緑内障は視野が欠ける眼の病気 急増している正常眼圧緑内障に注意!
40歳を超えたら定期的に眼底検査を!
17人に1人が緑内障 失明原因の第1位に
今日、緑内障が中途失明者(成人)の第1の失明原因として大きな注目を集めています。
「従来は糖尿病性網膜症がもっとも多かったのですが、昨年、発表された厚労省の研究報告で、中途失明の原因として(1)緑内障26%、(2)糖尿病性網膜症21%、(3)網膜色素変性症9%と明かされ、大きな反響を呼んだからです」と、東京大学医学部附属病院の富所敦男講師(眼科)は指摘します。
緑内障というと、かつては「あおそこひ」という別名がありました。緑内障の1つのタイプである原発閉塞隅角緑内障の急性発作時に、ひとみ(瞳孔)が青緑色に見えることからそう呼ばれていたのです。
また、緑内障はこれまで眼球内部の圧力=眼圧の上昇によって視神経が圧迫・障害され、見える範囲=視野が欠けて狭くなり、失明に至ることもある眼の病気とされていましたが、今はそうではありません。
富所講師:「なによりも眼圧が正常であるにもかかわらず、視神経の障害から視野狭窄などに陥る正常眼圧緑内障が、もっとも多いことが明らかになってきたからです。今や正常眼圧緑内障は緑内障全体の72%を占めています」
眼圧の上昇があろうとなかろうと、いずれにせよ緑内障に特徴的な視神経の障害から視野狭窄に陥る眼の病気すべてを、緑内障と呼ぶようになったのです。
富所講師:「最新の調査では40歳以上の人の約6%、ほぼ17人に1人が緑内障を患っていると推測されています」
改めて緑内障についてきちんとした理解と、早期発見の方法や治療法などを学ぶ必要があります。
視神経の萎縮から視野狭窄が進行
私たちは眼を通して視覚情報をとらえていますが、眼=眼球だけでものが見えているわけではありません。
富所講師:「眼に入った情報は視神経によって脳へ伝えられ、脳で認識されて初めて見えるようになります」
一方、眼の網膜には光や色を感じる視細胞があり、1つひとつの視細胞からそれぞれ神経線維が延びています。
富所講師:「神経線維は網膜の視神経乳頭というところで束ねられ、コードのように脳へ延びています。この束ねられた神経線維が視神経にほかなりません」
何らかの原因で視神経が萎縮し、神経線維の死滅からその数を減らしてしまうと、減らしてしまった分だけ視覚情報が脳へ伝えられなくなります。その結果、見える範囲=視野が狭くなっていくのが緑内障という病気なのです。
眼圧の異常な上昇は原因の1つ
緑内障は視神経の障害から視野狭窄に陥る眼の病気と先述しましたが、その原因の1つとして眼圧の上昇があげられるのは確かな事実です。
そもそも眼圧とは眼球の内側から外側に働く力で、眼球をある程度の硬さで丸い形に保つ役割を果たしています。房水という眼球の中を循環している液体によって、眼圧はコントロールされています。
富所講師:「房水は毛様体で分泌され、虹彩の内側=後房で水晶体の周りを循環し、瞳孔へ回ってきます。瞳孔から虹彩と角膜の間=前房を循環し、隅角(角膜と虹彩の付け根の角)へ達します」
隅角には線維柱帯というフィルターのような網目状の組織があります。房水は線維柱帯で濾過され、シュレム管という排出路に流れていきます。
富所講師:「重要なのは眼圧が房水の産生と排出によって、通常10~21/Hgに保たれていることです」
しかし、房水がスムーズに排出されなくなると、房水は前房・後房にとどまり眼圧を高めてしまいます。
眼圧が高まると視神経は圧迫され、その圧力によって神経線維が押し潰されて萎縮し、その死滅から緑内障を進行させてしまうのです。
今のところ原因不明の正常眼圧緑内障
緑内障は、(1)原発閉塞隅角緑内障と、(2)原発開放隅角緑内障、(3)続発緑内障、(4)正常眼圧緑内障など4つのタイプに大きく分けられます。
原発閉塞隅角緑内障は虹彩と水晶体の間が狭くなったり、虹彩と角膜の間=隅角がふさがったりして眼圧の上昇を招く緑内障です。
富所講師:「眼圧がしばしば急激に上がり、急性緑内障発作を起こすのが特徴です。失明する危険がもっとも高い緑内障といえます」
原発開放隅角緑内障は隅角がふさがっていないのに、房水排出路の線維柱帯が詰まって眼圧を上げる緑内障です。
富所講師:「眼圧は正常よりやや高くなり、ゆっくりと慢性的に視神経の障害を進行させていくのが特徴です」
続発緑内障は糖尿病性網膜症やぶどう膜炎など他の病気や薬が原因で、二次的に引き起こされる緑内障です。
一方、正常眼圧緑内障は眼圧が正常でありながら、視神経の障害から緑内障を招く病気です。今のところ原因は不明で、進行が非常に緩やかなのが特徴です。
