産業医のやりがいとは:嘱託ケース

[病院を知ろう!プロジェクト] 2010/06/04[金]
このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加この記事についてつぶやく

 千葉県市原市姉崎の内田医院の内田威一郎院長は、地元の小学校の校医や介護施設の巡回訪問をするなど地域密着医療を行っています。
 そして産業医としても、地元の5社から嘱託を受けています。各社の規模は社員50人から300人とさまざま。月に一回1-2時間の定例ミーティングに出席して保健上のアドバイスをしたり、社員が集まる場でレクチャーをしたり、健康に悪影響を及ぼす問題がないか職場環境を立ち入りチェックするのが一般的な業務です。顧問先の健康診査の体制によっては、健診結果シートを一つひとつ確認して改善が見られない場合は、本人と面接することもあります。

産業医のメリットはさまざま

 インフルエンザのワクチン接種も行います。工場では集団感染してラインが止まっては一大事。でも社員にとっては会社休んで予防接種に行くのは負担です。だから出張ワクチン接種は喜ばれています。
 ただし毎月の顧問報酬自体は数万円で、昨今の不況からそれすらもコスト削減対象となっていますから、産業医になることは収益メリットが大きいわけではありません。でも、「やりがいが大きな仕事」と内田先生は言います。

嘱託産業医になる5つのメリット

  1. 外来診療とは違ってすぐに結果が返ってくるわけではないが、家族を含めると1社あたり何百~何千人もの人達の健康を見守っているという社会的責任をひしひしと感じる。地域の公衆衛生の一環を担う醍醐味。
  2. 外来診療では健康を崩した患者ばかりだが、産業医の現場は「その前の状態」にいる人達に対する健康増進指導。大勢に対する分かりやすい啓発レクチャーなど、別のスキルが求められてチャレンジング。
  3. 地域で「いまどんな病気が流行っているのか」を把握しやすい。それは、外来で診断をつける際にも役立つ。
  4. ビジネス社会のしくみを知ることができる。開業医も医療機関のトップとして組織運営ノウハウを身につけなければならないが、会議の進行一つとっても上手下手があることを実地で学ぶことができる。
  5. 自院で患者の訴えを聞く時に、リアリティを持って話の背景を理解できる。「なかなか会社を休めない」「上司と部下との板挟みで」などと言われた際に、同調・共感姿勢で話に応じることができる。

嘱託産業医の現場に同行させていただきました

 今日は顧問先の1社が社内で定例の「労働衛生委員会」を開催するので、参加します。大手の化学工業メーカーの子会社です。迎えのタクシーに乗り込み、顧問先に急ぎます。
 会議では、「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」を採りあげて、啓発講和をしました。のどを図解したイラストをホワイトボードに描き、大事な数値も書き込んで説明。「昼間に眠くなると、労災の原因にもなりかねません。」という先生のトドメのセリフで、聞いていた人から活発な質疑応答が始まりました。「確かに私も、家族からいびきがウルサイと起こされるぞ。」「それがこんな病気なら、怖いねえ。」「でも息が止まっていると言われたことがなければ、大丈夫なんですか?」
 時間にすると会議全体で30分程度ですが、濃い時間でした。顧問先の担当責任者の弁によると、「内田先生は、質問をするとすぐに的確な返事をしてくれる。それが頼もしい。先生の指導を受けながら、生活習慣病の予防に力を入れている。」とのこと。

複数の業種業態の嘱託は面白い

 内田先生は、業種業態が異なる会社を見るのは面白い、といいます。例えばスーパーマーケットの会社では、「レジの高さ」や「バックヤードの温度管理」などが従業員の健康に影響を及ぼすので、人間工学をも少し勉強しました。また、「禁煙率」を職場ごとに競うことで、食品を扱う接客業として全社的に禁煙体質に転換し、競合差別化を提案したこともあるそうです。
 机上の空論を言い放つだけの評論医師ではなく、実現性にまで踏み込んだ複眼的な提言を行い、企業側ときちんと協議できるところが、産業医ならではの魅力でしょう。
 内田先生は、「臨床データを蓄積して地域特有の健康・疾病特徴を分析し、それを一次予防にもつなげて産業医活動にも活かしたい。それらの記録をまとめて、“市原市の健康医療研究”などと地域名付きで世に発表していきたい。」という夢を持っています。

内田威一郎(うちだ・いいちろう)先生のプロフィール

sangyou_p1-100

1994年 東邦大学医学部卒業 東邦大学第一外科入局
1998年 東邦大学大学院医学研究科博士課程(外科系)卒業
1999年 東邦大学第一外科医局員
2001年 医療法人社団内田医院 副院長
2005年 医療法人社団内田医院 理事長 院長 現職

主な資格、所属など

日本外科学会・認定医、日本大腸肛門病学会・専門医、日本医師会認定産業医、市原市医師会所属

記事一覧 : 産業医って、普通のお医者さんと何が違うの?

  1. 産業医って、普通のお医者さんと何が違うの?
  2. 産業医のやりがいとは:専属ケース
  3. 産業医のやりがいとは:嘱託ケース «

みんなの感想:この記事はあなたの健康に役立ちましたか?

とても参考になった まあまあ参考になった 普通だった 参考にならなかった
71% 14% 11% 3%
一言感想

この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。


記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

相談できる病院を探す

  • 漢方 漢方のことはお医者さんに相談
  • 漢方 漢方のことはお医者さんに相談
  • 糖尿病 糖尿病が気になる方はこちらから
  • 脳卒中、認知症など 日本神経学会認定神経内科専門医
QLife会員新規登録はこちら
注目トピックス
人気記事ランキング
健康・医療の記事一覧
医療機関のみなさまへ
QLife漢方-漢方の医学的・科学的情報をわかりやすくお伝えします。
QLifeがん-がん治療についてのさまざまな情報をわかりやすくお伝えします。