出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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生殖器系執筆者:浜松大学健康プロデュース学部心身マネジメント学科教授 竹内修二

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男性生殖器のつくり

 男性の生殖器は、精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸)、精管、精嚢、前立腺、尿道球腺、陰茎、陰嚢などからなっています。

男性骨盤の断面

精巣・精巣上体…精巣は、陰嚢中に左右1対あり、線維性の白膜に包まれ、多数の小葉に分けられます。各小葉には数条の曲精細管があり、この曲精細管で精子が作られます。

 精子は、精細管壁の精上皮から精祖細胞が生じ、精母細胞、精娘細胞と分化して精子細胞となります。精子細胞は成熟し、形を変えて精子となります。

精子の形成

精管…曲精細管は直精細管となり、集合して精巣網を作り、そこから15~20本の精巣輪出管がおこり精巣上体に入ります。そのあと精巣輪出管は1本の精巣上体管になり、精管となります。

精巣(矢断面)

 精管は鼠径管内を通って腹腔内に入り、精管膨大部を作ったあと、前立腺を貫き、精嚢の導管と合流して射精管となり尿道に開きます。

精嚢…膀胱後面で精管膨大部の外側にある紡錘状のふくろで左右1対あります。淡黄色を帯びたアルカリ性の分泌物を出し、射精の際、前立腺の分泌物とともに精液として排出されます。

前立腺…膀胱の下で、恥骨結合と直腸の間にあり、射精管と尿道起始部を取り囲む腺です。乳白色の液を出し、精子の運動を促進します。

外生殖器(外性器)|陰茎・陰嚢

 陰茎は、尿路と交接器を兼ねる器官で、背側の陰茎海綿体、腹側の尿道海綿体、その先端の亀頭からなります。

 尿道海綿体のほぼ中央を尿道が通り、亀頭の先端に外尿道口として開きます。陰茎海綿体は血管に富み、多量の血液が注がれ、勃起の主役となります。陰茎の皮膚は亀頭との移行部でたるみ、包皮と呼ばれます。

 陰嚢は、腹壁の皮膚の続きで、精巣・精巣上体と精索の一部を包み、ふくろ状をしています。収縮時は表面にヒダが生じています。皮下には脂肪組織はありませんが、肉様膜と呼ばれる平滑筋層が発達しています。

女性生殖器のつくり

 女性の生殖器管は、卵巣、卵管、子宮、腟、外陰部などからなっています。

女性骨盤の断面

卵巣…骨盤腔内で子宮の両側にある長さ約3cm、幅約1・5cm、厚さ約1cmの卵円形の器官です。皮質と髄質からなり、皮質には種々の発達段階の卵胞が散在しています。

卵管…卵巣から子宮底の外側までの間を走る長さ約7~15cmの細い管です。子宮内腔(卵管子宮口)に続き、先端は漏斗状に腹腔に開きます。

 卵管腹腔口の漏斗の外周縁は卵管采と呼ばれ、一部は卵巣に付着しています。卵管壁の粘膜には線毛があり、卵子を子宮に送ります。

女性生殖器の全景

子宮…骨盤腔内で膀胱と直腸の間にあり、底辺が上になる下向きの二等辺三角形状です。正常な場合、前傾・前屈状態になっています。子宮の中は子宮腔といわれる空間で、胎児はその中で育っていきます。子宮壁は、粘膜、筋層、漿膜からなります。

 粘膜は子宮内膜といい、線毛上皮でおおわれ、多数の子宮腺を持ちます。卵巣周期・排卵に関連して一定の周期的変化がおこります。

腟・外陰部・会陰

腟…子宮の下につながり、長さ7cmほどの管腔器官で、交接器および産道でもあります。下端は腟口として外陰部の腟前庭に開きます。

外陰部…恥丘、陰核、大陰唇、小陰唇、大前庭腺、腟前庭が含まれます。大陰唇は外陰部の外郭を作る皮膚のふくらみで、前方の交連部を恥丘といいます。

 大陰唇の内側には左右1対の皮膚のヒダ(小陰唇)があり、腟前庭を取り囲んでいます。小陰唇の前方、左右が合する海綿体からなる部分を陰核といい、腟前庭には、腟口と外尿道口が開口しています。

 腟口の後方両側には大前庭腺(バルトリン腺)があり、その導管は腟口の両側に開き粘液を分泌します。

会陰…骨盤の出口、恥骨結合から尾骨に至るまでをいいます。女子の場合、臨床的には腟口から肛門までの部を会陰といいます。

女性外陰部

女性の性機能と排卵

 卵巣中には、原始卵胞と卵母細胞があります。毎回の月経とともに卵胞刺激ホルモンの作用により卵胞も卵母細胞も成熟し、卵子となります。 成熟した卵胞(成熟卵胞、またはグラーフ卵胞)に黄体形成ホルモンが作用すると、卵胞壁は破れ、成熟した卵子が腹腔に飛び出します。これを排卵といいます。

卵巣内での卵胞の発育

 排卵したあとの卵胞は、24~96時間以内に黄体の形成が完成されます。

 卵子が受精すれば妊娠黄体に変化し、受精しなければ月経黄体となり、次の月経の4日ほど前から黄体は退化し、白体となって消失します。

受精と着床

 卵巣から排出された卵子が、卵管膨大部で精子と接合し、最初の体細胞ができることを受精といいます。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を子宮内まで下がり、子宮内膜に定着します。これを着床といいます。着床した受精卵は母体内で発育を続けますが、この状態を妊娠といいます。

受精と着床

 着床がおこると胎盤が形成され、母体より栄養を取り、胞胚、胎芽、胎児と発育し、分娩によって体外に出されます。

胎盤

男女のできる仕組み

 ヒトの体を構成する細胞の核内にある染色体は、22種の常染色体が各1対と、性を決定する2個の性染色体の46個からなっています。常染色体は大きい順に№1~№22と番号がつけられています。

 性染色体には、X染色体とY染色体の2種類があり、男性の細胞にはX染色体とY染色体が、女性の細胞にはX染色体のみしかありません。

 男・女の性別はこの染色体の組み合わせによって決まります。

 すなわち、卵子(X)とY染色体を持った精子が受精すると、受精卵の性染色体はXYとなり男の子が、卵子(X)とX染色体を持った精子が受精するとXXで女の子になります。このように生物学的な男女の性別は受精の瞬間に決まります。