出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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脳・神経系執筆者:浜松大学健康プロデュース学部心身マネジメント学科教授 竹内修二

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脳のつくりとはたらき

 成人の脳の平均重量は約1300gで、髄膜や髄液で保護され、頭蓋腔の中におさまっています。脳を取り巻いている髄膜には、骨側に張りついている脳硬膜と、脳にくっついている脳軟膜、脳硬膜と脳軟膜の間にある脳くも膜の3種類の膜があります。

脳を包む膜

 脳は、大脳(正式には終脳)、中脳、小脳、間脳、橋、延髄からできています。大脳は、左大脳半球と右大脳半球が合わさって構成されていますが、左右の大脳の合わさり目はちょっと離れており、その溝を大脳縦裂といい、その部分にも脳硬膜が入り込んでいます。

脳の区分(正中断像)

 大脳の表層は大脳皮質と呼ばれ、灰白質(神経細胞の集まり)でできています。表面は多数の浅い溝やふくらみで凸凹状になっており(脳溝、脳回)、しわが寄っているように見えます。

 大脳皮質は6層構造を持つ新皮質(等皮質)と、6層構造を示さない古皮質(異皮質)とに分類されます。ヒトは90%以上、新皮質で占められています。

大脳・間脳・中脳・延髄

大脳…大脳は脳のなかで最も主要な部分で、主な溝によって前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けられています。大脳皮質には運動野、体性感覚野、視覚野、聴覚野、嗅覚野、味覚野、言語野など、機能の諸中枢が特定の部分に分布しています。

大脳半球外側面

大脳皮質にある機能の局在(諸中枢)

 これを大脳皮質の機能局在といっています。深部は白質で大脳髄質といわれ、各部を連絡する有髄線維でできています。

間脳…大脳におおわれていて一部が見えるだけです。視床脳と視床下部などに分けられ、嗅覚を除くすべての感覚線維を中継します。

中脳…大脳と脊髄、小脳を結ぶ伝導路ですが、同時に視覚反射および眼球運動に関する反射の中枢、聴覚刺激に対し反射的に眼球や体の運動をおこす中枢、身体の平衡、姿勢の保持に関する中枢などがあります。

延髄…延髄には循環や呼吸運動を制御し、生命の維持に重要な自律神経の中枢があります。

小脳…平衡機能、姿勢反射の総合的調整、随意運動の調整など運動系の統合を行っています。障害されると歩けなくなったりします。

脊髄の構造

 脊髄は背骨(脊柱)の中にあり、直径約1cmの白く細長い円柱状をし、下方は脊髄円錐となって第1~2腰椎の高さで終わっています。上方は脳(延髄)に連なり、頸部(頸髄)、胸部(胸髄)、腰部(腰髄・仙髄・尾髄)に区分されます。

脊髄分節と脊髄神経

 脊髄の前面には縦に走る深い溝(前正中裂)、後面には浅い溝(後正中溝)があり、これらの溝の少し外側にある溝から脊髄神経の前根、後根が出入りしています。脊髄の内部にはH型をした灰白質があり、周囲を白質が包んでいます。中央にある細い中心管は脳内の脳室に連なっています。

脊髄の構造

 灰白質は神経細胞が集まっているところで、前柱、後柱、側柱からなります。白質は縦走する神経線維からなっています。

 灰白質の前柱は運動性の神経細胞が多数集まり、前根を経て神経線維を骨格筋に送ります。後柱は感覚性の神経細胞が多数集まり、皮膚や筋からの神経線維が後根を経て後柱の細胞に刺激を伝えます。側柱は自律機能に関与する神経細胞が集まっています。

 脊髄神経は31対あり、頸神経(8対)、胸神経(12対)、腰神経(5対)、仙骨神経(5対)、尾骨神経(1対)に区分しています。

全身の神経系

 神経は体のあちこちに網の目のように張りめぐらされ、無数の細胞や組織と連絡して、その機能を調整するはたらきをしています。

全身の神経

 神経系は、末梢からの刺激を受け、これに対して興奮をおこす中心部を中枢神経系といい、脊髄と脳からなっています。刺激や興奮を中枢と身体各部との間で伝導する連絡路を末梢神経といい、脳と末梢とを連絡する脳神経と、脊髄と末梢とを連絡する脊髄神経からなっています。

神経系(中枢神経系と末梢神経系)

 また、感覚器や骨格筋などに分布し、随意運動のような動物性機能に関与する体性神経系に対し、不随意筋の運動や腺の分泌など植物性機能に関わるものを自律神経系といいます。

自律神経…内臓や血管、腺などに分布して、無意識的かつ反射的に、生命維持に必要ないろいろな作用を調節します。自律神経は交感神経と副交感神経とで構成されており、交感神経は心臓などのはたらきを促進し、副交感神経は逆に抑制します。

感覚神経・運動神経・分泌神経

 末梢神経はさらに、末端の器官のはたらきと伝達する方向によって、求心性神経(感覚神経)と遠心性神経(運動神経・分泌神経)とに分けられます。

感覚神経…体外・体内からの情報を受け取る感覚器官との間の連絡線を感覚神経といいます。末端で受けた刺激を中枢(脳・脊髄)に伝え、伝達方向が中央・中心に向かっているので求心性神経ともいいます。

運動神経・分泌神経…脳で考えたことを伝えるための神経。末端、遠方に向かっているので遠心性神経ともいいます。向かった先が筋肉の場合は運動神経、分泌腺の場合は分泌神経といいます。

神経系の伝導

 神経の興奮伝導はニューロン(神経細胞)を1つの単位として、それを構成する樹状突起→細胞体→軸索の方向に伝わります。この軸索の終末は、次のニューロンの樹状突起、あるいは細胞体に接触し、その興奮を次のニューロンに伝えます。この伝える場所をシナプスといいます。

神経組織の構造