出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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歯肉線維腫症
しにくせんいしゅしょう

もしかして... 多毛症

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歯肉線維腫症とは?

どんな病気か

 歯肉線維腫症は、遺伝因子が関係する遺伝性歯肉線維腫症と、遺伝因子とは関係のない特発性歯肉線維腫症に分けられます。遺伝性歯肉線維腫症は、増殖の程度が高度で、女性に多くみられ、家族的に発現します。

 硬く増殖肥大した歯肉が歯冠の大部分をおおうことから、古くは歯肉象皮症、歯肉巨大症などとも呼ばれていました。歯肉肥大は、乳歯が生えるころ、時には永久歯が生えるころから始まり、薬物による歯肉増殖症と類似しています(薬物性歯肉肥大)。

症状の現れ方

 通常、口のなか全体に歯肉肥大が対称性に起こりますが、奥歯より前歯の部分に高度にみられます。奥歯では、上あごでは裏側(舌側)、下あごでは表側の歯肉に肥大が高度にみられます。

 増殖肥厚した歯肉はピンク色をしており、硬く、表面は平滑で、炎症症状はほとんどみられません。また、歯の形、生える順番、あごの骨の発育に異常は認められません。

 全身的には、多毛症、精神発達遅滞を伴うことがあります。

治療の方法

 増殖肥大した歯肉を外科手術で切り取ります。再発することもありますが、一般的に予後は良好です。

(執筆者:日本大学歯学部歯周病学教授 伊藤 公一)

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ダウン症候群

 常染色体の第21番染色体のトリソミー(過剰)によって、特異顔貌、精神運動発達遅滞、多発奇形を示す病気です。

 新生児1000人に1人の頻度で発症し、90~95%が標準トリソミー型、5%が転座型の染色体異常といわれています。丸い扁平な顔、鼻根部が扁平、下あごが小さい、舌が大きい、口唇裂や口蓋裂がみられることもあります。

 歯周組織は、炎症を起こしていることが多く、その原因として、プラーク(歯垢)、歯並びや噛み合わせの異常などに加えて、体を守る白血球機能の異常、精神発達遅滞による口腔清掃の不良などをあげることができます。心室中隔欠損などの心奇形が約半数にみられ、消化管奇形も20%の症例に合併するといわれています。

パピヨン・ルフェーブル症候群

 100万~400万人に1人という頻度で発症するまれな病気です。血族結婚の家系に発症しやすいことから、遺伝性疾患と考えられています。

 手のひらや足の裏がざらざらして硬くなり、重症になるとひび割れを起こします。乳歯や永久歯の歯周組織が壊され、早期に歯が抜けます。手足の角化は2歳ころから始まりますが、乳歯の発育や生え方に異常はありません。乳歯の歯周組織は、歯が生えるとすぐに炎症が起こって壊れ始め、4歳ころには乳歯は抜けてしまいます(通常の乳歯の生え変わりは6歳ころ)。

 その後、歯肉の炎症は治まりますが、永久歯が生えてくると、また歯周組織が壊され、多くは12~16歳ころまでに永久歯も抜けてしまいます。原因はよくわからず、治療は極めて困難です。