関節リウマチリハビリテーションの実際

[関節リウマチと生活] 2015年9月29日 [火]

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目的に合わせて“リハビリプログラム”を設定する

 関節リウマチの患者さんは、治療を通して「3つの寛解」を目指していきます。治療の最初の段階で重要なことは、「痛みをとり除くこと」でしょう。これらは、進歩した薬物療法や関節機能の再建手術等により達成されることが多いのですが、実は、日々の地道なリハビリテーション(以下、リハビリ)も痛みの除去に一役買っています。さらに、「構造的寛解→骨や関節破壊の進行を抑えること」、「機能的寛解→生活機能を改善すること」の達成には、リハビリが欠かせません。からだの痛みやこわばりをとり去り、日常生活で制限される動きを徐々に可能にし、そして仕事や趣味の世界へと社会復帰を果たす、このすべての段階においてリハビリは重要です。

 リハビリには、運動や温熱でからだに刺激を与える「理学療法」(「物理療法」と「運動療法」がある)、生活動作をスムーズにする「作業療法」、そしてサポーターなど装具で関節を保護したり支えたりする「装具療法」があります。リハビリ目的に合わせてこれらの療法を組み合わせて行います。

 リハビリのプログラムは、医療スタッフが患者さんの状態を多角的にとらえて作成します。具体的には、炎症の度合い、関節機能、合併症の有無、日常生活動作はどの程度制限されているか、どんなことに生きがいや楽しみをもっているか、家族のサポートはあるかどうか等々です。リハビリの成否には、患者さん本人のやる気と意志も、とても大切です。

病気の進行度や患者さんの状態でリハビリ内容は異なる
病気の進行度や患者さんの状態でリハビリ内容は異なる

理学療法には“痛みをとる物理療法”と“機能を維持する運動療法”がある

 理学療法には、患部に熱や電気、超音波など物理的な刺激を与えて痛みや腫れを緩和する「物理療法」と、他の人にからだを動かしてもらったり、自分で動かしてからだの機能を維持、向上させる「運動療法」があります。

 関節リウマチに対して行われる物理療法で多いのは、関節を温める“温熱療法”です。炎症が激しく関節が熱をもっているような場合は、冷やしたほうが楽になることもありますが、温めるか冷やすかは、医師や理学療法士の指示に従いましょう。リハビリ医療では、赤外線装置などの機器によって患部を温めたり、ホットパック(保温性のある袋を温め、タオルなどに包んで患部に当てる)や、パラフィン浴(ロウの一種を溶かしてその中に手指などを入れて温める)などの治療を受けることができます(医療機関によって機器やプログラムは異なる)。いずれも、関節の血流をよくしたり、筋肉の緊張をほぐして可動域を広げる効果があります。温熱療法に続けて運動療法を行うと、より柔軟性が上がり効果的です。自宅で行う足湯や入浴も温熱療法の一種と考えられます。

 運動療法には、理学療法士にからだを動かしてもらう“他動運動”もありますが、初期の患者さんでもほとんどの場合、自分で行う“自動運動”が可能です。リハビリを行う場合は専門家からきちんと指導を受けると、正しい姿勢や運動の強さ、負荷のかけ方などを確認することができます。

 近くに通えるリハビリテーションの医療機関がない場合は、どのようなリハビリを行ったらよいかを、まずは、主治医に相談しましょう。

痛みを和らげ機能を維持する
痛みを和らげ機能を維持する

関節の機能を維持向上させる「リウマチ体操」

 運動療法の中心となるのは、自分で行うリウマチ体操です。体操には、こわばりがちな関節の柔軟性を高め可動域を広げる運動と、関節まわりの腱(けん)や靭帯(じんたい)を鍛える運動、さらには、関節は動かさずに筋肉の衰えを防ぐ運動などがあります。“リウマチ体操”と名づけられた体操はいくつかありますが、そのすべてのステップを誰もが行わなければならないわけではありません。どの運動をどれぐらいの強さで、何回行ったらよいかは、それぞれの患者さんの関節の状態によって異なります。とくに頸椎(けいつい)の関節に病変や症状がでている人は、首の曲げ伸ばしなどの運動を避けたほうがよい場合が多いです。医師や理学療法士の指導を受け、自分にとって最適な運動療法を行いましょう。

 リウマチ体操には、一般的に2つの目的があります。1つは関節および関節まわりの腱や靭帯、そして周辺の筋肉を動かして、関節可動域を維持すること。2つ目は筋肉の拘縮(こうしゅく:使われずに衰えてしまうこと)を避けることです。ただし、関節の炎症が強いときに積極的に関節を動かそうとすると、かえって痛みが増したり、変形を進行させる可能性があります。このようなときは、主に関節を保護しながら関節を動かさずに筋肉を鍛える「等尺(とうしゃく)運動」を行います。炎症が収まっている時期のリハビリでも、筋力が低下した状態で関節を動かすと関節を痛めてしまうこともあるため、一連の体操のなかに必ず筋力を維持、向上させる動きを取とり入れます。等尺運動(下図)は、動かしている筋肉を意識しながら行うとより効果的です。体操を行うタイミングとしては、朝のこわばりがとれてきた時間帯がよいとされています。また、温熱療法で関節を温めたあとに行うのもお薦(すす)めです。

からだの筋肉の衰えを防ぐ「リウマチ体操」
からだの筋肉の衰えを防ぐ「リウマチ体操」
肩、肘、手首のリウマチ体操

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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