T2T― 目標達成に向けた関節リウマチ治療

[診断と治療法の決定] 2015年6月09日 [火]

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自発的に取り組むと、治療効果も高い

 関節リウマチの治療の現場では、2000年代終わり頃から「T2T(Treat to Target = 目標に向けた治療)の実践」ということが盛んにいわれています。これは日常の診療において、治療目標(DAS28の数値など)を患者さんと医師が共有し、その目標を達成すべく、両者が戦略的にとり組むことを意味します。高血圧症や糖尿病などでは、早くからT2Tをとり入れ、「生活習慣の見直し」や「薬の選択」を行ってきました。すると、明確な目標がないまま漫然と治療を続けるよりも合併症が減ったり、病気の進行が抑えられたり、QOL(生活の質)が改善することがわかってきました。

 リウマチにおけるT2Tの基本的な考え方や推奨(すいしょう)される項目は、リウマチの専門医や患者さんの代表らが集まった世界的な会議の議論を経て、定められました。そのなかには「治療は、患者さんとリウマチ医の合意に基づいて行われる」、また、患者さんは「リウマチ医の指導のもと、T2Tについて適切な説明を受ける」などの項目があります。T2Tを採用している医療機関では、どの薬を選ぶか、手術を選択するか否かなど、患者さんと医師が目標を見定め話し合って決定します。そのためには、患者さん側も病気について学ぶことに加えて、治療における不安や生活上の不便を医師と共有する姿勢が大切。そのうえで治療にとり組むと、「薬が合わない」「治療方針が腑(ふ)に落ちない」といった理由で治療から脱落することがなく、結局は早期に寛解状態に到達し、維持することができるのです。

目標に向かって、患者さんと医師がともにとり組む
目標に向かって、患者さんと医師がともにとり組む

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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