トキソプラズマ抗体執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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医師が使う呼び方:「トキソ」

トキソプラズマ抗体の基準値

陰性(-)

多くは不顕性感染

 トキソプラズマは、ネコを最終宿主(しゅくしゅ)とする原虫で、ヒトを含む多くの動物が中間宿主です。この原虫に感染しているか否かを調べる検査がトキソプラズマ抗体検査です。ヒトの場合、多くは感染しても発症しない不顕性(ふけんせい)感染です。

 トキソプラズマ症には、大別して初感染の妊婦から胎児へ感染する先天性トキソプラズマ症と、ネコとの接触、生肉の摂取などから感染する後天性トキソプラズマ症(免疫正常者・免疫不全者)があります。

 先天性トキソプラズマ症では、患児に網脈絡膜炎(もうみゃくらくまくえん)、脳水腫、脳内石灰化、精神運動機能の発達障害、貧血、けいれん、黄疸(おうだん)などがおこりやすくなります。

 後天性トキソプラズマ症では、免疫正常者の場合は大部分が無症状で経過しますが、ときに脳髄(ずい)膜炎、リンパ節炎、心筋炎、肺炎、網脈絡膜炎などを発症することがあります。免疫不全者やエイズの場合は、トキソプラズマが顕在化して、脳髄膜炎や脳膿瘍などを発症することがあります。

妊婦の初感染はきちんと管理を

 トキソプラズマは一般に、抗体検査で調べます。トキソプラズマの抗体は、健康な人でももっている人が多いため、検査で陽性だからといって必ず治療が必要とは限りません。

 トキソプラズマが活発に活動しているか否かは、高い抗体価、2~3週間後の抗体価の4倍以上の上昇、IgM抗体の出現、特徴的な症状などによって推測します。

 トキソプラズマ症は、妊婦の初感染による先天性トキソプラズマ症が重要です。妊婦が陽性のときは、繰り返し検査をする必要があります。また、ネコや感染していない妊婦との接触を避ける、十分に加熱されていない肉を食べないなどの日常生活上での配慮も大切です。感染後、妊娠した人は、トキソプラズマの抗体があるため、胎児に感染する危険はまずありません。

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版