生活スタイルに工夫し、活動範囲を保ちましょう

[変形性膝関節症と生活] 2015年1月20日 [火]

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足に合わない靴は症状を悪化させます

 この病気をもっていない人にとっても、足に合った靴選びは、健康上大切な要素です。足に合わない靴は、膝や股関節に負担を与えるのはもちろん、外反母趾(がいはんぼし)、腰痛、肩こりなどを引きおこすことがあります。まして、膝に痛みや変形がある状態で合わない靴を履いていては、病状を悪化させるだけです。ウオーキングを始めるにしても、合わない靴を履いたままでは、効果を期待するどころか、歩けば歩くだけ不具合を増幅させてしまう結果になりかねません。靴は慎重に選びましょう。

 靴選びのポイントとして、次のようなものがあげられます。

(1)ヒールは低く(3cm以下くらい)、広めで安定していること
(2)かかと部分は足のかかと全体を包み込み、しっかりとサポートできる硬さがあること
(3)靴の幅は足の幅(足囲と呼ばれる部分)とぴったり合っていること
(4)靴の上側は足の甲の部分まで覆うデザインであること(とくに、ひもでしっかり押さえるタイプがよい)
(5)つま先は、かかと部分をぴったりくっつけた状態で足の指が自由に動く程度のゆとりがあること
(6)靴底は足の指のつけ根部分で曲げることができ、適度な硬さ・厚さがあり、弾力性に富んでいること

などです。

 なかでも、本来膝にはない左右の動きは膝に非常にストレスを与えます。そこで、脚の左右の動きをコントロールできる靴であること、つまり(2)と(3)の条件を備えた靴で着地の際、足をしっかりとサポートすることが重要です。

 また、かかと部分や靴底がそれなりの機能を果たすためには、補強のための素材や構造が必要です。単に軽いというだけでは脚への負担が小さくなるとはいえません。ある程度の重みがあっても、大きさが合っていて靴と足との一体感があれば、重みは気にならなくなります。女性はとくにデザイン重視で靴を選びがちですが、自分の足の形、大きさを測定したうえで靴を探す、あるいはオーダーすることが大切です。

 注意しているつもりの人でも、実は足のどの部分のサイズで靴を選べばよいかを勘違いしていたり、靴選びのポイントを誤解していたりする場合が少なくありません。シューフィッターという靴選びの専門家や、O脚の補正などのために足底板(そくていばん)をデザイン・作成する義肢装具士などに、一度は相談してみることをお勧めします。

靴選びのポイント

靴選びのポイント

杖(つえ)で膝への負担を軽減すれば、活動範囲を保てます

 膝に痛みや変形をもっていても、杖を使って歩くことに抵抗を感じる人は少なくありません。杖の使用を勧めても「お年寄りが使うもの」「杖に頼るほど不自由はしていない」とかたくなに拒む人もいます。患者さん自身になんらかのこだわりがあるのかもしれませんが、実は、杖を正しく使うことで歩行はずいぶん楽になります。症状がつらくて歩くのがおっくうになっているなら、ぜひ杖を試してみてください。

 最近では、従来の無地や木目だけではなく、花柄や鮮やかな色・模様などファッション性に富んだもの、長さの調節が可能だったり折りたたみ式だったりと機能的にもすぐれたものがそろってきています。

 靴選び同様、杖の選び方にもいくつかのポイントがあります。握り(持ち手)、長さ、先端の3点に注意しましょう。

(1)握りは、持ちやすい形で、まっすぐに前の方向を向いているもの
(2)長さの目安は、身長の半分+3cm
(3)先端は、すべりやすいものは危険なので、ゴムキャップがつき安定性が高いもの

がよいでしょう。

杖選びのポイント

杖選びのポイント



 正しい使い方を知ることも大切です。まず、杖は、痛みや変形のある膝とは逆側の手に持ちます。左の膝が痛むのであれば右手、右の膝が痛むのであれば左手になります。あとは自然に歩くときと同様に、右手を出すときに左脚、左手を出すときに右脚を出して歩きます。つまり、杖を持った手と、それとは逆側の痛む脚が一緒に出るのが正しい方法です。杖を持った手と同じ側の脚が出るのは間違った歩き方です。

 歩幅はいつもより小さめにしたほうが安定して、歩きやすいでしょう。使い慣れるまでは、とくに転倒に気をつけましょう。雨の日はすべりやすくなるので細心の注意を払い、屋内に入るときはぬれた先端をふき取る習慣をつけてください。

 杖の使用や選び方に迷ったら、一度理学療法士に相談してみると、適切なアドバイスが受けられます。

杖を使った歩き方

杖を使った歩き方

膝の負担が少ない生活スタイルを取り入れましょう

 とくに症状が強い時期以外は、できるだけこれまでどおりの生活を続けましょうと、何度も述べてきました。ちょっとした工夫で、膝への負担を減らすことができれば、動きが楽になり、生活や活動の幅を狭めることなく過ごせるようになるでしょう。

 たとえば、膝に負担のかかる動作として代表的なものは、床に正座したり、正座から立ち上がったりする動作です。正座をしないまでも、床に直接座るのは、立った姿勢との高低差が大きくなるので、いすに腰かけるよりも膝に負担がかかります。そこで、食事やくつろぐときには、いすが勧められます。寝る際は、ふとんは起き上がりのときの負担だけでなく、上げ下ろしの負担も大きいので、ベッドのほうが数段楽になると思います。便座も同様です。しゃがみこむ和式より、いすのように腰かけられる洋式のほうが膝への負担を軽減できます。

 ほかには、階段の昇り降りに際しては手すりを使い、昇るときは痛まないほうの脚から、降りるときは痛むほうの脚から一歩目を出すようにします。

階段の昇り降りは膝に負担がかからないようにしましょう

階段の昇り降りは膝に負担がかからないようにしましょう



 歩くときの姿勢や立つときの姿勢も大切です。背筋を伸ばし、あごを引くなどして、よい姿勢を心がけるだけで膝への負担は軽くなります。重い荷物をどちらか一方の手で運ぶといった、かたよった動作も避けるようにします。買い物で荷物が多くなるようなときは、リュックサックやカートつきのバッグを利用するなどしましょう。

正しい立ち方を覚えましょう

正しい立ち方を覚えましょう



 さらに、急に動く、止まる、ひねる、走る、跳ぶといった動作や、転倒の危険性のあるスポーツなどは禁物です。

膝への負担の少ない生活スタイル

膝への負担の少ない生活スタイル

(正しい治療がわかる本 変形性膝関節症 平成21年2月28日初版発行)

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