出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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尿・排尿の異常から考えられる主な病気

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尿量の異常から考えられる主な病気

◆ 多尿

症状 疑われる病気
口渇、多飲 尿崩症
吐き気、嘔吐 多食、体重減少 糖尿病
食欲不振 副甲状腺機能亢進症
筋力低下、四肢麻痺 低カリウム血症
原発性アルドステロン症
むくみ 血尿、とくに夜間の多尿、貧血、高血圧 慢性糸球体腎炎

◆ 乏尿・無尿

症状 疑われる病気
むくみ 血尿、血圧の上昇、子どもに多い 急性糸球体腎炎
血圧の低下 ネフローゼ症候群
吐き気、嘔吐、貧血、集中力低下、意識障害 慢性腎不全
尿毒症
息切れ、夜間発作性呼吸困難症、体重増加 慢性心不全
激しい下痢・嘔吐、やけど、出血、心筋梗塞、心筋症、膵炎、肝硬変、ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、急性進行性腎炎症候群、膠原病、血栓性血小板減少性紫斑病などさまざまな原因によって起こる 急性腎不全

尿の色の異常から考えられる主な病気

◆ 赤色~赤褐色(血尿)

症状 疑われる病気
むくみ、高血圧 乏尿 急性糸球体腎炎
多尿、全身倦怠感、疲れやすい 慢性糸球体腎炎
腹部・腰部・背部痛 尿管腫瘍
発熱 寒気、ふるえ、頻尿 急性腎盂腎炎
頭痛、吐き気 多発性囊胞腎
腹部腫瘤、体重減少 腎がん
立位で痛みが増強、排尿障害 遊走腎
吐き気、嘔吐 腎臓結石
冷や汗 尿管結石
頻尿、排尿痛、残尿感など排尿障害 前立腺肥大症
前立腺がん
膀胱がん
下腹部痛 急性膀胱炎
慢性膀胱炎
膀胱結石
その他 特発性腎出血

◆ 黄褐色~茶褐色

症状 疑われる病気
黄疸 右上腹部痛 発熱 胆管炎
胆管がん
かぜ様症状 A型急性肝炎
B型急性肝炎
C型急性肝炎
意識障害 劇症肝炎
吐き気、嘔吐、手掌紅斑、クモ状血管腫、女性化乳房 肝硬変
肝がん
腹部の張り・しこり 胆管細胞がん

◆ ワイン・コーラ色

症状 疑われる病気
皮膚の露光部の紅斑・はれ・水疱、手指の皮膚の萎縮・拘縮 先天性ポルフィリン症
動悸・息切れなど貧血症状 黄疸 溶血性貧血
起床時の尿がコーラ色 発作性夜間血色素尿症

排尿の異常から考えられる主な病気

◆ 頻尿

◆ 尿線異常

◆ 排尿困難

◆ 尿閉

◆ 残尿感

◆ 排尿痛

◆ 尿失禁

尿・排尿の異常とは?

尿は腎臓でつくられています。腎臓に入ってきた血液を濾過し、体に不要な老廃物を水といっしょに「尿」として排泄しています。しかし、何らかの原因で体に異常が起こると、尿の性状(色やにおいなど)や尿の量が変化したり、排泄のメカニズムに支障が起こることがあります。
腎臓は肝臓と同様、沈黙の臓器と呼ばれ、なかなか症状を表に現しません。それだけに早期発見が重要となり、日々、尿の性状や量を観察し、排尿に異常がないかなどに気を配っておきたいものです。

尿の量が多い・少ない

1日の尿の量は、健康な成人で約0・8~1・5Lとされています。尿の量が多すぎたり、少なすぎたりする時、何らかの病気が疑われます。

多尿

一般に、1日の尿の量が3L以上の場合を多尿といいます。水の摂取量が多くて多尿になっているのでなければ、腎臓での水の保持機能の不全が原因と考えられます。多尿を起こす病気の代表は尿崩症。突然、多尿とのどの乾き、それによる多飲が起こります。1日の尿量は3L以上となり、夜間でも減少しません。

乏尿、無尿、尿閉

1日の尿量が0・4L以下を乏尿といい、0・1L以下を無尿といいます。
乏尿とは、膀胱内への尿の排泄量が減少している状態、ただし体外へ排出された尿量が少ないだけでは乏尿とはいいません。無尿は、乏尿がさらに進んだ状態です。尿道の閉塞などで尿が膀胱から排泄できない場合を尿閉と呼び、無尿とは区別します。
乏尿・無尿は腎臓の病気で起こってきます。急性腎不全は腎臓の機能が急激に低下して大変危険な状態ですので、乏尿・無尿がみられたらすぐに受診してください。

