出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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骨粗鬆症
こつそしょうしょう

骨粗鬆症とは?

どんな病気か

 骨量の減少と骨組織の微細構造の異常の結果、骨に脆弱性(もろくて弱くなること)が生じ、骨折が生じやすくなる疾患です。骨軟化症では全骨量(類骨と石灰化した骨の合計)は減少しませんが、骨粗鬆症では全骨量が減少するのが特徴です。正常な骨では、骨吸収と骨形成のバランスが保たれ、骨量は維持されていますが、骨粗鬆症では、骨吸収が骨形成を上回るため骨量が減少します。

 高齢社会を迎え、骨粗鬆症の患者さんは年々増加の一途をたどり、約1000万人を突破しているといわれています。以前は単なる加齢現象ととらえられていましたが、骨粗鬆症は骨の病的な状態と考えるべきです。

 合併症として、椎体圧迫骨折や大腿骨頸部骨折を生じると、患者の日常生活動作を著しく低下させ、さらには生命予後にも関わってきますので、早期の診断、治療が望まれます。

原因は何か

 基礎疾患の有無により、①原発性骨粗鬆症と②続発性骨粗鬆症に分類されます。

 原発性骨粗鬆症のうち、主として閉経後の女性にみられる閉経後骨粗鬆症と、65歳以上の高齢者にみられる老人性骨粗鬆症があり、これらが全体の約90%を占めています。

 一方、続発性骨粗鬆症の原因としては、内分泌疾患、代謝性疾患、炎症性疾患、先天性疾患、薬物性などがありますが、ステロイド投与による骨粗鬆症に注意すべきです。

症状の現れ方

 通常、骨量の低下のみでは症状が出現することはありません。骨折に伴って疼痛や変形が出現します。

 原発性骨粗鬆症では、股関節の骨折(大腿骨頸部骨折)、手首の骨折(撓骨遠位端骨折)、脊椎圧迫骨折が多く発症します。一方、ステロイドによる二次性骨粗鬆症では脊椎椎体骨折が多く、関節リウマチによる二次性骨粗鬆症では、脊椎、四肢に限らずあらゆる部位に骨折がみられます。

 脊椎椎体圧迫骨折では、後弯の進行や潰れた椎体により脊髄が圧迫され、後になってから下肢の運動・知覚麻痺や排尿・排便障害が現れることがあるので注意が必要です。また、骨折した脊椎が癒合しないため(偽関節)、頑固な腰背部痛が残ることもあります。

検査と診断

 問診では、痛みの部位、程度、外傷の既往などのほか、危険因子として骨折歴、閉経の状況、運動習慣、および続発性骨粗鬆症の原因となる疾患、薬剤投与の有無を聞きます。

 血液・尿検査では、骨粗鬆症に特異的な検査所見はありませんが、二次性骨粗鬆症や他の疾患との鑑別のために必要です。また、尿中の骨吸収マーカーの検査は、骨粗鬆症の診断や治療の効果判定に有効です。

 骨密度を測定し、日本骨代謝学会の原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度版)に基づいて診断します。これによると若年成人(20~44歳)平均値(YAM)の70%未満が骨粗鬆症、70~80%を骨量減少、80%以上を正常としています。

 脆弱性骨折(外傷歴のない骨粗鬆症に関連した骨折)の有無の確認のため、疼痛のある部分の単純X線写真も撮影します(図65図65 骨粗鬆症(X線写真))。

図65 骨粗鬆症(X線写真)

治療の方法

 食事、運動や日光浴を含めた①日常生活指導、②薬物療法が主な治療法です。

 生活指導としては、乳製品を中心としたバランスのよい食事を摂取すること、日光曝露と歩行能力維持のため屋外歩行をすすめます。日常の運動習慣は骨量維持に加え、歩行バランス感覚の維持にもつながります。

 薬物療法としては、ビスホスフォネート製剤、塩酸ラロキシフェン(SERM)、カルシトニン製剤、ビタミンK製剤、ビタミンD製剤などがあります。日本骨粗鬆症学会の骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(2006年版)では、総合評価で強くすすめられている薬剤は、ビスホスフォネート系ではアレンドロン酸(商品名フォサマック、ボナロン)、リセドロン酸(ベネット、アクトネル)、およびSERM(エビスタ)です。

 その他、腸管からのカルシウム吸収の低下がある場合にはビタミンDも併用されます。また、脊椎圧迫骨折などによる腰背部痛がある場合には、カルシトニン製剤(エルシトニン)の注射も有効とされています。

 骨折を生じた場合、大腿骨頸部骨折では、原則として手術療法が選択されます。また、胸・腰椎圧迫骨折による下肢麻痺などの脊髄症状が生じた場合や骨折が癒合せず、偽関節になり、激しい疼痛が残存し、日常生活に支障のある場合には手術療法も考慮されます。

病気に気づいたらどうする

 近年では、健康診断に骨密度測定が行われている場合もありますが、閉経後の女性は骨密度測定、あるいは血液や尿の骨吸収マーカーの測定を受けることがすすめられます。

 また、日本骨粗鬆症学会から「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(2006年版)」が出ていますので、参照するとよいでしょう。

(執筆者:防衛医科大学校整形外科学准教授/防衛医科大学校整形外科学准教授 朝妻 孝仁)

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