする病気です。ほとんどの場合は片側だけですが、まれに両側にみられることがあります。比較的女性に多く、発症は40~50代が多いのですが、どの年齢層でも起こります。

 飲酒やストレス、不安などで悪化します。患者さんにより、持続的にけいれんがみられる場合と、普段は無症状ですが何らかの契機でけいれんが起こる場合とがあります。

原因は何か

 顔面けいれんが起こる原因として注目されているのは、脳に達する血管が、脳幹という脳の幹にあたる部分で顔面神経を圧迫することです。そのため、高血圧や糖尿、喫煙者などで動脈硬化になりやすい人は、顔面けいれんが起こりやすくなります。

 そのほかにも脳幹の腫瘍がある場合、また明らかな原因が見つからないことなどがありえます。

検査と診断

 顔面けいれん症状と特徴的なけいれんから、診断は容易です。けいれんの原因を突き止めるためにMRIやCTなどの画像診断や、神経伝導検査、筋電図などの検査を行うことがあります。血管が脳幹を圧迫していることを最もはっきり確認できるのは血管造影と呼ばれる検査で、血管にカテーテルを入れて造影剤を流して血管の走行を調べます。

 しかし、血管造影は脳梗塞などの危険を伴うことがあるので、MRIと同時に、血管の走行が体を傷めずにわかるMRAという画像診断で診断されることもあります。

治療の方法

 内服治療として、抗コリン薬、抗てんかん薬などがありますが、効果は比較的弱く、短期間で再発することがあります。

 最近、ボツリヌス毒素をけいれんする筋に注射するボツリヌス療法が行われるようになりました。これは細菌兵器として使われることが危惧されているボツリヌス菌からの毒素と同じものですが、治療に使われる量は致死量よりはるかに少量なので、命に関わることはありません。ボツリヌス注射により、けいれんしている筋肉を弱めることがこの療法の目的です。ボツリヌス注射治療は外来でできますが、効果は約3カ月なので繰り返し注射してもらう必要があります。

 脳の血管が脳幹を圧迫している場合、手術が根本的な治療法になります。圧迫している血管と、圧迫を受けている脳幹の間にウレタン樹脂などのクッションを設けて圧迫を取ることが目的です。

(執筆者:ベスイスラエル・ディーコネス医療センター/ハーバード大学神経内科准教授 野寺 裕之)

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 最近、大きな総合病院では、ペインクリニックという診療科が設置されていることがあります。内科、外科、脳外科、整形外科、心療内科など、いろいろな専門科では痛みをもつ患者さんを治療しますが、痛みの原因疾患が見つからないと、その後の治療も不完全になることがあります。

 それに対してペインクリニックでは、原因疾患にかかわらず、痛み自体を治療します。治療の手段として、鎮痛薬、電気刺激、マッサージなどの理学療法、神経ブロック療法などがあります。

 ペインクリニックでは痛みの治療を専門とする麻酔科医を中心に、神経内科医、放射線科医、脳神経外科医などの医師が協力し、それぞれの視点から痛みをもつ患者さんを治療します。さらに、患者さんそれぞれに特有な痛みに対し、最も適した治療や生活指導を行います。

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