既存のステロイド薬が関節軟骨の再生を強力に誘導?

[ニュース・トピックス] 2015年4月10日 [金]

facebook
twitter
google
B

治療法が限られている変形性関節症

(この画像はイメージです)

 膝や股関節などの炎症、痛み、可動域の制限などによってQOL(クオリティオブライフ:生活の質)が大きく低下する疾患、変形性関節症。その患者さんは、日本では1000万人を超えているといわれています。また、介護保険の要支援原因疾患の第1位でもあり、医療経済学的にも大きな問題となっています。
 骨は骨折しても再生しますが、関節軟骨は傷を受け欠けたり、擦り減ったりすると、もと通りにはなりません。そのため、重症な場合には、人口関節置換術などの外科手術が適応となります。近年では、患者さん自身の軟骨を採取・培養して移植する「自家培養軟骨移植術」が実施されるようになりましたが、採取した部位の感染や採取量が限られているなどの問題もあります。
 こうした中、岡山大学ら研究グループは、すでにアメリカで承認されている薬剤の中から、軟骨細胞分化・促進する能力のある物質を調査。グルココルチコイドのひとつである「フルオシノロンアセトニド」(FA)が強力に軟骨細胞分化を促進することを発見しました。

欠損部の軟骨組織が再生していることを確認

 今回の研究では、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を高密度培養し、軟骨基質の合成に与える影響を調べました。その結果、FAは、hBMSCsを軟骨細胞に分化させる誘導因子「TGF-β3」と一緒に刺激することで、軟骨基質の合成を著明に促進することが明らかとなりました。
 そこで、膝関節の軟骨全層を欠損したマウスを作製し、FAとTGF-β3を用いて軟骨細胞へ分化誘導したhBMSCsを関節軟骨欠損部に移植。その結果、欠損部に2型コラーゲン陽性の軟骨組織が再生されていることが確認されました。
 この成果について研究グループは、変形性関節症の自家細胞移植治療の治療成績の向上、適応症の拡大に繋がるとしています。さらに、細胞を用いない軟骨再生治療にも応用可能と考えられるとして、今後の研究進展に期待を寄せています。(QLife痛み編集部)

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

「痛み」の注目記事