[中高年男性の排尿障害] 2013/02/15[金]

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 最近、中高年男性を中心に、排尿状態に悩みを抱えている方が増えています。「夜、寝ている間に何回もトイレに行く」「長時間の会議中に何度もトイレに行きたくなってしまう」……そんなお悩みがQLife会員からも寄せられています。QOL(生活の質)が著しく低下する排尿障害ですが、「たかが“おしっこ”のことで…」と軽く考えるのは大間違い。その先に重大な病気が潜んでいる可能性もあるのです。そこで今回、QLifeでは、40代以上の中高年男性を対象に「排尿に関する悩み」の調査を実施。4123人から回答を得ました。その概要と気をつけるべき点をご紹介します。

中高年男性の多くが排尿状態の変化を気にかけている

 毎日必ず複数回訪れるトイレ。特に男性の場合は、排尿状態の変化を健康や老化のバロメーターとして考える方も多いようです。実際、中高年男性の半数以上が「排尿状態を気にして」います。さらに、中高年男性の4人に3人、働き盛りの40代に限定しても約60%が、「年齢とともに排尿状態が変化している」と回答しています。

そういったなか、排尿状態の変化に悩む方からは、

  • 排尿時間が長いので、混んでいる公衆トイレを利用した場合、後に人が続くのが気になる。
  • 尿の切れが悪くパンツを濡らしてしまう。
  • 我慢してトイレにいっても、以前のような量は出ないため、トイレにいくのが頻繁になってしまう。
  • ついさっきしたばかりでも尿意をもよおす事も少なくないので、排尿しても安心できない。

といった、生活上での悩みのほか、

  • 夜間頻尿で2~3回起きるので朝の寝覚めが悪く日中幾度となく眠たくなる。
  • 明け方起きて寝不足になりがち。

などの夜間頻尿の悩み。さらに働き盛りの世代からは、

  • 通勤の電車や車での外出に支障が出る。
  • 長時間の会議に困る。1時間30分が限度。
  • 外出時にトイレの場所を先ず確認、海外出張の際とても不便。

などといった、ビジネス面への影響を懸念する声も聞かれます。

「歳のせい」とあきらめずに、一度受診してみましょう!

 このように多くの中高年男性が悩みをかかえている排尿状態の変化ですが、この1年間の間で排尿状態の治療のために、病院・クリニックを受診した方は1割以下で、多くの方が排尿状態を「病院に行くほど深刻ではない」「歳をとれば当然」と考えています。これに対し、多くの排尿障害患者を診察してきた、国立長寿医療研究センター 吉田正貴先生は「中高年男性の排尿障害の原因として、代表的なものとして前立腺肥大症があります。膀胱の出口にある前立腺が肥大して、尿道を圧迫したり緊張を高めたりして、排尿障害を起こす病気で、『尿の勢いが弱い』、『トイレが近い』などの症状が現れます。また、排尿障害の原因は前立腺肥大症以外にも様々なものがあり、中には前立腺がんなどの悪性の病気が潜んでいる可能性もあります。前立腺肥大症は良性疾患ですが、日常生活で困っていることがあれば、一度受診することをおすすめします」と語ります。

前立腺肥大症の症状

尿が出にくくなる[排尿症状] 排尿中、尿が途切れる(尿線途絶)
尿の勢いが弱い(尿勢低下)
排尿にお腹の力を要する(腹圧排尿)
尿をためられなくなる[蓄尿症状] 昼間トイレが近い(昼間頻尿)
尿をガマンできない(尿意切迫感)
夜中トイレが近い(夜間頻尿)
尿をし終わった後にみられる症状[排尿後症状] 排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感)

排尿状態は健康のバロメーター。自分の排尿状態をチェックしてみよう

 毎日目にする排尿の状態ですが、その変化を見ただけで判断するのは難しいもの。ご自身の排尿状態をチェックする方法として、国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアがあります。国際前立腺症状スコア(IPSS)は、排尿障害の症状に関する7項目の質問からなり、それぞれ0~5点の評価を行い、各項目点数を合計(総計35点)し、軽症(0~7点)、中等症(8~19点)、重症(20~35点)に分類。QOLスコアは現在の排尿状態に対する患者自身の満足度を表す指標で、0点(とても満足)から6点(とてもいやだ)までの7段階で評価し、軽症(0~1点)、中等症(2~4点)、重症(5~6点)に区分されています。
 「気になる症状がある、気になる症状のために日常生活で我慢していることがあるなど思い当たる方は、一度チェックしてみましょう」(吉田先生)

国際前立腺症状スコア(IPSS)

QOLスコア

生活習慣病を持っている人の約半数は排尿状態に不満を感じている

 排尿状態の満足度を示すQOLスコアを年齢別ならびに生活習慣病の有無で調べたところ、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を持っている人では全体の約半数、年齢別では70代以上の6割以上が排尿状態について不満に感じると回答していました。一方、生活習慣病を持っていない人は、全体の3分の1、年齢別では70代以上の約半数が不満に感じると回答しています。このように生活習慣病を持っている人は持っていない人に比べて、排尿状態に対する満足度が低いことがわかります。
 「生活習慣病と排尿障害は患者さんの年齢層が重なることもあり、高血圧や糖尿病などを治療している人の中で排尿状態に不満を感じている人も多くいると思います。もし、他の疾患のために通院している方で排尿に関する悩みがあるようでしたら、我慢しないで、主治医の先生か泌尿器専門医に相談されることをおすすめします」(吉田先生)

排尿状態で悩んでいる人はまずは受診を!

 前立腺肥大症による排尿障害は、お薬による治療から開始されることがほとんどです。最近では副作用の少ないお薬も発売されるなど、治療薬の選択肢が広がっています。尿の勢いや夜間頻尿などでお困りの方は、まずは病院を受診してみてはいかがでしょうか。

独立行政法人 国立長寿医療研究センター 手術・集中治療部部長  吉田正貴先生

1987年 熊本大学大学院医学研究科修了(医学博士)。同年より熊本大学医学部付属病院勤務。熊本大学医学部泌尿器科助教授、熊本大学大学院医学薬学研究部 泌尿器病態学分野 准教授の後、2009年独立行政法人 労働者健康福祉機構 熊本労災病院 医療情報部 部長。
2012年4月より現職。

日本泌尿器科学会(指導医)、日本排尿機能学会(理事)、日本腎臓学会(指導医)、日本老年泌尿器科学会(評議員)、日本性機能学会(評議員)、日本泌尿器内視鏡学会(評議員)など。

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