出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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洗剤・界面活性剤中毒
せんざい・かいめんかっせいざいちゅうどく

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洗剤・界面活性剤中毒とは?

どんな病気か

 家庭でよく使われる衣類・食器用洗剤には、陰イオン系、非イオン系などの界面活性剤が含まれています。

 事故や誤飲、自殺目的の飲用などで洗剤が口に入った場合、少量であれば通常は問題ありませんが、多量の場合は、消化管粘膜の損傷や筋力の低下、けいれんなどが起こり、肝障害、ショックなどにより死亡することもあります。

原因は何か

 界面活性剤には、陰イオン系、非イオン系のほか、陽イオン系、両イオン系があります。陰イオン系、非イオン系界面活性剤は、石鹸や洗浄剤として使用され、家庭用洗剤のほとんどにはこれらが使われています。

 一方、陽イオン系界面活性剤は柔軟剤、殺菌剤、静電気防止剤などに用いられ、両イオン系は洗浄剤、柔軟剤、静電気防止剤などに用いられています。いずれも陰イオン系、非イオン系よりも毒性は強いのですが、家庭用洗剤に用いられる場合の濃度は低く抑えられています。

 界面活性剤には蛋白凝固作用があり、消化管の粘膜を腐食させます。また細胞膜機能を低下させ、血管の透過性を亢進し、循環血漿量を減らします。多量の場合は、溶血や神経の遮断を起こします。

症状の現れ方

 経口摂取の場合は、口腔や咽頭、消化管の粘膜を刺激し、損傷します。そのため多量に飲むと、腹痛や嘔吐、下痢を起こし、吐血、下血がみられることもあります。また、脱力、筋力低下、けいれんなどの神経症状が生じます。

 さらに、肝障害、循環血漿量減少性ショック、アシドーシス(血液が酸性になること)、肺水腫などが起こり、死亡することもあります。

検査と診断

 どんな物質をどの程度の量飲んだのかを確認することが大切です。初期症状は、かぜや食中毒に似ています。

治療の方法

 牛乳または卵白を飲ませます。洗剤・界面活性剤を多量に飲んだ場合は、吐かせたり、穿孔(消化管に孔があくこと)に注意しながら胃の洗浄を行います。下剤、活性炭を投与することもあります。そのほか、症状に応じて対症療法を行います。

病気に気づいたらどうする

 多くの場合、牛乳を飲ませるだけでよいのですが、洗剤・界面活性剤をコップ1杯あるいはそれ以上飲み込んでしまったら、牛乳を飲ませたうえ、吐かせて、救急病院に搬送してください。

洗剤・界面活性剤中毒と関連する症状・病気

(執筆者:神戸女子大学公衆衛生学教授 栗原 伸公)

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 アスベストは、天然に産する繊維状ケイ酸塩鉱石で、耐摩性、耐熱性などに優れ、スレート剤、ブレーキライニング、断熱剤、保温剤、とくに9割以上が建材に用いられていました。しかし、多くの健康に関する影響が明らかになり、現在では全面的に使用が禁止されました。今後問題となるのは、かつて曝露された人や、建物の解体作業による曝露者です。主な病気には図7図7 アスベストによる健康障害表15表15 アスベストによる健康障害に示したものがありますが、いずれも潜伏期間が10~40年と極めて長く、長期にわたる監視が大切です。

図7 アスベストによる健康障害

表15 アスベストによる健康障害

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