[身近な病気を知ろう ~QLife調査~] 2015/01/19[月]

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 更年期障害は、肩こり、疲れやすい、ほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)、発汗、頭痛やイライラなど、実に多くの症状があり、その種類や程度も人それぞれです。こうした更年期障害の治療法のひとつにホルモン補充療法(HRT)があります。HRTは減少した女性ホルモン(エストロゲン)を補充する治療法で、飲み薬だけでなく、貼り薬や塗り薬などがあります。今回QLifeは、40代から50代の女性で、HRT経験者500人に対して、HRTに関する調査を行いました。
 治療の効果や満足度といった調査結果を紹介するとともに、今回の調査を監修した「さがらレディスクリニック」の院長・相良洋子先生に伺った、HRTの現状をお伝えします。

ホットフラッシュの症状が大きく改善したと実感

 HRTを始めて更年期の症状が改善したかを聞いたところ、7割以上の患者さんが、症状が「改善した」「やや改善した」と回答しました。さらに、実際に改善したと思う症状について質問すると、「急に顔がほてる」が最も多く49.0%、次いで「汗をかきやすい」「頭痛、めまい、吐き気がよくある」という結果になりました。
 「実際に患者さんを診ていても感じることですが、HRTは更年期障害の症状のなかでも、『急な顔のほてり』『汗をかく』といった、いわゆるホットフラッシュの症状改善に効果があります。とくに働く女性は、ホットフラッシュが仕事面に大きく影響するためか、HRTの効果を実感している方が多い印象を受けます」(相良先生)

半数以上が「HRTに満足」している

 HRTに対する満足度を聞いたところ、6割近くがHRTについて「満足」「やや満足」と回答しました。
 「症状の改善はもちろんですが、よく眠れる、肌の調子がいいなど全般的な体調も改善されるためか、当院では更年期障害の治療を終えた後もHRTを続けている方がいらっしゃいます。最初は副作用などが心配だからと、別の治療法で治療を始めても、HRTに切り替えて、症状が改善した患者さんもいらっしゃいます」(相良先生)
 HRT開始のタイミングについては、約半数が「ちょうど良い」と回答しました。次いで多かったのは、「もっと早く受けていればよかった」(22.2%)でした。
 「私が最初にHRTを処方した25年前と比較すると、最近は、患者さんも更年期障害についての知識をお持ちになっていることが多くなり、我慢せずに辛くなったら受診をするという方も増えてきています」(相良先生)

医師と患者の「何でも話せる環境づくり」が重要

 HRTを受けた感想や、体験エピソードなどについて尋ねたところ、医師とのコミュニケーションの取り方について多く意見が寄せられました。そのうちのいくつかを紹介します。

  • 医師が、治療のメリットデメリットをはっきり教えてくれた。
  • 医師とのコミュニケーションが大切だと思った。言いたいことや思っていることが十分に説明できなければ、途中で治療を止めてしまうと思う。
  • 話をじっくり聞いてくれる医師に出会えたことが良かったと思っている。
  • かなりの数の婦人科を受診しているが、HRTに理解を示さない医師が多く驚いた。

 患者さんとしては治療のメリットだけではなく、デメリットも気になるところです。そこで相良先生が、HRTによる乳がんのリスクについてどのように患者さんに説明しているのかを伺いました。
 「5年間以上HRTを続けた場合、1万人に対して8人増加とわずかではありますが、乳がんになるリスクが上昇したという海外の研究報告があります。そのため、当院では必ず乳がんのリスクについて説明し、理解していただいたうえでHRTを始めています。あくまでHRTは更年期障害の治療方法の1つです。患者さんには、“もし、乳がんになった時に、HRTをしていたことを後悔するような性格ならHRTを選択しない方がいいかもしれませんね”とお話しています。メリットとデメリットをきちんと理解してHRTを選択することが、治療の継続にもつながると思っています」(相良先生)

正しい知識を持って治療を継続すれば生活の質も改善する

 「『更年期障害は生命にかかわる病気ではないから』などと言われ、かえって症状が悪化してしまったり、いくつもの病院を転々とする患者さんもいらっしゃるのですが、最近は理解のある医師も増えてきています。更年期障害に詳しい医師をインターネットで検索することができますので、近くのクリニックや病院を探してみると良いと思います。(※関連サイトをご参照下さい)
 また、更年期に限らず、様々な年代で出てくる身体の不調を相談する場として、女性は婦人科のかかりつけ医を持っておくのがいいと思います。当院に30代の頃から通っていたある患者さんは、HRTについての話をしていたので、いざ更年期障害が起こったときにすんなりとHRTを選択することができました。このように相談できる場所を持っておくことで、辛い症状も軽いうちに改善することができます。
 医師とコミュニケーションを密にして、正しい知識を持っていれば不安に感じた時も相談しやすいと思います。辛い症状が現れたらひとりで悩まず、医療機関を受診してみてください」(相良先生)

相良洋子(さがら ようこ)先生

さがらレディスクリニック院長、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医
【経歴】
1981年東京大学医学部医学科卒 医学博士
長野赤十字病院、東京厚生年金病院、三楽病院、東京都老人医療センターなどに勤務。
【所属】
日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本女性心身医学会、日本女性医学学会、日本心身医学会

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