「医療ボランティア」の役割と実際~COMLの医療ボランティア講座から~

大病院に行くと、「病院ボランティア」という名札を胸につけている人に、総合受付で案内されることが増えた。正規の職員ではなく、無報酬ないし低報酬で活動している人達だ。最近、こうした「病院ボランティア」も含め「医療ボランティア」という仕事が、需給ともに増えているという。
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)が、日本初(?)の「医療ボランティア」講座を開いたところ、マスコミにも取り上げられ申し込みが殺到し、急きょ講座を拡大・追加をしたらしい。
なぜそんなに人気なのか?誰でもできる仕事なのか?素人が医療機関で働いてクレームはないのか?その第1回目の最終講義にお邪魔した。
1995年を境に、医療ボランティアが急増した理由
「昔は、素人が患者さんに接して万一のことがあったら、という慎重論が多くて、地下室で縫い物をお手伝いするような仕事が多かった。」日本病院ボランティア協会の理事、倉橋広子氏が、医療ボランティアの変遷を説明した。
契機は1995年。阪神・淡路大震災でボランティア活動が広く社会に認知されたと同時に、「病院機能評価」(※)が日本で始まった。そして“ボランティアを受け入れている”が病院の評価項目に加わったことで受け入れ側も積極的になったという。
今では、病院ボランティアの活躍領域は多岐にわたる。緑や花の整備、院内アートの管理、図書サービス管理、車椅子の修理、イベント(クリスマス・パーティなど)の企画実施など、特に一般的な活動規定はない。
さらに、環境支援ではなく直接患者さんに接する仕事も増えている。特に「ホスピス・緩和ケアプログラム」では、正式にスタッフの一員として位置づけられ、責任が重い。カンファレンス(患者さんの状況や治療方針などを議論・確認するために、医療従事者などが行う会議)にも参加するという。
※「病院機能評価」:病院の機能を中立的体系的に評価し、改善サイクルを支援する目的で財団法人日本医療機能評価機構が審査と認定を行っている。認定を受けると、その旨を対外的に広告できたり、診療報酬上の加算もある。2008年8月25日現在2,530の病院が認定を受けており、これは日本の病院の約30%。
患者さんの言い分もわかるが、病院側の事情も分かる悩み
「実は、医療過誤で夫を亡くしました。その時の病院側の対応が真摯で、結局その病院で働くことになりました。」衝撃的なお話からスタートしたのは、阪南中央病院の患者情報室で働く北田淳子氏。
「患者情報室」とは、まだ設置病院が全国で100箇所ほどらしいが、患者さんや家族が病気に関する情報収集する支援を行う場所だ。ここでも「医療ボランティア」が活躍している。
ただし、「医療者としてのアドバイス」にならないように常に注意している。病院側の事情、医療側の言い分もわかってくるにつれて、どこまで患者さんに伝えて良いかに悩むという。意見を押し付けずに、あくまで情報提供、あくまで患者目線を貫くことが大変だという。
「患者情報室」は、患者や家族が本やインターネットを使って自分自身で調べることを支援するのが本来の役割だが、実際には”憩いの場““患者と病院との架け橋“にもなっているという。医療者とうまくコミュニケーションできず不安を持っていたり、誤解が基でストレスを抱えている患者、あるいは個人的に悩みをかかえている患者などに、気軽に入ってもらって話を聞く。そして患者さんの声をリアルタイムに医療者にフィードバックして、両者の信頼関係を深めることを目指している。
「患者電話相談」や「模擬患者」で貢献しつつ、自分も学べる
「“私達が、たらいまわしの最後になろう“と思って一生懸命に患者さんのお話を聴いていたら、15年経ってしまいました。」と、笑いながらお話してくださったのは、COMLの電話相談のベテラン・ボランティアスタッフ、西和子氏。「医療ボランティア」といっても、西さんのように病院の外で患者さん支援をする方法もある。
ただしCOMLの電話相談のスタートは19年前にさかのぼる。当時はそのような窓口が少なく、あちこちに電話した挙句に辿り辿ってCOMLに到達した患者さんが多かった。自分は医療の専門家でもなく、病院で仕事した経験もなかったが、とにかく「聴くしかない」と頑張ったそうだ。
もう一人、COMLのスタッフとして登壇したのは、山田彩乃氏。最近、全国的に急増している模擬患者(SP:Simulated Patient)活動、あるいはその養成活動の様子について、実際の声を紹介した。
SPは現在、全国で800人いると言われているが、医学部・薬学部での教育カリキュラムに組み込まれたために、どの大学でもSPが不足気味で、ホームページなどで募集している状態らしい。実際にSPをしている人の報告書を見ると、「若い医療者達の未来の可能性を信じて」「医療の現場で頑張っている(頑張ろうとしている)方々に」「若者に対する期待があった(成長に役立つと思った)」など、医療の将来に対する貢献にやりがいを感じている人が多い。また、なかには「がんの告知」などのロールプレイをしているうちに、つい感情移入して涙ながらの感動的セッションになることもある一方で、「言葉の持つ難しさや怖さ」を実感するなど、個人的経験としても大きな学びを得ているようだ。

今回の講座は、NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)が医療ボランティア活動を先駆的に行ってきた経験や人脈を生かして、事務局長の山口氏が3時間x7回の講座を企画運営したもの。講座が追加開催される可能性もあり、詳しくはCOMLのホームページで。
医療で活躍するボランティア養成講座(COMLのホームページ)
■COMLの長年の電話相談ノウハウから生まれた連載が当サイトでスタートしました。『実践!病院でのコミュニケーションテクニック&秘訣』をご覧ください。
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