特殊な関節リウマチ

[関節リウマチを知る] 2015年4月07日 [火]

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関節リウマチに“血管炎”が加わる「悪性関節リウマチ」

 関節リウマチの症状に加えて、血管に炎症が広がる“血管炎”を伴う、「悪性関節リウマチ」という病気があります。これは、関節リウマチの関節破壊が進んで重症に至るものと少し異なり、関節リウマチ患者さんのおよそ0.6%に発症する病気です。原因は、関節リウマチと同様に不明です。

 症状としては、すでに罹(かか)っている関節リウマチの症状が急激に進み、多くの関節痛、関節破壊が進むことに加え、全身性の血管炎が自己免疫疾患としてみられます。すなわち、38度以上の発熱、皮下の毛細血管が破壊されておこる紫斑(しはん:紫色のあざ)、筋肉痛や筋力の低下、間質性肺炎、消化管からの出血などです。また、末梢の動脈で炎症がおこると、皮膚がただれて潰瘍(かいよう)になったり、壊死(えし)をおこしたりといった症状もでます。

 治療は、これまでの関節リウマチの治療を続けながら、悪性関節リウマチにも対処します。具体的には、ステロイド薬や免疫抑制剤を投与します。これは、早い段階で病気を抑えるのが目的です。また、血液の血漿(けっしょう)成分だけを交換する「血漿交換療法」が行われることもあります。治療法は、患者さんの状態を診て最適な方法が選ばれますが、基本的にすべて入院加療で始まります。

 悪性関節リウマチは難病に指定されていますので、これらの治療はすべて公費によって支給されます。いずれにしても、この病気も早期発見、早期治療が重要なポイントです。

症状が急激に進む悪性関節リウマチ
症状が急激に進む悪性関節リウマチ

子どものリウマチ――若年性(じゃくねんせい)特発性関節炎とは

 16歳未満の子どもに発症する原因不明の慢性関節炎を「若年性特発性関節炎」と呼びます。以前は、若年性関節リウマチと呼ばれていた病気です。病気のタイプは、関節炎に加えて発熱を繰り返し“リウマトイド疹(しん)”という発疹(ほっしん)が現れる「全身型」と、関節症状が主な「関節型」とがあります。全身型は3歳、8歳に発症のピークがあり、関節型は10歳以上の女児に多い傾向があります。関節型は、症状がでる関節の数が4つ以下の「少関節型」と、5つ以上の関節が左右同じ部位で痛みや腫れを呈する「多関節型」に分けられます。関節型の症状は、膝や足など比較的大きな関節から始まります。タイプによらず共通するのは関節の痛みや赤み、腫れ、熱のある感じ、こわばりなどが慢性的に続くことです。大人の関節リウマチと同じく適切な治療を受けないと、関節破壊が進行してしまうので注意しましょう。

 有病率は10万人に10人、年間の発症率も10万人に1人といった割合の稀な病気です。若年性特発性関節炎が疑われる場合は、リウマチ専門医を受診すること、とくに子どもは発育途上にありますから、かかりつけ医とも綿密な連携をとり、心身の成長への影響、学校生活との両立などさまざまな面を考慮し、家族、学校、友達などの理解とサポートを得ながら治療を進めることが重要です。家庭では、関節を守るために“しゃがまない”“正座をしない”“重い物を持たない”など、生活のしかたに注意しましょう。また、学校では病気について十分な理解が得られるように説明することが肝心です。

 具体的な治療は、関節リウマチと同じく薬物療法が中心になります。また、関節の障害を予防する意味でも積極的なリハビリが求められます。

タイプは全身型と関節型に分けられる
タイプは全身型と関節型に分けられる

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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