[経腸栄養剤] 2015/07/24[金]

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 がん治療をはじめ、さまざまな場面で処方される経腸栄養剤。普段の食事に付け加えたり、食事の合間に飲んだりすることで、食事だけでは十分に摂取できない栄養を補給します。
 「病気や手術後はどうしても食欲が減退します。でも、食事をとらないとやがて体力は低下し、低栄養状態になってしまいます。また、そうなった場合、日々の食事も別メニューを用意するなど、周囲の負担も大きくなります。そんな状態の患者さんに、以前のような“食べヂカラ”をつけてもらうのが経腸栄養剤の目的です」(一般社団法人日本在宅薬学会 理事長、一般社団法人薬剤師あゆみの会 理事長の医師・狭間研至先生)

 経腸栄養剤の中には、処方箋が必要な医薬品でありながら、医師や薬剤師と相談のもと、複数の味やフレーバーの中から、味が選べるものがあることをご存じでしょうか?QLifeは、経腸栄養剤の処方経験のある薬剤師250名を対象に、経腸栄養剤についての調査を行いました。その結果をご紹介します。

半数以上が2種類の味以上の味を提供している

 薬剤師に、1回の処方で出す味の種類を聞いたところ、56.8%が2種類以上の味を提供していました。

経腸栄養剤の処方1回あたり何種類の味を出すことが多いですか?

やっぱり気になるのは経腸栄養剤の「味」

 経腸栄養剤に関して、薬剤師の3人に2人は、患者さんや患者さんを介護している方から相談を受けたことが「ある」と回答しました。その内容については、「今の味が嫌で、別の味に変更したい」71.5%、「今の味は良いが、別の味も追加したい」58.2%と、味についての質問が上位を占めています。

経腸栄養剤の味の種類の情報提供について
患者さん・介護者に質問や相談された内容について

冷やしたり、ゼリーにしたり・・・飲み方に工夫も

 飲み方に工夫ができるのも経腸栄養剤ならでは。お薬と異なり、とろみをつけたり、ゼリー状にしたりしてもそれほど成分が変化しません。飲み方の工夫について、薬剤師の皆さんに聞きました。

温度の工夫

  • 甘いようであれば、冷やして飲むよう指導しています
  • あまり冷やさないで、ゆっくり飲む
  • 冷やして飲むように指導している
  • 冷やした方が服用しやすい
  • 冷やして服用すると味の濃さを感じない
  • 冷やして飲む方がおいしい
  • 氷のブロックにしてデザート感覚でもOK

味の工夫

  • 味に飽きてしまったら季節によって冷やしたり温めて飲むことを進めたり、バニラ味に好きな風味を足して飲むように話している
  • 味に飽きたときにはほかの味を紹介する
  • 2種類混ぜたり薄めたりとろみをつけたり料理に使ったり
  • 味が濃いと感じたら水で薄めて飲んでも良い
  • 一気に服用せず、ゆっくり流したり、薄めて流したり、ゼリー状にするなど方法を提案する
  • 味に飽きてきていないか?残薬確認。飲みにくくないか?とろみをつけるなどの工夫があるなどのお知らせ
  • 飽きないよう患者さんの好みを聞きつつできるだけ、味の種類を多くする
  • 経口で摂取する患者さんや介護者には、味だけでなく、ゼリーや寒天で固めることによる形を変えた服用方法があることなど、マンネリ化を防ぐ手立てがあることなどを指導している
  • 飲みにくい場合はゼリーにするなどアドバイスしている

服用タイミング・1回の服用量の工夫

  • 自宅で経口摂取する患者さんに対しては、記載の用法にこだわらずに、飲める時に飲める量をこまめに摂るよう助言することが多い
  • 一度に無理せず飲める量を少しずつ摂ること
  • 少しずつでも飲んでもらうようにする
  • 食後や服用時点は気にせず1日しっかり必要量を服用することが大切だということを伝える

 「経腸栄養剤にはさまざまな味があるものがあり、患者さん自身で味の種類や割合を選ぶことが可能です。また、お薬と異なり、とろみをつけたり、ゼリー状にしたりしてもそれほど成分が変化しません。「ほかにどんな味があるか」や「飲み方の工夫」について、薬剤師や医師に相談してみてはいかがでしょうか?みんなで食卓を囲み、食事を楽しむ。そのための“食べヂカラ”をつける源の1つが経腸栄養剤です。」(狭間先生)

狭間研至(はざま けんじ)先生

狭間研至(はざま けんじ)先生
1969年、大阪府出身。ファルメディコ株式会社 代表取締役社長。医師、医学博士。
平成7年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。平成12年大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わる。平成16年同修了後、現職。
現在は、医療法人思温会など在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人 薬剤師あゆみの会・一般社団法人 日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育に、近畿大学薬学部・兵庫医療大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。著書に「薬局が変われば地域医療が変わる」(じほう)、「薬剤師のためのバイタルサイン」(南山堂)ほか

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