肺機能検査執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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呼吸の力を評価し、障害部位を特定する検査で、異常があればくわしく調べます。喘息のある人は、検査で喘息を誘発する場合があるので注意が必要です。

〈用語解説〉

肺活量:空気を最もたくさん吸い込んだとき(最大吸気)と、 できるだけ吐き出したとき(最大呼気)の差

%肺活量:〈実際に測定した肺活量÷標準値(予備値)〉

標準値:

 男性(50歳、身長160~170㎝)=3500~3700ml

 女性(50歳、身長150~160㎝)=2500~2700ml

努力性肺活量:最大吸気位からできるだけ速やかに吐き出したときの肺活量

1秒量:1秒間で最大に吐き出せる呼吸量

1秒率:全体呼気量に対する1秒量の比率

医師が使う呼び方:「はいきのう」「こきゅうきのう」

肺気腫、気管支喘息などの診断の助けとなる検査

 息苦しい、咳(せき)や痰(たん)が出る、動悸がするなどの症状があって、肺の病気を疑うときに行う検査で、呼吸の力(吸気(きゅうき)・呼気(こき))を定量的に評価し、障害の部位を明らかにします。

 肺機能障害には大別して、肺の有効容量が小さくなる拘束(こうそく)性肺機能障害(肺結核、肺線維症など)、気道が狭くなる閉塞性肺機能障害(肺気腫、気管支喘息(ぜんそく)など)、その混合型がありますが、臨床的には閉塞性がよくみられます。

肺活量80%以下、1秒率70%以下のときは障害を考える

 スパイロメトリーという機械で、肺活量、努力性肺活量、1秒量を測り、1秒率を計算します。診断上は、肺活量と1秒率で肺機能を調べます。

 肺活量は、検査データ上では〈%肺活量〉で表示されます。これは、実際に測定した肺活量をあらかじめ決められている標準値(予備値)で割ったもので、この〈%肺活量〉が80%以下のときは検査上、拘束性肺機能障害があるといいます。一方、1秒率は、70%以下になると検査上、閉塞性肺機能障害があるといい、どちらの場合もさらにくわしい検査を行います。

10分ほどで終了、苦痛はない

 座って検査をします。まず、肺活量を測ります。鼻をノーズクリップで止め、呼吸管を接続したマウスピースを口に加え、静かな呼吸を数回繰り返したのち(少し息苦しさを感じることもあるが、呼吸は普通にできる)、一度大きく息を吐き(最大呼気)、次に大きく息を吸い(最大吸気)、さらに大きく息を吐きます(呼気肺活量、一般にいう肺活量)。これを2~3回繰り返します。

 次に、努力性肺活量、1秒量を測ります。まず、静かな呼吸を2~3回したのち大きく息を吸い、一気に強く息を全部吐きます(努力性肺活量)。呼吸量はグラフに表れ、1秒間の呼気量を測り(1秒量)、呼気率を計算します(1秒率)。

 10分くらいですべて終了します。苦痛はありません。

喘息発作で苦しいときは行わない

 当日の飲食は、普通にとってかまいません。検査時は入れ歯を外して行います。喘息発作で呼吸が苦しいときは、検査はできません。また、検査で喘息発作を誘発することがありますので、注意が必要です。

おすすめの記事

疑われるおもな病気の追加検査は

  • 肺気腫

    胸部単純X線撮影、胸部CTなど
  • 気管支喘息

    胸部単純X線撮影、血液検査(好酸球、IgE)など
出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版