美容外科の存在意義
■「美容」と「整形」「形成」の違いは?
ところで、街中の美容クリニックの看板を見ると、「美容整形手術」「形成美容外科」など類似の記載が氾濫していて、分かりにくい。ところが実際には、たとえば「プチ整形」が一般的に意味するものと、「整形外科」の実態とは、かけ離れている。ちょっとここで、整理をしよう。
- 整形外科:骨・関節・筋肉などが適切に機能するようにする
- 形成外科:生まれつきの手や顔の異常や、やけど・傷跡・体表面の変形・外傷や腫瘍摘出による欠損などを修復、きれいにする
- 美容外科:欠損・変形をなおすというよりも、見た目の理想的美しさを目指す
これらはいずれも標榜科目として認可されている表記だ。逆に言うと、これら以外は法的には正式名称ではない。美容外科は、整形外科や形成外科に比べると、保険適用されない治療が多いが(自由診療、つまり全額自己負担)、先天性の母斑(ほくろ)などで保険診療が認められるものもある。
ただし、これら以外の外科分野でも、治療の評価軸としてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が重視されるにつれ、「容姿」が医学的要素に認められつつあることは確かだ。その究極が「美容外科」といえるだろう。外見・容姿=社会的機能と美容外科では考える。外見によるいじめを苦に自殺に追いやられる子供や女性がいる時代では、命にかかわる医療でもある。
■果たして「美容外科は本当に必要」か?
ただ、こうした医療を邪道と考える医師は、依然として少なくない。そして驚いたことに、一瀬先生自身も、その存在意義について考えこむことがあるらしい。国立大で美容外科を立ち上げたような先生だから、さぞや強固な信念で突き進んでいるのかと思いきや、立ち止まることがある、という。
「でもね、どんな医療もそうだと思うんです。」確かに延命治療や移植など、医療技術の発展には倫理的考察が欠かせない。自分達がやっていることは本当に正しいのだろうか?と教育者自身が自問自答しながら前進する姿は、健全だ。悩むことがない医師の方がかえって怖い。
■「なぜ治療するのか」目的をじっくり明確化
そして、美容外科手術は”手段”に過ぎない、と一瀬先生は言い切る。「患者さんの目的は、必ず、別にあるのです。コンプレックスを解消したい、堂々と人と話したい、結婚したい、など。」
「もしカウンセリング段階で悩みが払拭されて、つまり患者さんの目的がそこで達成されたなら、治療はおしまい。手術をする必要はありません。」逆にいうと、目的の明確化と共有ができないと、治療はうまくいかない。そのため「患者さんとのコミュニケーション能力」が、美容外科医に求められる最も基礎的なスキル、と語る。
治療方針も慎重を旨とする。安全性の高い医療を厳選し、FDA(米国食品医薬品局)の承認を受けた医療器具や薬剤しか使用しない。情報発信・教育拠点として、トラブルを起こさない責任を強く認識している。
» 「変わり始めた日本の美容医療」(その1)
» 「美容外科の存在意義」(その2)
» 「日本の美容外科の患者ニーズ」(その3)
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