出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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血液と循環器系執筆者:浜松大学健康プロデュース学部心身マネジメント学科教授 竹内修二

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心臓の構造と心臓内の血流

 心臓は左右の肺にはさまれ、心膜に包まれて横隔膜の上にあります。円錐形をしており、大きさはその人の握りこぶし大、重量は250~300gです。心臓の上部で大血管が出入りする広い部分を心底、左下端前方の尖った部分を心尖といい、そこが左胸壁に当たり、ドキドキと拍動を感じます。

 心臓の壁は心内膜、心筋層、心外膜の3層からなり、心臓の内部は右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分けられています。全身へ血液を送る左心室の心筋層が一番厚くなっています。

 心房から心室に移るところ、心室から動脈へ出るところには、血液の逆流を防ぐ弁膜があり、左心房と左心室の間の弁を僧帽弁といいます。

心臓の内腔と血液の流れ

 血液の循環には肺を通る肺循環と、肺以外の体中をめぐる体循環とがあります。

肺循環…右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房へと循環します。

体循環…左心室→大動脈→全身の器官・組織→上、下2本の大静脈→右心房へと循環します。

心臓の収縮と拡張(拍動)

 心臓は、収縮して心臓内の血液を動脈中に押し出し、拡張して静脈から血液を受け入れる役割を担っています。このようなポンプ作用は心臓壁を構成している心筋によって行われますが、その運動は自動的に一定のリズムで繰り返しています。

 これを拍動といいます。1分間の平均心拍数は成人男子が62~72に対し、女子は70~80、また、高齢者は少なく、子どもは多くなっています。

 心筋は自動的に収縮・弛緩を繰り返しますが、これは特殊な筋線維によって行われ、右心房の洞房結節に始まります。洞房結節からの興奮が左右の心房に伝わって心房が収縮します。

 洞房結節からの興奮は房室結節、房室束(ヒス束)、プルキンエ線維と伝わり、その刺激が左右心室に達すると、左右の心室はほとんど同時に収縮します。この経路を刺激伝導系といいます。

刺激伝導系

リンパ系とそのはたらき

 ヒトの体の中には血管のほかにもリンパ管が全身に広がっています。全身の組織中の細胞と細胞との間の組織液は、毛細血管を経て血液中に戻りますが、一部(約10%)は毛細リンパ管に入り、静脈に送られます。この循環をリンパ系といい、その中を通る液をリンパといいます。

 毛細リンパ管が合流し太くなったものがリンパ管で、多くの弁を持ち、とくに太いものでは弁のところがふくらみ、数珠状につながって見えます。

 リンパ管にはところどころリンパ節(腺)というソラマメ状の丸いふくらみがついています。

 リンパ節は新しいリンパ球や免疫抗体を産生し、細菌や異物を処理しています。リンパ管は、リンパ節を経由しながら、最後はリンパ本幹となって静脈に注ぎます。

主要なリンパ節とリンパ系

脾臓

 脾臓は、腹腔内の左上部の肋骨に隠れた部位にあります。脾臓にはリンパ組織があり、リンパ球の産生や、体内で老化した赤血球の破壊、血中の細菌や異物の処理などのはたらきをします。

 血管や神経が出入りする部分を脾門といいます。

脾臓の形態

血液の成分と役目

 血液は体重の約12分の1~13分の1(7~8%)を占めます。血液はその45%が赤血球、白血球、血小板などの細胞成分で、残り約55%は液体成分である血漿からなっています。

血液の成分

赤血球…赤血球はヘモグロビン(血色素)によって酸素の運搬を行います。赤血球は血色素中の酸素の量によって、動脈血(鮮紅色)と静脈血(暗赤色)とで色の差が生じます。

白血球…白血球は体内に入った細菌や異物を処理し、体を守るはたらきをします。

リンパ球…白血球のひとつで、免疫グロブリンを産生して血液中に供給し、抗原性細胞を攻撃破壊します。

血小板…血漿の中の成分と一緒にはたらいて、血液の凝固や止血の作用をします。

血漿…血漿の約90%は水で、それ以外には主に蛋白質(血漿蛋白)が含まれます。血漿は全身をめぐって、栄養素やイオン、水、ホルモンなどを運び、不要物や余分な水を持ち帰ります。また、体温調節作用、体の保護、止血作用などのはたらきをします。

血液のめぐり方

 血液は心臓を中心にして体全体をめぐっていますが、それには大循環(体循環)と小循環(肺循環)の2つのルートがあります。

血液のめぐり方

 血管には心臓から体の末端に血液を送る動脈と、体の末端から心臓に向かって血液を送る静脈とがあります。動脈系は、左心室の大動脈口から始まる大動脈という1本の本幹があり、それから枝分かれして全身に分布しています。これらの動脈はさらに分枝しながら最終的には毛細血管となり、各組織に血液を運びます。毛細血管は再び合流して静脈となり、やがて太い大静脈となって心臓に戻ってきます。このように心臓と各組織との間をめぐるルートを大循環(体循環)といいます。

 一方、これとは別に心臓と肺との間をめぐる血液のルートがあり、これを小循環(肺循環)といいます。小循環では、心臓から肺に行く肺動脈内には、大循環の動脈とは逆に二酸化炭素を多く含んだ静脈血が流れ、肺から心臓に向かう肺静脈内には、肺でガス交換をして酸素を多く含み、きれいになった動脈血が流れています。

血管の構造

 血管は、内膜、中膜、外膜の3層からなっています。動脈の壁は拍動性の血流と血圧に耐えられるよう厚く弾力があり、内部の圧が減っても丸い形が保てるようになっています。静脈の壁は薄く柔らかです。

血管壁の構造

動脈…心臓から出た血液を末梢に運ぶ血管で、中膜の平滑筋と弾性線維により伸縮性と弾性があります。末端は枝分かれして細くなっており、これを細動脈といいます。

静脈…毛細血管に続き、血液を心臓に送り返す血管で、中膜の平滑筋が少なく弾性も乏しくなっています。始まりの部分は細静脈といいます。場所により内膜に半月状の静脈弁を持ち血液の逆流を防いでいます。皮下組織内を走行する静脈を皮静脈と総称しています。

静脈弁

毛細血管…細動脈と細静脈とを結ぶ網目状の血管で最も細い血管(5~20μm)です。壁は単層の内皮細胞からなり、平滑筋はありません。壁の細胞のすきまを通して、血管内の血液中と組織の間で、栄養素、酸素、二酸化炭素、老廃物などの物質交換が行われます。

動脈・静脈・毛細血管