富所講師:「正常眼圧緑内障は眼圧との関係が強いケースと、眼圧との関係が弱いケースなど、眼圧との関係ではさまざまなケースがあります。個々の正常眼圧緑内障ごとにどのくらい眼圧が影響しているのか、その点は現在の医療レベルで正確に把握することができません」
緑内障全体のうち、正常眼圧緑内障がもっとも多くて72%を占め、次いで原発閉塞隅角緑内障が12%、続発緑内障が10%、原発開放隅角緑内障が6%と続きます。
早期発見に不可欠な眼底検査
ここでは正常眼圧緑内障の早期発見法と治療法などについて、簡単に紹介したいと思います。
正常眼圧緑内障の早期発見には、眼底検査と視野検査が不可欠なものとされています。かつて、「緑内障といえば眼圧検査」と真っ先に言われていましたが、眼圧が正常な正常眼圧緑内障の早期発見に眼圧検査は役立たないので、眼底検査と視野検査が求められるのです。
富所講師:「眼底検査は光を瞳孔から入れて、眼底=網膜や網膜の血管、神経線維が束となった視神経乳頭の異常などを調べる検査です。視神経乳頭はもともと少しへこんでいるのですが、緑内障になるとそのへこみ具合が大きくなったり、その周りの網膜神経線維層が薄くなったりします。その点をチェックして正常眼圧緑内障の有無を診断するのです」
一方、視野検査は中央の1点を見つめたときに見える範囲と、その感度を調べる検査です。ゴールドマン視野計や自動視野計で視野狭窄の有無とその程度をチェックし、正常眼圧緑内障の進行程度などを把握することができます。
富所講師:「視野検査の難点は両眼で15分以上の時間を要することです。通常は健診などの眼底検査で異常が認められたり、緑内障の自覚症状が出ていたりする場合に行われます」
早期にはほとんど認められない自覚症状
重要なのは正常眼圧緑内障の早期の段階では、ほとんど自覚症状が認められないことです。
富所講師:「視神経の約4割が死滅していても、視野狭窄などを招くことは稀だといえます。いわゆるテレビのモニター画面で視野を調べるテレビチェック法で異常が見つかった場合は、すでに約6割の視神経が傷害されていると考えられます」
正常眼圧緑内障を早期発見するためには、まず眼底検査を受けることが必須です。
富所講師:「緑内障は40歳を超えた頃から増えていきます。40代になったら定期的に眼底検査を受けることが、正常眼圧緑内障を早期発見するためのコツといえます」
ちなみに約6割の視神経が冒されていても、緑内障の進行程度から言うとまだ早期の段階です。本来、視神経(神経線維)にはかなりの余裕があるからです。
治療の基本は点眼薬による薬物療法
正常眼圧緑内障の原因はまだよく突き止められていませんが、10~21/Hgの正常眼圧の範囲内でも視神経に傷害が起こったり、視神経に栄養を補給する血管の血液循環の悪化から、その萎縮が生じたりするのではないかなどと推測されています。
富所講師:「正常眼圧緑内障の治療法は、病気の進行が非常にゆっくりしているので、患者さんの年齢と視神経の萎縮の程度を考えあわせて適切な治療方針を決めていきます」
治療は点眼による薬物療法が基本です。眼圧は房水の産生と排出のバランスによって調整されるため、薬で房水の産生を抑えたり、房水の排出を促したりして眼圧を押し下げるのです。
富所講師:「正常眼圧緑内障の治療のひとつの目安として、目標眼圧というのがあります。一般に目標眼圧は元の眼圧から20~30%減の眼圧です」
房水の産生を抑える薬には「チモプトール」などのβ遮断薬や、「トルソプト」などの炭酸脱水素酵素阻害薬があります。一方、房水の排出を促す薬には「キサラタン」などのプロスタグランジン関連薬があり、それらを組み合わせて使用します。
富所講師:「まず1~2種類の点眼薬などで眼圧を下げられるところまで下げます。20~30%減の目標眼圧まで下げられなくても、視野検査によって視野狭窄の進行が止まったことを確認できれば、そのまま薬物療法を続けます」
薬には副作用があるので、可能な限り少ない薬で眼圧をコントロールし、視神経への傷害を抑えるのが治療の目標となります。
線維柱帯切除術は最後の手段
点眼薬などの薬で十分に眼圧を下げられず、視野狭窄が進行する場合は、レーザー治療や手術などで治療します。
富所講師:「レーザー治療は隅角からの房水排出路にあるフィルター=線維柱帯にレーザー光を当て、フィルターの編み目を広げることで房水の排出を促す治療です」
レーザー線維柱帯形成術と、選択的レーザー線維柱帯形成術の2つがあります。ただし、正常眼圧緑内障に対するレーザー治療は、眼圧の下がり具合が小さいので、頻繁に行われることはありません。
