出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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高カリウム血症
こうかりうむけっしょう

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高カリウム血症とは?

どんな病気か

 体内のカリウムは大部分が細胞のなかにあり、細胞の外(血液中など)に存在するのはわずかです。細胞のなかと外のカリウム濃度のバランスは重要で、このバランスが崩れると細胞はうまくはたらけなくなります。高カリウム血症とは血液中カリウム濃度が5・5mEq/L以上の場合をいいますが、このような状態では細胞のはたらきは低下し、重い症状を引き起こします。

原因は何か

 原因は4つに大別されます(表4表4 高カリウム血症の原因)。

表4 高カリウム血症の原因

①偽性高カリウム血症は採血した検体の問題で、真の病気ではありません。

②細胞内から血液中へのカリウムの移動とは、血液が酸性に傾いた時など、体の状態に応じてカリウムが細胞のなかから血液中に移動してきて生じます。

③カリウム負荷には、カリウムを大量に含む薬剤の使用や、やけどや大きなけがなどで細胞が一度にたくさん破壊された時などになります。

④腎臓からのカリウム排泄障害は、腎臓や尿細管が強く侵された時、あるいはアルドステロンというホルモンの欠乏により生じます。

症状の現れ方

 悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが主な症状です。カリウム値が7~8mEq/Lを超えると危険な不整脈が現れ、心停止の危険性が生じます。

検査と診断

 血液中のカリウム濃度を測定して診断します。合併している病気からカリウム上昇の原因は予想できることが多いのですが、動脈血ガス分析、心電図検査、腎機能検査、尿検査、副腎皮質ホルモンの測定などが併せて行われ、詳しい原因も診断されます。

治療の方法

 治療としては、原因になっている状態を改善することが大切ですが、高カリウム血症が悪化すれば生命に関わることもあるため、血液中のカリウムを減らす治療が加えられます。具体的には、まず食事でカリウム制限を行い、イオン交換樹脂製剤でカリウムの吸収を抑える一方で、利尿薬により尿中への排泄を促します。また、アルドステロン作用をもつホルモン薬を投与することもあります。

 重症の高カリウム血症で緊急に治療が必要な時は、グルコン酸カルシウム(カルチコール)で重症の不整脈を予防したり、重曹を投与して酸性に傾いた血液を中和します。

病気に気づいたらどうする

 重症の不整脈を引き起こすことがあるので、早めに精密検査と治療を行う必要があります。

高カリウム血症と関連する症状・病気

(執筆者:弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学助教 崎原 哲)

高カリウム血症に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、高カリウム血症に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラム副腎インシデンタローマ(偶発腫)

弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学助教 崎原哲

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 一方、良性だとしても安心してよいわけではなく、ホルモンを過剰に産生する場合は、治療が必要となる場合があります。

 副腎はさまざまなホルモンを産生する臓器ですので、そこにできる腫瘍も、しばしば何らかのホルモンを産生しています。とくに、コルチゾールというホルモンを少しずつ産生する腫瘍の場合、目立った症状を引き起こすことがなくとも、数年かけて高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、骨粗鬆症などを引き起こす可能性があります。この状態は、サブクリニカルクッシング症候群と呼ばれ、手術が必要とされています。

高カリウム血症に関する医師Q&A