おいしいのヒミツ~その3~ 美味の調和
◇おいしい食生活とは何か?
結局、おいしいとは、まわりの環境まで含めたすべてのハーモニーからなるのですね。
先に「食は文化」についてとりあげましたが、文化は、心地よく感性を刺激し、私たちが幸せを感じる方向に向いているような気がします。幸せを求めるところに、おいしさの発展があるとしたら、おいしさとは五感がすべて満足した時に、その幸せを最も感じるものでしょう。食とはまさに文化、おいしさを舌と心で楽しむ“五感のフルコース”なのです。
料理人の辻 嘉一氏は、料理人心得帳の中で、「食は優れた肉体の源泉です。優れた文化が頭脳と肉体によって作られるのであれば、正しい食生活の認識と実践こそ、時間と労力を費やすことだ」といっています。合理的生活の題目のもと、外食に、コンビニ、インスタント食品など便利にばかり走るのは、文化的な生活ではないということを解いています。本当に幸せで、おいしい食生活とは何か、ここであらためて見直す時がきているのですね。
ファーストフードに反したスローフードという言葉、これはゆっくり食べるということだけではなく、食の文化に対する哲学をも意味します。スローフード運動とは、3つの柱からなっていて、農業国イタリアやフランスでは、味覚習慣を定め、食のイベントや食育など積極的に行っています。日本でも近年、食に関する関心は高まるばかりです。
1. 消えつつある郷土料理や伝統的な食材、質のよい食品、酒(ワイン)を守る。
2. それらの質のよい素材を提供するために頑張っている小さな生産者を保護する。
3. 子供たちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていく。
◇おいしくて健康?
時々ニュースで、食品による中毒などの話を耳にします。本来、味わい分ける味覚をもっていれば、中毒をおこすような食べ物は、一口でも口にした途端に異様な味を感じるといいうのに。ゆっくりと注意深く味わうのは動物の本能、味わうことを普段からなおざりにすると、命にも危険が及ぶかもしれません。逆に、日頃、味わうことを意識すると、味覚神経がその味を捕えようとし、鋭敏になり、隠されていた味が舌頭に開花するといいます。
そうすると、「たとえ少量の料理でも味わいが深くなり、さらによく噛むことで味の中の味を探る喜びは一層大きくなるもの。それなのに、超特急の食事では、添え味である調味料の甘辛さだけ舌に残って、素材の持ち味は理解できない。」と、同氏の「食する心得」にある一言です。真の味覚を体得するための一歩、やはり、自分の健康は、自分の舌で支えるしかないのだな、と感じさせられます。
甘味や塩味は苦味や酸味に比べて味覚の感度が低いと味覚の章であげました。逆にいえば、ある程度濃くないと感じないともいえます。これが習慣性といわれるわけです。本来の体の欲するサインも、味覚がずれているとあっては、かえって悪循環です。嗜好はあって当然ですが、自分の舌で感じるおいしさが、健康のバロメータであることを忘れずに、
調味の加減を知り、“おいしくて健康”を目指しましょう。
◇自然との調和
糖質、脂質、たんぱく質、は体をつくりエネルギーを生み出す大事な三大栄養素。糖質には即効性があり、脂質は貯蔵性にすぐれ、タンパク質もエネルギーを生み出す働きをします。給食で習った赤、緑、黄色の成分表を覚えていますか。「栄養学」でも食事はバランスといいますが、色と栄養の相関性は高く、栄養バランスを考えて食品を選ぶと、彩りのよい食事になることがわかります。バランスのいい日本食は色彩豊かですね。
おいしさのヒミツを探ることで、人は自然と調和しバランスをとりながら生きていることがわかります。「栄養学」的にみても、四季折々の自然の恵みには、その季節の体調の変化に必要な栄養素が備わっているのです。私たちは本当に自然の一部として生かされているのですね。そして、体の求めるところにやはりおいしさがあります。夏はさっぱり、寒さ厳しい冬には濃厚な味を体が求めるといったように、折りなす四季があってこそ、私たちはその変化するおいしさを楽しめることができるのです。
いよいよ味覚満載の秋がやってきます。その素材のおいしさ、恵みの味をぞんぶんに享受できるように、毎日の食事のなかで、そのおいしさをいつもより少し気かけてみませんか。味わい、感じるところに喜びがあるのだから。
さあ、ゆっくりと日本の“秋”食材を味わいましょう。味覚万歳!!
プロフィール:
フリーライター 隈部多美子(くまべたみこ)
正看護師、ホスピタリティーある住空間を得意とするインテリアコーディネーターでもある。
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