出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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外傷性くも膜下出血
がいしょうせいくもまくかしゅっけつ

外傷性くも膜下出血とは?

どんな外傷か

 脳を包んでいる髄膜の3層のうち、硬膜の内側にある薄いくも膜と脳の間に出血が広がったものです(コラム頭部の解剖図)。

 一般に、くも膜下出血という病名は脳動脈瘤の破裂が原因で出血した場合を指すので、けがが原因の場合は外傷性くも膜下出血と呼びます。

原因は何か

 通常、脳の表面(脳表)に脳組織の挫滅(脳挫傷)があり、そこからの出血がくも膜下腔に広がってくも膜下出血になります。

 少量のくも膜下出血が、びまん性軸索損傷により生じている場合もあります。

症状の現れ方

 激しい頭痛や嘔吐、あるいは意識障害などが受傷時から現れます。脳挫傷の局所の症状として、半身の麻痺(片麻痺)、半身の感覚障害、言語障害、けいれん発作などがみられることもあります。

 びまん性軸策損傷に伴う場合は意識がなく、重症例では出血は少量であっても、脳の深部にある生命維持中枢(脳幹)が直接損傷を受けているため、呼吸ができなくなったり急死することがあります。

検査と診断

 脳のしわ(脳溝、脳裂)や脳の深部のすきま(脳槽)の出血が、頭部CTで白く映ります(高吸収域)。正常では、この部分には脳脊髄液があるため、頭部CTでは黒く映ります(低吸収域)。

 脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血とは、ほとんどの場合でCTの出血のパターンや、外傷で合併する脳挫傷の所見などから区別は可能です。しかし、時には区別のため、脳血管の検査によって脳動脈瘤を診断しなければならないことがあります。

 脳血管の検査方法として、MRアンギオグラフィー(血管を映し出すMRI)、3D-CTアンギオグラフィー(造影剤を注射してCTを行い、立体的に脳血管を映し出す)、あるいは脳血管撮影(鼠径部などの動脈からカテーテルを挿入し、造影剤を注入して撮影する)があります。

治療の方法

 くも膜下出血を手術で取り除く効果はほとんどないため、手術は通常行われません。出血は自然に吸収されます。

 合併する脳挫傷によって頭蓋骨の内側の圧が上昇している場合(頭蓋内圧亢進)は、それに対する治療が行われます。

 予後は合併する脳損傷(脳挫傷やびまん性軸策損傷)の有無と程度によります。時に脳脊髄液の流れが滞って、あとから外傷性正常圧水頭症を来すことがあります。

(執筆者:慶應義塾大学医学部救急医学専任講師 並木 淳)

くも膜下出血に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、くも膜下出血に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

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慶應義塾大学医学部救急医学専任講師 並木淳

 頭部の基本的な構造は、脳が頭蓋骨という入れ物に入っている状態といえます(図2図2 頭部の解剖図)。頭蓋骨よりも外側を頭蓋外といい、頭部軟部組織がおおっています。頭蓋骨よりも内側を頭蓋内といい、脳が髄膜に包まれた状態で存在します。脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題になります。

図2 頭部の解剖図

 髄膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3層構造になっています。硬膜は頭蓋骨の内側にぴったりと張りついている、厚紙のようなしっかりした膜です。くも膜は薄く弱い膜で、ピンセットでつまむと破れてしまいます。軟膜は脳の表面そのもので、はがすことはできません。くも膜よりも内側を、無色透明の脳脊髄液が満たしています。

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