肺がん執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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 肺がんは現在、日本人の間で非常に増えています。平成20年の肺がんによる死亡数は、全部のがんのうち、男性は第1位、女性は第2位(第1位は大腸がん)です。

 肺がんには大きく分けて、肺の奥のほうにできる末梢型がん(腺がんなど)と、肺の中心部(肺門部)や気管支の太い部分にできる肺門型がん(扁平(へんぺい)上皮がんなど)があり、日本人に最も多いのは腺がんです。

おもな症状

 末梢型がんは、とくにありません。肺門型がんも早期のころはほとんどありませんが、最も高頻度な症状は、せき、痰(たん)、とくに血痰です。その他、胸痛、背部痛、息切れ、発熱、食欲不振、体重減少などがあります。

手順

①胸部単純X線/喀痰細胞診/腫瘍マーカー

②胸部CT/PET-CT/気管支内視鏡/生検/擦過細胞診

 検査項目はおもなものを示してあります。また手順は、症状やがんの状態などによっては順序がかわることがあります。

まず胸部単純X線撮影と喀痰細胞診

 まず最初に行う検査が胸部単純X線撮影と喀痰(かくたん)細胞診です。どちらも有効ではありますが、限界もあります。

 X線撮影は、末梢型がんを発見するのに有効ですが、早期の肺門型がんはX線に写らないため発見することはできません。さらに末梢型がんでも、1㎝以下のがんではまず発見することは困難です。

 一方、喀痰細胞診で発見できるのは圧倒的に肺門型がんで、末梢型がんではかなり進行しても血痰は出てこないため、発見することはできません。この検査は、一般的に数回繰り返して行います。

 腫瘍マーカーは、シフラ、SCC、NSE、ProGRP、SLXが用いられています。

CT、内視鏡でさらにくわしく

 上記の検査でがんが疑われたら、胸部CT、気管支内視鏡でさらにくわしく調べます。

 胸部CTは精度が向上し、X線撮影ではわからない5mmくらいの小さながん、末梢型、肺門型どちらでも発見することができます。近年、定期検診などにも、この検査をとり入れようとする試みが始まっており、今後期待される検査のひとつです。

 気管支内視鏡は、おもに喀痰細胞診で肺門型がんが疑われたとき行う検査です。これは、内視鏡を入れても気管支の中までしかみえず、そのため末梢型がんは探し出すことができないからです。

 CT、あるいは内視鏡でがん細胞らしき病変をみつけたら、その一部を採取する生検(せいけん)、あるいは擦過(さっか)(ブラシで病変部を擦り取ること)によって病変部をとり出し、細胞検査でそれを調べて確定診断とします。

 近年ではPET-CTが診断困難な場合に活用され、威力を発揮しています。

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版