関節リウマチの人工関節置換術

[手術療法] 2015年8月18日 [火]

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人工関節置換術(1) – 膝関節で多く行われる

 人工関節置換術は、痛みをとり除き、“関節の曲げ伸ばし機能”、“支持機能”を回復する手術です。ここでは、手術例の多い膝関節の手術について紹介します。

 関節の破壊が進むと膝の関節が不安定になり、動かせる範囲が少なくなります。とくに膝関節で骨が破壊され、関節をつなぐ靭帯(じんたい)のバランスが崩れ、周囲の筋肉がうまく動かず固まってしまうような場合に手術適応となります。

 膝関節の手術では、近年、患者さんに負担の少ない“最小侵襲(しんしゅう)手術”が発達してきました。これは、切開する部分をなるべく小さくする手術方法で、従来は15~20cm切開していたのが、8~12cmほどで済むようになりました。切開が小さければそれだけ手術中に関節内に細菌等が入る可能性が低く、当然、 傷跡も小さく治りが早くなります。

 関節リウマチの場合、関節破壊は対になる関節で同様に進むことが多いため、両膝同時の手術が行われることもあります。片方ずつ手術すると、まだ手術していないほうと比べて脚の長さが違ったり、片側に痛みが残ってリハビリがうまく進まないことがあるためです。

 手術後は、個々の患者さんに合ったリハビリテーション・プログラムを組み、順次進めることで、手術の効果を上げます。一般的に、手術後2日目ぐらいからベッドの上で脚を上げるなどのリハビリを始め、また1週間から10日ほどで本格的な歩行訓練に移行します。入院期間も3週間から1カ月程度で、早期の社会復帰がのぞめます。

膝の人工関節置換術では、両方を同時に行うこともある
膝の人工関節置換術では、両方を同時に行うこともある

人工関節置換術(2) – 股関節・小さな関節にも対応

 関節リウマチの治療において、膝関節に次いで人工関節置換術が行われる頻度が高いのは、股関節です。股関節の特徴として、膝や肘、足首等の関節と異なり、からだの奥にあるため、触診によって滑膜の腫れ(滑膜の炎症)を確かめることが困難なことが挙げられます。このため、関節破壊の進行に気づくのが遅れてしまう可能性があります。人工股関節置換術の手術をするには、タイミングが重要。大腿骨の骨頭が、骨盤のくぼみのほうにめり込んでしまうと、人工関節置換術の際に、骨移植など、大掛かりな手術が必要となります。関節リウマチと診断されて足の付け根に痛みを感じたら、レントゲンやMRIなどの画像診断で関節破壊の程度を把握し、今後の進行についての見通しや定期的なチェックが必要かどうかなど、主治医と治療方針を確認しましょう。手術が必要となった場合の入院期間は、2週間から1カ月程度です。

 最近では、膝や股関節だけでなく、さまざまな人工関節が開発され、肩や肘、足首の関節(足関節)、また、小さな手指の関節も人工関節に置換が可能になっています。

 肩関節の置換手術は、腕の動きはもとより、痛みによって睡眠が障害されるなど、日常生活が大きく損なわれるときに検討します。肘の曲げ伸ばしができなくなると、食事や洗面、洗髪などに支障をきたしますが、人工ひじ関節置換手術によって動きをとり戻すことが可能です。手指の人工関節には、金属製、シリコン製などがあり、関節の状態に合わせて使われます。指は非常に複雑な器官であるため、100%の回復は困難ですが、変形を修復し、ある程度の機能をとり戻すことができます。

最新技術で開発されるいろいろな人工関節
最新技術で開発されるいろいろな人工関節

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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