梅毒血清検査執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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梅毒は、性行為感染症のひとつです。感染していたら、パートナーにもきちんと伝え、検査を受けてもらうことが大切です。

医師が使う呼び方:「エスティーエス」=serologic test for syphilis(梅毒血清反応)の略STSから。「バイドクケンサ」

梅毒血清検査の基準値

陰性(-)

■梅毒血清検査の解釈
STSTPHA解釈
--・感染していない
・感染初期(2週間以内)
+-・感染早期(2~3週間)
・生物学的偽陽性反応(BFP)
-+・治療後
・陳旧性梅毒(かなり経過を経た梅毒)
++・梅毒感染

梅毒感染の有無を調べる検査

 梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌による感染症で、感染すると生体には梅毒トレポネーマに対する抗体ができます。この抗体の有無を調べるのが梅毒の血清検査です。

 この検査は、梅毒と思われる症状があるとき、あるいは輸血や手術の際に患者や医療従事者が感染しないために調べます。

異なる2種類の検査法で調べる

 梅毒の検査には、次の2種類の方法があります。ひとつは、カルジオリピンというリン脂質を抗原とした方法で、STSといいます。カルジオリピンは、梅毒に感染すると組織から出てくるものです。もうひとつは、梅毒トレポネーマの菌体成分を抗原とした方法で、TPHAがその代表です。

 表に示したように、STSでは感染後早期(2~3週間)で陽性になるのに対して、TPHAではそれより遅れて4~5週間で陽性になります。しかし、STSは、梅毒ばかりでなく全身性エリテマトーデスなどでも陽性となるので(これを生物学的偽陽性:BFPという)、解釈上は注意が必要です。

 検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

治療効果の判定はSTSで

 STSは感染早期に陽性化する利点ばかりでなく、治療により治癒すると陰性化する利点があります。このため、梅毒の治療効果の判定はSTSで行っています。なお、TPHAは一度陽性となると治療により治癒しても陰性にはなりません。

あらためて再検査を

 STSには、手術前に行う迅速(じんそく)測定法(RPRカードテスト)と、ガラス板法、梅毒凝集法、緒方(おがた)法があります。

 梅毒に感染していなければ、いずれの検査でも陰性(-)となります。ただし、一般に感染してから約2~3週間たたないと、陽性になりません。

 感染がそれより直近のときは陰性となることがあるため、あらためて感染後1カ月がたったと思われるとき、再検査することになります。

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版