尿の色がおかしい

正常な尿の色は淡黄色から黄褐色です。といっても、尿の色は摂取した水分の量や季節、運動、薬の服用などによっても変化しますので、色が変わったからといって即、異常とはいえません。反対に、見ためには正常に思えても何らかの異常が進行している場合もあります。
眼に見えない尿の異常については、年に1、2回定期的に健康診断を受け、尿中に蛋白や赤血球、白血球などが漏れ出ていないかを調べることが大切です。加えて、見える色の変化に対しての観察を怠らないようにしましょう。

尿が赤い

尿が赤色~赤褐色なら、赤血球が尿のなかに混在していると考えられます。いわゆる血尿で、目で見てわかる血尿を肉眼的血尿、見えない血尿を顕微鏡的血尿といいます。血尿は腎臓や尿管、膀胱の病気などで起こります。
ほかに何の症状もなく、腎臓などに異常のない原因不明の血尿を特発性腎出血といい、20~30代の比較的若い人に起こります。急に真っ赤な尿が数時間から、時には数日間続くこともあります。
一方、ほかに症状がないからといって安心はできません。腎がんや膀胱がんなどのがんや腫瘍は、早期の頃では血尿が唯一の症状の場合も少なくなく、また1、2回の血尿で自然消滅することもよくあるため、つい軽視してしまいがちです。早期に発見するためには、血尿が1回でも出たら病院で検査を受けることが大切です。

尿が黄褐色~茶褐色

尿が黄色くなることは別に病気でなくてもしばしば経験することですが、黄疸が起こると色が濃くなり、黄褐色から茶褐色になり、肝臓や胆管の病気などで起こります。
そのほか、色だけでなくにごりやにおいなども観察を。尿がにごっているなら腎臓や膀胱の病気、尿にうみのようなものが混じっていれば淋病、尿道炎など、尿が甘ずっぱくにおうようなら糖尿病の可能性があります。

排尿の異常

排尿の異常には、排尿回数の異常、尿線の異常、排尿困難、尿閉、残尿感、排
尿痛、尿失禁などがあります。
一般的な排尿の回数は、個人差はありますが1日に日中5~6回、夜間0~1回くらいです。排尿回数が多い場合を頻尿、少ない場合を稀尿といいます。通常、1日に日中8回以上排尿がある場合を頻尿、寝ている間に排尿のために1回以上起きる場合を夜間頻尿と呼んでいます。
尿線異常とは、尿線が細い・尿を放出する力が弱く勢いがない・尿が途中で止まってしまうことです。
排尿困難とは、排尿開始までに、あるいは排尿終了までに時間がかかる場合を指します。
尿閉とは、尿道の閉塞などで尿を排泄できない状態です。
残尿感とは、排尿が終わったあともさっぱりせずに尿が残っているような状態です。
排尿をする時・している時・し終わった直後に痛みがあるのを排尿痛と呼んでいます。
尿失禁とは、排尿する気がないのに尿が漏れてしまう状態です。
いずれもそのほとんどが膀胱や尿道、前立腺などの異常で起こり、かつ症状は重複して現れます。たとえば、男性だけに起こる前立腺肥大症は通常、以下のように症状が現れてきます。
①第1病期(膀胱刺激期)…夜間の2回を超える頻尿、尿意を感じると我慢ができない尿意切迫感、排尿開始・排尿終了までに時間がかかる排尿困難、尿腺が細い尿線異常などが出現。
②第2病期(残尿発生期)…排尿困難の程度が増すことによる残尿の出現。
③第3病期(完全尿閉期)…尿が排泄できなくなる尿閉、尿が絶えずもれ出てしまう尿失禁の出現。
第3病期になると、腎臓からの尿の流れも妨げられて腎機能障害が起こってきます。したがって、できるだけ早期のうちに泌尿器科を受診することが大切です。
近年、新しく登場した診断名に過活動膀胱があります。これは、尿意切迫感があり、通常、頻尿と夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴う場合と伴わない場合がある状態です。日本では、約810万人もの人が過活動膀胱と推定されています。