関節リウマチ治療には、患者さんの積極的な参加が重要 前編

[診断と治療法の決定] 2015年5月28日 [木]

facebook
twitter
google
B

関節リウマチ ― 4つの治療法

 関節リウマチの患者さんの日常は、多くの場合、「今日はつらくて動けない」と感じるほど痛みやこわばりが激しいときと、「ちょっとは、ましかな」と感じるゆるやかなときの繰り返しです。病気の勢いには波があり、気候の変化やストレスなどによっても、勢いは変化します。関節リウマチの治療では、“4つの治療法”で病気の勢いを抑え、“寛解”を目指します。

 食生活、運動、休養、ストレスコントロールなど基本的な生活を見直して病気の活動を抑える「基礎療法」が土台となり、関節の動きをスムーズに保つための「リハビリテーション」、免疫システムに働きかける「薬物療法」を支えます。さらにこれらの治療を行っても、関節破壊が進行し日常生活に支障をきたす場合は、「手術療法」の出番です。筋力の低下した関節を支えたり、変形を予防するための装具を使う「装具療法」や、意欲的に治療にとり組む気持ちを引き出す「心理療法」なども有効です。

 治療の中心となるのは薬物療法ですが、効果を最大限に引き出すためには、処方された薬を漫然と服用するだけでなく、患者さん自身が病気について知り、4つの治療法いずれにおいても主体的に治療に取り組むことが重要です。病気に好き勝手をさせず、病気をコントロールすること ― 。これが関節リウマチ治療の極意です。

4つの治療法で、関節リウマチを抑え込む
4つの治療法で、関節リウマチを抑え込む

生活習慣で病気をコントロール ― 基礎療法

 関節リウマチのコントロールには、生活習慣が大切です。次のポイントを見直してみましょう。

【炎症が激しいときは安静に】
安静のポイントは「全身」「関節」「精神」に対する安静の3つです。「全身」の安静のためには、夜更かしをせず、睡眠を十分にとり、疲れやだるさを感じる前に無理をせずに休みます。また、「関節」の安静には負担がかからないように、正座をしない、重い物を持たない、立ち仕事を避けるなど動作に注意しましょう。家の中に手すりをつけるのも効果的です。「精神」の安静には、趣味を楽しんだり、映画やテレビを観て笑ったり、気持ちを明るく保つようにします。

【冷え対策】
関節が冷えないように十分に保温します。高温多湿の梅雨や真夏には冷房にも注意し、サポーターを使ったり、1枚羽織るものを準備するようにしましょう。

【食事】
食事制限はありません。とくに貧血予防のための鉄分、骨の成分となるカルシウムとビタミンDが不足しないように気をつけながらバランスよく栄養を摂ります。体重が重たすぎると、膝や足首などに負担がかかりますから食べ過ぎには注意しましょう。喫煙は関節リウマチでダメージを受けがちな肺や消化器に悪影響を及ぼすため、禁煙します。

【運動】
筋力を落とさないためには、関節へ負担の少ない適度な運動が必要。痛みがひどくないときは、散歩や買い物などに加えてプールでの水中歩行など軽い運動を続けましょう。

【教育入院】
医療機関によっては、「教育入院」というプログラムがあり、1週間程度入院しながら病気について学び、食事量や食事内容、リハビリの行い方などを実地に学ぶこともできます。

生活習慣の改善から病気をコントロールする
生活習慣の改善から病気をコントロールする

関節を保護しながら、可動域を保つ ― リハビリテーション

 痛い関節を無理に動かしてはいけませんが、動かすことができる関節を使わないでいると、徐々に硬く、動かなくなる「拘縮(こうしゅく)」が進んでしまいます。こうなると、その周囲の筋肉も衰えて関節を動かす力がなくなり、しだいにからだの運動機能を失い、寝たきりになってしまうこともあります。

 そうした「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」に陥らないためにも、関節リウマチの治療では、関節の柔軟性と筋力を維持するリハビリテーション(リハビリ)が大きな役割を占めます。リハビリは日常生活を見直す基礎療法と並んで、患者さんの自主性、主体性がとても大切な治療法です。

 リハビリには、大きく分けて、温熱や超音波、光線などのエネルギーで関節を温めたり、筋肉を刺激する「理学療法」と、関節を曲げ伸ばして柔軟性を保ったり、筋肉を動かして筋力を維持・増強する「運動療法」(リウマチ体操等)、生活の中の動作を見直し自立を促す「作業療法」等があります。「装具療法」もリハビリの一環です。

 患者さんの関節の状態はそれぞれに異なるため、リハビリにあたっては、まず医師の診断を経て、理学療法士や作業療法士といった専門家の指導の下で正しい方法や頻度を確認します。自己流で必要以上に動かしたり、あるいは体調の悪い時期だからと、勝手に判断してリハビリを休んだりすると、逆効果になることもあるので注意しましょう。

 リハビリの成果は、日常生活動作(ADL = Activities of Daily Living)テストなどで評価します。

リハビリテーションのいろいろ
リハビリテーションのいろいろ

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

「痛み」の注目記事