背骨が曲がらない・・・原因不明の病気「強直性脊椎炎」って?

[ニュース・トピックス] 2014年7月23日 [水]

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「気のせい」「怠け者」と言われた患者さんも

(この画像はイメージです)

 強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)という病気をご存知でしょうか。ASは血清反応陰性脊椎関節炎の1つで、その原因は明らかになっていません。近年では、HLA‐B27というヒト白血球抗原が密接に関係しているといわれています。有病率は、日本人では0.0065%ほどと考えられており、非常に珍しい病気です。発症すると、背骨、腰、臀部、股や肩の関節などに、痛みや腫れ、こわばりがみられ、これらの部位が次第に動かなくなり、ひどい場合は背骨が曲がらなくなったり、体が一本の棒のようになったりします。
 6月26日に行われたアッヴィ合同会社とエーザイ株式会社のプレスセミナーで発表された、AS患者会「日本AS友の会」のアンケート調査によると、ASの初発年齢は平均25.29歳、30歳までに7割が、40歳までに9割が発症しています。最初に症状が現れた部位は、股関節部、骨盤、腰部などが多く、平均4.4箇所。初発症状としては、腰背部・臀部痛、股関節痛などが大多数を占め、初期は痛みが突然ひどくなったり、まったく無くなったりを繰り返すそうです。
 また、ASと診断されるまでにかかった時間は平均10.5年、受診した施設数は4.7施設にのぼりました。ASの初期は、他の疾患と似たような症状を示すため、患者さんのおよそ9割がASと診断される前に、ぎっくり腰などの腰痛症や、坐骨神経痛、ヘルニアといった他の疾患と診断されたことがあり、病状の波が激しいことから中には「気のせい」「怠け者」「運動不足」と言われた患者さんもいるそうです。

医療従事者の間でも認知度が低いAS

 AS患者さんの数が少ない日本では、医療従事者の間でもASの認知度が低いことから、「ASと診断された後でも、適切な治療を受けられないこともあります」と同セミナーで講演した順天堂大学の井上久先生は語ります。ASはリウマチ性疾患のグループに属していますが、一部のリウマチ治療薬は効果がありません。それを知らず、効かない薬をずっと飲まされた患者もいるとのことです。
 治療法としては、まず鎮痛薬で痛みを取り除きます。痛みを取り除くための鎮痛剤ですが、一部の鎮痛剤を継続的に服用することで、体が曲がらなくなる原因の「骨化」の進行が抑制されたという研究結果があります。また、2010年に日本でもASに対し適用となったTNF阻害薬も、一部の患者さんに対して高い有効性が期待できるとされています。
 しかし、日本ではASへのTNF阻害薬の適応は、それまでの治療で効果がみられなかった場合となっており、初期の段階でTNF阻害薬による治療を受けることが難しいという現状があります。また、医療費助成制度を利用したくても「リウマチのように手足が動かないわけではなく、背骨が動かないというのは、なかなか認定されない。特に初期は認定を受けられない」(井上先生)ことから、高額なTNF阻害薬を使用するのをためらう患者さんもいるそうです。今後、ASについて医療従事者の理解はもちろんのこと、医療費助成制度など、公的なサポート体制の充実が期待されます。(QLife痛み編集部)

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