[選択肢が拡大する脳卒中予防の現在] 2014/06/23[月]

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 がん、肺炎、心疾患とならぶ、日本人の4大死因の1つである脳卒中。心房細動が原因となる脳梗塞は重症となることが多く、そのリスクのある非弁膜症性心房細動患者に対して、抗凝固療法が推奨されています。しかしながら、「健康日本21推進フォーラム」の調査によると、ワルファリンを処方された患者の4.3%、実に3万3000人の患者が1年以内に服薬を中止してしまっている現状があります。抗凝固療法を正しく行い、脳梗塞を予防するためには、主治医だけでなく、受診する全ての医療機関の医師や薬剤師との密接なコミュニケーションが重要です。
 今回、QLifeでは公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下武志先生監修のもと、患者とともにチームとして抗凝固療法に携わる一員である薬剤師を対象にリサーチを実施。
 医師や患者本人対象の調査では表に出なかった、患者の実態を調べました。その結果をご紹介します。

薬剤師によるコミュニケーションが、重大な事態を防ぐためのセーフティネットに

今回の調査から、約3割の薬剤師が患者の「ヒヤリハット事例」を見聞きするなど、抗凝固療法を行う患者にとって、薬剤師によるコミュニケーションが、重大な事態を防ぐためのセーフティネットとなっていることが分かりました。

患者さん自身が体験した「ヒヤリ」「ハット」事例を患者さんから見聞きしたことがあるか

「薬剤師が伝えたい」情報と「患者が知りたい」情報に若干のギャップ

薬剤師と患者のコミュニケーションについては、双方ともに「抗凝固療法下の生活上の注意点(飲み合わせ、食べ合わせ、他科受診時の注意点)」「抗凝固療法の副作用」が多く挙がっており、患者からの質問・相談も、前者では納豆や青汁などのビタミンKを多く含む食物、後者では出血時や他科受診に関するものが多かったが、新規経口抗凝固薬を服薬している患者からも「納豆は食べて大丈夫か」などの質問が挙がるなど、「新旧の抗凝固薬の生活上の注意点などを知らない(覚えていない)ケースも多く見られました。また、「新旧の抗凝固薬のメリット・デメリット」については、患者と薬剤師の間でコミュニケーションギャップが見られました。

抗凝固療法中の心房細動患者に対して薬の必要最低限の情報のほかにコミュニケーションを取っているか/この1年の間に抗凝固薬、抗凝固療法について患者から相談・質問を受けたことはあるか
コミュニケーションの内容(複数回答)

医師・薬剤師・患者間のコミュニケーションをより活発に進める必要がある

今回の結果について、調査の監修を行った公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下武志先生は「予想以上に、抗凝固薬の服用について患者・薬剤師間で情報のやり取りがあり、それでもなお十分な情報共有に至っていないことがわかりました。生活上の注意、抗凝固薬の副作用については、情報量が多いため、おそらく一度の説明では患者に納得感や満足感が得られないことも多いだろうと推測します。新旧抗凝固薬のメリット・デメリットについては医師サイドから情報提供されるべきでしょう。また、薬剤師から見て医師側へもっと患者教育をしてほしいという希望も見られました。現在、抗凝固薬については情報が急拡大しており、医師・薬剤師・患者間のコミュニケーションをより活発に進める必要があることを教えた結果であるように感じます」とコメントしています。

山下武志(やました・たけし)先生 公益財団法人 心臓血管研究所 所長

山下武志先生

昭和61年東京大学卒業。専門分野は不整脈、心臓電気生理学。日本循環器学会(循環器専門医、関東甲信越地方会評議員)、日本心臓病学会(特別正会員、評議員、臨床試験あり方検討委員会委員)、日本内科学会(認定内科医、指導医)、日本心電学会(理事)、日本不整脈学会(理事)、日本不整脈学会・日本心電学会認定(不整脈専門医、不整脈専門医認定委員会委員長)
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