出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
すべて
病名
 × 

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
せんてんせいこうじょうせんきのうていかしょう(くれちんしょう)

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは?

どんな病気か

 生まれつき甲状腺のはたらきが弱い病気で、重症から軽症まで症状の出方はさまざまです。発生頻度は出生児3000~5000人に1人と推測されています。

原因は何か

 胎児期に発生の異常で甲状腺が無形成や低形成に陥ったもの(欠損性)、舌根部などにとどまったもの(異所性)、甲状腺ホルモン合成の障害(甲状腺腫性)があります。まれに中枢性(下垂体性、視床下部性)の機能障害によるものもあります。近年、原因遺伝子の検索が進んでいます。

症状の現れ方

 新生児期の早期には黄疸の遷延(持続)、便秘臍ヘルニア、巨舌、かすれた泣き声、手足の冷感などがあり、長期的には知能低下や発育障害が問題になります。現在日本では、新生児マススクリーニングが行われており、症状が現れる前にほとんどが発見されます。ただしマススクリーニングで発見できない症例(TSH遅発上昇型など)の報告もあります。

検査と診断

 生後5~7日に、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定によるマススクリーニングが行われます。遊離サイロキシン(FT4)の測定を同時に行う地域もあります。TSHが高値であると、再採血あるいは精密検査になります(図52図52 甲状腺ホルモン調節のフィードバック機構)。精密検査では、TSH、FT4などの再検査、大腿骨遠位端骨格のX線検査(図53図53 新生児の膝関節単純X線写真)、甲状腺の超音波検査(図54図54 超音波検査でみた新生児の甲状腺)などを行います。

図52 甲状腺ホルモン調節のフィードバック機構

図53 新生児の膝関節単純X線写真

図54 超音波検査でみた新生児の甲状腺

 一過性甲状腺機能低下症との区別のため、母親の甲状腺疾患(母親がバセドウ病の場合には抗甲状腺薬内服の有無)、胎児造影、イソジン消毒、コンブの食べすぎなどによるヨード大量曝露の有無などの確認が重要です。

治療の方法

 生後2カ月以内の甲状腺機能は知能予後に極めて重要と考えられるので、機能低下が疑われればまず治療を開始することが基本です。1日1回甲状腺ホルモン薬のレボチロキシンナトリウム(チラーヂンS錠、散、10~15μg/kg/日より開始、成人では2~3μg/kg/日で維持)の内服を行います。病型診断は、3歳以後にいったん内服を中止して、123I甲状腺摂取率、シンチグラム、唾液/血液ヨード比、ロダンカリ放出試験などによって行われます。

病気に気づいたらどうする

 マススクリーニングで精密検査の通知が届いたら、すみやかに指定された医療機関を受診します。

(執筆者:東京女子医科大学東医療センター小児科教授 杉原 茂孝)

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)に関連する検査を調べる

甲状腺機能低下症に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、甲状腺機能低下症に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

甲状腺機能低下症に関連する可能性がある薬をもっと見る

おすすめの記事

甲状腺機能低下症に関する病院口コミ

もっと見る

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)に関する医師Q&A