慶大ら研究グループ 閉経後の骨粗しょう症の発症メカニズムを解明

[ニュース・トピックス] 2013年11月20日 [水]

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閉経後の骨粗しょう症の発症メカニズムが判明

(この画像はイメージです)

 国内の骨粗しょう症の症患者は1,300万人に上ります。中でも閉経後の女性では約4人に1人、80歳以上の女性では2人に1人が骨粗しょう症と言われています。しかし、閉経後の骨粗しょう症における根本的な発症メカニズムは、これまでわかっていませんでした。
 そのメカニズムを慶應義塾大学、仏カレッジ・ド・フランス、同ストラスブール大学、米カリフォルニア大学、福島県立医科大学の共同研究グループが解明。新しい治療薬開発に大きな期待が寄せられています。

これまでにない治療薬の開発に期待

 これまでの研究から、古くなった骨を吸収する破骨細胞が、閉経後に増加することはわかっていました。破骨細胞が多く存在する骨の表面は、酸素濃度の低い低酸素領域です。研究グループは、低酸素領域でタンパク質として、安定化した機能を発揮する転写因子の「HIF1α」に着目。マウスを用いた実験を行いました。
 すると、閉経前のマウスでは、破骨細胞からHIF1αのタンパク質はほとんど検出されなかった一方、閉経により女性ホルモンのエストロゲンが欠乏し、骨粗しょう症状態となったマウスでは、破骨細胞にHIF1αのタンパク質が強く検出されるようになったそうです。
 そこで、破骨細胞においてHIF1αを欠損させたマウスを作り、エストロゲン欠乏による骨粗しょう症状態にしてみると、破骨細胞の活性化や骨量の減少が起こらなくなることが明らかになりました。さらに、エストロゲンがHIF1αのタンパク質を安定化させないこと、HIF1α阻害剤を投与したマウスでは、閉経後でも骨密度が増加し、エストロゲン欠乏による骨粗しょう症の発症を完全に抑制できることがわかりました。
 研究グループは、これらの結果から、閉経後の骨粗しょう症の発症には、エストロゲン欠乏によって破骨細胞で安定化するHIF1αが重要な働きをしていること、また、HIF1αが閉経後の骨粗しょう症の治療標的になることがわかったとしています。
 これまでの骨粗しょう症の治療薬は、骨粗しょう症の分子的な発症メカニズムの解明に基づいて開発されたものではありませんでした。今回の研究結果により、これまでにない優れた治療薬が開発されることが期待されます。(QLife痛み編集部)

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