富所講師:「正常眼圧緑内障に対してもっともよく行われる手術は、線維柱帯切除術と言います。排出路の線維柱帯とシュレム管に穴をあけ、房水の排出を促す手術治療です」
ただし、線維柱帯切除術は濾過胞炎や眼球炎など重篤な合併症を引き起こすこともあります。
富所講師:「手術以外の治療法をすべて試みて、それでも視野狭窄の進行を止められないときだけ行うというのが、手術に対する基本的なスタンスなのです」
正常眼圧緑内障は視野狭窄が非常にゆっくりと進行しますが、元に戻らない不可逆的進行です。放置すれば視野狭窄が進行し、いずれ失明に至ることもあります。
40歳を過ぎたら定期的に眼底検査を受け、正常眼圧緑内障の早期発見に努めてください。そして、正常眼圧緑内障と診断されたら、視神経の萎縮がこれ以上進まないように眼科で治療を受けることが大切です。


富所 敦男(とみどころ あつお)講師
東京大学医学部附属病院眼科
1989年新潟大学医学部卒業後、同年東京大学医学部眼科入局。94年大宮赤十字病院眼科、2002年同病院眼科部長代理、03年東京大学医学部附属病院眼科講師。日本緑内障学会の評議員を務める緑内障の若手専門医。ソフトな語り口と患者本位の診療で多くの患者から厚い信頼を集めている。
※掲載内容は2007年10月の情報です。
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わかりやすい説明でよく理解できました。
私は45歳のときに緑内症と診断されました。その病院には、違う件で行ったのですが、ついでに視神経乳頭を見てくださり、緑内症ではないか詳しい検査をしましょうと早い発見になったのです。
今私は53歳の女性です。目が見えないまま長生きしてもな?と将来が心配です。
Posted on 2011.10.25 12:48:26 by 一言感想
緑内障の家系なので、55歳になるのでとても気になります。眼圧が高くないのにが72%に驚きです。定期健診が重要ですね。
Posted on 2011.08.27 23:01:08 by 一言感想
緑内障の診断を受けたものの、どのような病気か知りたくて、検索。分かりやすい解説に納得しました。
Posted on 2011.08.12 13:38:01 by 一言感想
私も正常眼圧緑内障の疑いで通院中です。人間ドッグの眼底検査で発見されました。職場の検診では絶対にわからないので、人間ドッグをお勧めします。会社の補助も出るところが多いと思います。
Posted on 2011.07.25 22:31:49 by 一言感想
現在の治療方針と同じで、安心した。
Posted on 2011.07.23 0:35:30 by 一言感想
50歳主婦です。人間ドックの結果通知で要受診となり、4日前に再検査をして視神経萎縮、視野欠損を指摘されました。
ドックの眼科検診、コンタクト購入時の眼科検診と年に2~3度は目の検査を受けていたのでとてもショックでした。
眼底、視野検査を受けないとわからないのですね。
自覚症状もないので怖いですね。
緑内障=失明?と何となく思っていたのですが記事を読み、医師の指示に従っていこうと気をとりなおしました。
他の病もそうですが、まさに早期発見早期治療が大事ですね。
これだけ科学の発達した時代、検査を避けていてはもったいないです。
Posted on 2011.07.18 15:15:28 by こうらいにんじん
本日眼科で検査を受けて正常眼圧緑内障の診断を下され、治療を始めました。
Posted on 2011.06.19 22:44:01 by 一言感想
わかりやすく、また希望が持てました。ありがとうございました。
Posted on 2011.03.8 15:55:11 by 一言感想
人間ドックで疑いが指摘されました。早速、精密検査を受けます。
Posted on 2011.02.26 17:34:16 by 一言感想
今日、正常眼圧緑内障と診断されました。プロスタグランジンの目薬をもらいました。根気よく治療したいとおもいます。
Posted on 2010.11.11 16:07:15 by 一言感想
いまみえない。
Posted on 2010.11.3 23:44:04 by 一言感想
35歳主婦です。左目の視野狭窄が激しく手術を余儀なくされました。
Posted on 2010.06.21 19:08:13 by 一言感想
取材協力/富所敦男講師・東京大学医学部附属病院眼科








点眼薬について医師に相談します
Posted on 2011.10.29 17:34:58 by 一言感想