「在宅医療への薬剤師の参加」はどこまで進んでいるの?—日本薬剤師会に聞いてみました 後編

[本格的に始まった、薬局による「在宅医療」サービス] 2011/02/25[金]
このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加この記事についてつぶやく

在宅医療に対する薬剤師の関わり、その現状とこれから

QLife:
今後、在宅医療とともに、薬剤師の役割がさらに重要になってきますね。

安部:
薬剤師の在宅医療への参加が広く行われるようになってから10年になります。残念ながら、在宅医療に対する薬剤師の関わりは、現時点では不十分という状態にあります。。在宅医療への参加を表明している薬局の数に対して、実際に参加できている件数が少ないのです、日本薬剤師会の調査では、薬局の参加意思である「訪問薬剤管理指導」「居宅療養管理指導」の届出は薬局の65%で行われています。しかし、訪問の実績がある薬局は約14パーセントにとどまっています。要請がなかったため、参加できなかったということですね。
QLife:
なぜ14パーセントの薬局しか要請されなかったのでしょう?
安部:
大きな原因として、情報が行き渡っていなかったことがあります。我々は、医師から「この方は通院や薬の管理が難しいので、在宅訪問をして下さい」といった要請があってはじめて在宅医療に参加できる仕組みです。要請がなかなか来なかったのは、医師側に、対応可能な薬局であると伝わっていなかったためです。
QLife:
全体的に、情報が伝わっていないのですか?
安部:
医療チームは、多くの場合、地域単位の比較的近い距離の中でつくられます。車で1時間の移動を必要とするような条件の下でチームを構成することは、サービスの質や費用などから考えても大変なハードルになりますからね。そのため、すでに在宅医療が活発に行われている地域や情報提供が行われている地域では、薬剤師の顔が見えていますので、薬剤師に依頼しようという話になります。一方、情報が不足している地域では、薬剤師に依頼すること自体が難しい状況にあると考えています。
QLife:
在宅医療は地域ごとに偏りがあるということですね。

安部:
そうです。例え医師側が薬剤師に要請したいと考えても、情報が浸透していなければ、どの薬局に依頼すれば来てもらえるのか分かりません。「うちではやっていないんです」と薬局に断られれば、医師も忙しい中、対応する薬局を探し回っていられません。その結果、薬剤師をチームに呼ぶことを諦めてしまったり、あるいは実績のある薬局に依頼が集中してしまう結果、偏在化が起こるのです。
QLife:
見方を変えれば、一部の薬局が、薬剤師のチーム参加を牽引してきたのですね。
安部:
そうですね。在宅医療に行く体制を整えるにはコストもかかりますし、在宅への訪問はものすごく大変な仕事です。医療保険や介護保険の仕組みの中で必要な書類なども負担になります。そんな思いをしながらも、在宅医療の質を上げるために、やっとの思いで開拓してきたのだと思います。しかし、まだ改善の余地があるのも事実。我々は、より多くの薬局が在宅医療に参加できる体制を整えるため、2011年度のアクションプランを打ち立てました。
QLife:
どのようなプランか、少し詳しく教えていただけますか。
安部:
これまで薬剤師がなかなか参加できなかったのは、地域、医療機関、行政などとの「情報共有」、「連携」が進まなかったことが背景にあります。そこで、今後はこの二つをさらに強化していきます。まず、地域(市町村)単位で、薬局の在宅医療の対応状況を調査してその情報を薬剤師会に集積します。そして、薬剤師会から地域の医師会や地域包括支援センター、行政などに提供していきます。薬剤師を探している在宅医療チームが、どの薬局に頼めばよいかすぐに探せるよう、環境を改善していくのです。次に、在宅医療における薬剤師がどのような役割やサービスを行うか、勉強会や研修などを通じて他職種あるいは地域に情報を提供していきます。
QLife:
薬剤師が参加しやすくなり、在宅医療チームが強化されていくのですね。
安部:
おそらく、一朝一夕で変わるものではないでしょう。在宅医療と一口に言っても、がんの末期で寝たきりの方もいれば、元気に歩ける方までさまざまです。そういった個別のニーズに合わせたチーム作りも大変なことですし、在宅医療の地域差も壁になります。しかし待っていては始まりません。これからは薬局、薬剤師が手をあげて参加の意思を示していきます。いわば、こちらから出会いを作ろうという「婚活」のようなものです(笑)。地域、医療機関、行政、そして薬局がよいパートナーシップを築くことで、在宅医療の質を底上げできるものと思います。

安部好弘氏 プロフィール
薬剤師。昭和薬科大学卒業後、水野薬局に入社。平成3年にケイロン薬局を設立。
東京都薬剤師会常務理事職を経て、平成20年4月に日本薬剤師会常務理事に就任、現職。また平成22年7月からは、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会臨時委員を務めるなど公的委員としても幅広く活動している。


みんなの感想:この記事はあなたの健康に役立ちましたか?

とても参考になった まあまあ参考になった 普通だった 参考にならなかった
64% 24% 4% 8%
一言感想

この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。


記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

相談できる病院を探す

QLife会員新規登録はこちら
注目トピックス
人気記事ランキング
健康・医療の記事一覧
医療機関のみなさまへ
QLife漢方-漢方の医学的・科学的情報をわかりやすくお伝えします。
QLifeがん-がん治療についてのさまざまな情報をわかりやすくお伝えします。