出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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インフルエンザ
いんふるえんざ

インフルエンザとは?

高齢者での特殊事情

 インフルエンザは、一般にもよく知られるウイルス感染症です。ヒトのインフルエンザウイルスは1933年に分離され、ワクチンが実用化され改良が続けられていますが、今なお、世界中で流行がみられ、毎年問題となる重要な流行性感冒です。小児ではインフルエンザ脳炎・脳症を起こしやすく、高齢者では肺炎などの重い合併症を引き起こす危険性が高いです。事実、流行時の死亡者の大半は高齢者であり、その重症化が問題となっています。

 インフルエンザウイルスは自然状態では細長い形をしており、大きさが約100nmの多形性のウイルスです。ウイルス周囲にヘマグルチニン(Hemagglutinin:赤血球凝集素)、ノイラミニダーゼ(Neuraminidase)などの突起をもっています。インフルエンザウイルスの感染や抗体による防御は、このヘマグルチニン、ノイラミニダーゼのはたらきが重要で、ウイルスの型を示す時に用いられるH、Nはそれぞれの頭文字からきています。

 2009年5月より世界的に流行したウイルスはH1N1というタイプでした。swine(猪豚)に由来し、豚インフルエンザと訳されて風評被害が広がったため、新型インフルエンザと呼ばれました。このウイルスは、若年者を中心に猛威をふるいましたが、高齢者の感染は少なく、重症化もわずかでした。そこで、昔流行したウイルスと類似し、高齢者が免疫をもっていた可能性が考えられます。対策として、ワクチンの接種を受けるとともに、日々の体調管理が重要になります。手洗い、外出時のマスクや眼鏡(ゴーグル)の装着、人込みを避けるなどの基本的な注意を行うべきです。

 一方、鳥インフルエンザとして流行が危惧されるH5N1は、感染力は低いが、ひとたび感染が起こると強毒性で死亡率が高いものです。高齢者、とくに糖尿病脳梗塞後遺症、経口摂取不能、呼吸不全などの場合は、感染後の重症化が避けられないため、十分な予防策が必要になります。

治療とケアのポイント

 インフルエンザ予防の基本は、ワクチン療法です。流行状況の把握と予測技術の発達によって、ワクチンの有効性も高まっていますが、ウイルスは、年単位で抗原性が変化する連続抗原変異(小変異)と、数年から数10年単位で突然、別の亜型に代わる不連続抗原変異(大変異)を生ずるため、完全な予防は不可能です。

 新型ウイルスの鳥インフルエンザウイルスについても、世界中でワクチン開発が行われており、実用化は近いが、ワクチン自体の安全性とともに、国民すべてにいきわたるかなど、供給面の問題も残っています。

 また近年、ノイラミニダーゼ阻害薬というインフルエンザ専用の薬(タミフルやリレンザ)が開発されました。この薬はノイラミニダーゼを選択的に阻害することにより、ウイルス粒子の宿主細胞からの遊離・放出を阻止し、ウイルスの増殖を抑制します。発症早期に服薬を開始するほど効果が高くなります。

 ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザ予防にも有効です。まだ感染していない高齢者が内服すると、発症しにくくなります。ただし、費用が高く、現時点で予防投与は認められていません。また、鳥インフルエンザでは、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスが見つかっており、今後、ノイラミニダーゼ阻害薬が効果を発揮しないウイルスの流行が心配されています。

 インフルエンザウイルスは、飛沫感染であるため、人込みに出るのは、危険です。流行期は外出を避け、食料を備蓄して、人との接触を避けることです。外出時には、粘膜(眼球結膜)からの感染があり得るので、マスクをするとともにゴーグルも使用することが予防策として重要になります。また手洗いは、すべての感冒予防策として重要ですが、飛沫感染を主とするインフルエンザ感染については、必ずしも重要性は高くありません。

(執筆者:国立病院機構東京病院呼吸器科医長 寺本 信嗣)

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